月塊、窮地にたつこと③
拳はむなしく阻まれ、陣に届くことはなかった。
またしても玉。
まるで氷のように地面を侵食した玉の幕が、月塊の拳と陣の間に割り込み、その接触を阻んでいた。拳は透き通るような幕のおもてに、わずかなヒビをいれただけだ。
「こなくそ······!」
強烈な反撃が月塊を襲う。玉床からせり上がった飴のように自在にうごく柱か、無防備になった月の腹を打つ。たわいなく放り投げられたその身に、緑の飛礫が数百、嵐となって追い討ちをかけた。
ボロクズのようになった月塊はなす術なく、地面に落下した。その横面を、いつの間にかひとりに戻った麒麟が強靭な蹄で踏みつける。
「弱い弱いとは思ったが、やはりな」
「······あぁ···ッ?」
「貴様、血肉を摂っておらぬな。どうりで初めてみた折、妖と見分けられなんだわけだ。してみると、仙人になりたいとの言も満更思いつきではないらしい」
「月!」
琴箭は駆け出そうとして、ぐっとこらえた。麒麟のはなった術はいまだその効力を失ってはいない。ジワジワと、ゆっくとだが確実にその範囲を拡げつつある。
駄目だ。いま出てもまた玉に呑まれるだけ。いま私はここにいないと······!
······それにしても、月塊がそんな努力をしていたなんて。
琴箭はいまさらながら、月塊の願いが真摯なものであるのだと理解できた気がした。
自分が願いを追っているように、彼にもまた譲りたくない想いがある。そんな、当たり前で単純なことにおもい至らなかったなんて。本当に、なんて自分は未熟なんだろう······!
でも、だからこそ!
「今度は私が! アイツの願いをたすける番なの!」
誤字を修正させていただきました。




