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【完結】月琴伝  作者: 雲野 蜻蛉
殷秋史
29/403

月塊、窮地にたつこと②


 勝ったと思ったあのときは──


 琴箭はとってかえすと、のっかった瓦礫をどけて、机にむかった。


 麒麟に触れたのは戟の刃先だけで、月塊自身はさわってない。あの印が効果を発揮したのは、アイツが必殺の瞬間にはなった拳が命中したときだけだ。


 木屑まみれになったのこりの墨に筆をつける。

 それはもう相手にもバレてる······だって麒麟は月の戟を恐れることなく受けているもの。注意をむけたのは拳が入りそうになったその瞬間。

 あまった木簡のうえに、はじめてあったあの日、記憶にやきついた円陣が完璧に再現された。いまだけではない。培ったもの憶えのよさは、いくどとなく彼女を助けてくれる。

 この印に触れないと、アイツは剛力をだせないの······

 その瞳が、礫やら木片やらの散乱する殿中の床にゆっくりとうつろった。



「ちょっと案山子(かかし)を増やしたからって得意がってんじゃねえ」

 口こそ威勢がよいものの、たち上がった月塊の足元はおぼつかず、両目をおおっている。

 一方、麒麟の足下からは、翠色の霧が、じわりとたちのぼりはじめていた。


「······」

「お前に当てられないんなら」月がなんとか瞼をうち開く。

「こうすりゃいいんだろ!」


 だんっと地を踏みしめ円陣を描き、それを足の裏でサッと払う。まるで氷のうえを往くように、光の印は麒麟の目前まで一瞬で滑りついた。

「おらァッ!」

 一足跳びに陣へと追いついた月が拳を叩きこむ。

 そこにかかった恐るべき力は何倍にも増幅され、屠られた地面から大量の土石が麒麟を襲う──はずだった。


こんなにもお休みがつづいている······

ということで、ほんの少しだけ早回しで投稿させていただいております。

ワガママですいません。

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