月塊、窮地にたつこと
あっといって、横倒しになるように麒麟は地上へと落下していく。そこへ一切の躊躇なく、月塊がとどめを放った。
苦痛の声さえあげる間もなく。
麒麟の身体は粉々となり、バラバラと四散してしまった。その名残りか、白い煌めきが夜風にさらわれ、消えていく。
「······そんな。殺し、ちゃった······」
「どうだ! 俺の願いのほうが強かっただろうが!」
ひと息おおきくすいこんだ後、月塊は天を仰いで勝ちどきの声をあげる。
「願いって、アンタ······本当にわかってなかったの?」
まさか今までもずっと···?
『勝ち誇るにはまだはやい···』
ぶわり。
やおら一陣の狂風が逆まいて吹きつけ、辺りを払った。カツリ、と蹄の石をうつ音がする。
灯りと暗がりの混じる曖昧な境から、なんと先程うち砕かれたはずの麒麟が姿を現した。
「てめェ!」
月塊はやらじと戟をひろって打ちかかる。麒はかわし、あるいは見事に蹄でさばくが、隙をみせたところを拳によってたやすく穿たれ、胸に大穴をあけられて果てた。
だが、
「!」
カツリ。右手の闇から一頭。さらに、左手の闇のなかからももう一頭、寸分たがわぬ麒麟が悠然とあらわれた。
「ッ···分身ッ」
こんどは月塊が悔しさに唇をかみしめる。
右手の麒麟が口を開いた。
「見えたか、そなたの底も」
「あぁ? どういう意味だ!」
「言のとおり」左手の麒麟が返答をうつ。
「ほざいてろ!」
月塊はしゃにむに突きかかる。麒麟の蹄はたちどころに妖気の印にまみれるが、もう麒麟は気にもとめなかった。
「くたばれ!」
ギラリと麒麟の眼が見開かれる。その瞬間、月塊の横面を強烈な足蹴りが見舞った。もう一方の麒麟が突如として攻めかかったのだ。
「······チクショ···ッ」
そうとう効いたのか、吹き飛ばされた月塊は、おきあがるのに難渋している。
「あの印──そうか······!」
ひらめいた琴箭は、いそいで机へとって返した。
台詞を一部、修正させていただきました。




