蔡のお嬢、妖を捕らえんとす②
ドォォォオオン!
突然、静寂にくぐもったような大音が響きわたった。琴箭はすっかり思考を中断され、身を起こす。
おなじく眠りを邪魔された鳥たちが、ギャアギャアと非難の声をあげるなか、松明のほうをみると、炎がはげしく行ったり来たりをくりかえしている。なんだかただならぬ気配がする。
「·····かかったんだ!」
とっさに藪から飛び出すと、もうお構いなしに、炎の群がるほうへと駆け出した。
蟻のように松明が連なるあとを負けじと追っていくと、そこには異様な光景がひろがっていた。
巨大な丸太をつらねた筏が二枚、まるで咲くのをまつつぼみのように、暗がりのなかへ立ち上がっている。
たったいまそうなったことをしめすように、その端と、たるんだいく本かの綱から砂が落っこちて、あらゆる方向から照らす松明の火のなかに、土煙として浮かび上がっていた。
琴箭が思案し、地元の猟師数人が実現してくれた罠装置だ。
「やったか!」
「ああ、たしかに見た!」
「まさか間違いで人ではあんめぇな」
「んにゃ。たしかに二本足だったが、そもそも、こげな時刻にここいらをウロつく奴なんざロクなもんじゃねえ。旅人にしたって、とおる道は真反対だぞ」
「里の者にゃ近づかんよういってあるし、こりゃ、いよいよだ!」
興奮する夜番たちの袖がひかれた。ギョッとしてみると、そこには、その様を仰ぎみる琴箭の姿があるではないか。大人たちは二度びっくりして、
「琴箭嬢ちゃん? いや、駄目だ、まだ近づくんじゃねえ!」
「おじさん、やったのね!」
「いや、だからそれはまだ──」
ウォォォォオオォ───ン···!
「······なんだ? なんの音だ······?」