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【完結】月琴伝  作者: 雲野 蜻蛉
殷秋史
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妖、正体をあらわすこと


 重荷をおろして気持ちもかるくなったみなをまっていたのは、褒美の酒食の俵や桶、そして懐にずしりとくる金子だった。

 大人たちは喜んで、それらあらたな荷を牛のそりへと積み込んだ。

 またこれらをひっぱって帰るのは難儀だが、今度の荷はいきなり暴れだすこともないうえ、里に潤いをもたらしてくれる。なんとも苦労のしがいがあるというものだ。


 役所の門までは、なんとわざわざ奥方様が見送ってくれた。


「書物のことだけれど」奥方は琴箭の前に目線をあわせるように屈みこんでいった。

「何巻もあるものだし、その間お仲間をまたせておくわけにもいかないでしょう? また日をあらためていらっしゃいな。いつでもいいわよ、兵にはよく言っておくから」

「···はい」

 間近でみるとほんとうに綺麗だ。おまけにとてもいい匂いがする。

 琴箭はなんだかくらくらしながら素直にうなずいた。


 帰りの道中はまるでお祭り騒ぎだった。みなの口からでるのは陽気な言葉ばかり。琴箭の功を誉めそやしたり、冗談をいったりと笑いがたえなかった。

 琴箭もその輪のなかに加わりながら、はずむ気持ちで帰途についた。

 あとはアイツがうまくやるはず······よね。




 そろそろ月が昇った頃だろうか。牢の窓から真っ暗な外をぼんやりと眺めていた月塊は、呑気にもひとつおおきな欠伸(あくび)をした。

 屈辱のがんじがらめからは解放されたが、あいかわらす両腕をうしろで拘束されたままだ。こんどは太縄のかわりに、分厚い硬木の枷がはめられていた。

 ったく、俺もとんだヤキが回っちまったもんだぜ。あんな小娘の口車にのってやるなんてよ······


「ま、おかげでけっこうな手間がはぶけたけどな」


 あのふたりきりになった物置小屋のなかで、アイツはいった。

 ──この襲撃には法則性がある。


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