妖、正体をあらわすこと②
床に散らばっていた礫をいくつかひろいながら、琴箭は背中ごしに月塊をみた。
「いーい? この一枚を郷とするとね? ここがいちばん最初に、事件のおきた里」
そういって、礫をコツと石畳のうえにおく。
「つぎにここ、そいでここ」
そうやって五個ばかりの礫を無秩序にならべていく。最後に、この里ね、といってぽんと置いた。
「先にいっとくけど、これらの里は、こことたいして違いはない、変哲のない里です。一見してみると、てんでバラバラ。法則性もないようにみえるでしょ」
だからどうした、といいたげに、月塊は黙って彼女をみあげる。
「ところがここに」そういって、どこからかこぼれ落ちていた豆を、さきにおいてあった礫の、だいたい中心付近においた。
「郷庁をおくとどう?」
「どうっておまえ···」月塊は眉をしかめた。
「ただこのへんの地形をなぞっただけじゃないか。こんなもんで何が」
「鈍いわねぇ」
琴箭はやれやれといったように肩をすくめ、俵から藁を数本失敬する。それをくるくると指に巻きつけてなめした後、その紐で不格好な円を、すべての礫を囲むようにならべた。
「つまり、こういうことよ」
「······すべての襲撃が、郷庁の周辺ておきている?」
つぶやきながら、月塊も芋虫のごとき姿のまま、真剣な面持ちになった。
「まぁ、私が知っている範囲での考えだけど。ほかにアンタが知ってる被害現場ってある?」
ない。すくなくとも今のところは。
「じゃ、やっぱり、そういうことよ」
パシパシと手のひらをはたきながら、琴箭はクスリと微笑した。
「ま、すべてが全部、鵜呑みにゃできねえ。が」
月塊は顔を上げる。
つまりは、ここに犯人が潜んでいるかもしれないってことだ!




