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【完結】月琴伝  作者: 雲野 蜻蛉
殷秋史
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妖、月寇にあうこと②


 音高く。四つん這いの体勢で、月塊はドサリと着地した。いまだ降る殿の残骸が視界をにごすなか、その蒼く光る眼は、とうとう会えた標的にしっかりと注がれている。


「月塊! アンタ本当に生きてた!」

「······おのれェッ」


 妖の悔しそうな表情をみて、月塊は満足そうに笑って立ち上がる。

「まったく苦労したぜ。源にまで戻ったはいいが、いまいましくも月の光が当たらなくてよ」



 のしっ、と床を軋ませて妖が数歩踏み出した。おそれて後退りする琴箭には目もくれず、月塊を睨みつけている。


「まさか、真に妖だったとはな」

月塊は無言のまま、口元の笑みをしずかに消すことで返答とした。

「とはいえ解せぬ。我が術が通ぜぬ理由にはならぬな」

「···いったろ。俺の源は、アンタのいうただの石くれさ。くらった直後に術のあらましは解った。戻っちまえばどうってことはねー」


 そういえば──


 琴箭は思いあたるところにハッとした。

 私たちの罠から抜け出てきたとき、アイツの身体にあちこち穴やらヒビやらがあった。いつの間にか直ってたけど······



「なるほど? ではあらためて問う。そなたは何用あって、我が前に立つ」

 妖の落ち着いた物言いとは反対に、ペッと、柄も悪く月塊は唾を吐き捨てる。

「お前を退治するってんだよ! 俺の昇仙のためにな!」

()れ者が······」

 妖は、ゴスンと床を踏みしめる。


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