琴箭と月塊、再会をはたすこと②
久方ぶりに顔を上気させた琴箭は、そばの座に月塊を押しこめて座らせ、あらためて向きあった。
「ちょっと、長安に来てるならなんで会いに来なかったの? なによ楊奉って。なんで李傕なんかの下にいるのよ」
「······名はおっ死んだ奴の名をついだ。知らなかったんだよ、お前までここにいるなんてな。文句いわれる筋合いはねえ」
ふたりの睦まじい様子をみて、何がなにやらと首をひねっていた楊彪は、とりあえず事態を丸呑みにすることにしたようだ。
「ううむ······よく判らぬが、とにかく知己であったということなのだな。ならば儂は暇しよう。後は頼んだぞ、琴箭」
言い残すと、梅春による見送りも拒んでひとり帰っていった。
「それにしても匂いで判別······見てわからなかったわけ?」
そういわれても、である。月塊にとってまさに人もふくめ、成長する生物そのものが謎といってもいい存在なのだ。ついこの間までチビだった幼子が、すこし目を離しただけでもう一人前な女へと姿を変えているのだから、それはもう、とてつもない速度の変化であるといえる。
まあそれだけ、蔡琴箭の成長も目覚ましいということなのだ。
ここ数年の苦労ですこし痩せてはいるが、しっかりと地に足のついた歩みが、もとの美しさをより磨いたのであろう。これで女の装いにもどればかなり目立つ。普段は男のナリで過ごすのも、この魔都でそんな心配がないようにとの、梅春の配慮もあってのことでもあるのだ。
「こちらは芳梅春。いま私の侍女をしてもらってるの。ほら、憶えてない?」
琴箭は梅春をちかくに呼び、月塊にひきあわせる。
「芳梅春ともうします。その節は命をお助けいただきまして、ありがとうございました」
梅春も頭をさげる。だがやはり月塊にはピンとこない。なんせあの時は疲弊しきっていたし、そういえば琴箭とあの変態以外に、もうひとりいたような······くらいの憶えだった。
「それで? あらためて訊くけれど、なんで、賊人なんかに与してるのよ」
矢継ぎ早だな、と月塊はため息をつく。
「別に与してるつもりはねえ。個人的に借りがあってな。白波谷からついてきた仲間のこともあるし、昔のようにはいかねェのさ」
そうであった。いまの月塊は、独りで暴れまわっていられた頃とは違うのだ。あの異界で、仙人としても妖としても力を失ったのだ。
「そもそもさ、何でそんな身で長安に? 李傕にただくっついて──なんて訳でもないのでしょ」
そこで月塊は、あらたまったように表情をひき締め、琴箭を見あげた。
「それについちゃ、こっちからも訊きたいことがある··················」
月塊の問いに、琴箭も面持ちをただして首肯した。
「ええ、そうよ。私たちはいま、皇帝陛下の御為に働いている。なんとしても陛下をこの長安よりお逃しあそばすの」
「そうか」
月塊はつぶやくと考え込んだ。
キリがわるいのでもう一本ございます。
かなづかいを修正。




