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【完結】月琴伝  作者: 雲野 蜻蛉
殷秋史
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月塊と琴箭、天獣にまみえること


 ゆっくりと、妖は段をくだって地面へと降りた。


「···昇仙とな。なるほど、たいした望みだ。妖が妖を狩ってか···フン! 誰に吹き込まれたかはしらぬが、まったく滑稽なことよ」



 いいながら、月塊の力量を、間合いをはかるように、あいかわらずゆっくりとその周りをまわる。


「アンタにとっちゃ笑い事でも、こっちは大真面目なんだ。あれだけのことをやらかした以上、嫌でもつき合ってもらうぜ」

 応えつつ、月塊もおなじく円を描いて歩む。



「よかろう。どちらの大望が叶うに値するか。試してみよ」


 ピタリ。ふたりの歩みが同時にとまる。

 フッと、妖がその長身をかがめた気がした。その直後──



 ゴシャアッ!



 月塊が吹き飛ばされた。地面に、めり込まん勢いで叩きつけられたかと思うと、その反動で宙に舞い上がる。

「ガッ!」

「月!」


だが彼は、くるりと体をいれかえると、何事もなかったかのように着地した。

「ってぇ~。なんて足癖のわりィ奴だ」


 どうやらまともに喰らうことだけは瞬時に防いだらしい。当然、琴箭にみえる範疇での攻防ではなかったが。

 今度は月塊が、左足で地面を踏みしめる。埋まっていたのであろうながい大石が、土くれを落としながら事もなげに地上へと顔をだした。

 それをポーンと、小枝でも扱うようになんなく蹴りあげると、その大石は目にもとまらぬうちに、一本の黒長柄の(げき)へと変じる。


 待ったを許さず、妖が攻めかかる。月塊も負けじと前に踏み込み、両者は激しく打ち合いはじめた。およそ金属対生身のぶつかりあいにあるまじき、鋭く甲高い音が響き渡る。



「! 奥方様──ううん、妖の姿が···」


 彼女の錯覚ではなかった。月塊の刃先と互角以上に撃ち合うその足は、蹄をもつ、細身ながらも筋骨逞しい獣の脚へと変じ、おそろしい速度で両脚を繰り出しているかとみれば、その胴はながくのび、ついでにもう一対の後脚が身体を支えていた。

 その四本の脚を全力で使い、いま月塊をおおきく後退りさせたその姿は、まごうことなき馬に似た獣の姿。

 それも、求め、欲し、一生を費やしたとしても逢うことはできぬであろう。その存在は、獣でありながら天の領域に属するもの──


 額には一対のふとく反り返った角、雄々しいたてがみを翻したその威容を、琴箭は生涯忘れないだろう。


「こいつは······驚いたぜ。まさか、麒麟様かよ」


今回月塊がつかった「戟」とは、鉾や槍のなかまであります。

ざっくりと、槍の刃先が「ト」の字やら「十」の字になっているものらしいです。

有名な猛将、呂布の方天画戟もこれの一種。

もしもはじめて聞いた、という方のおられたときのために、生意気ながら参考までにでした。

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