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【完結】月琴伝  作者: 雲野 蜻蛉
桃園楼
105/403

曹隊、妖異にふれること②


 深夜。

 漢陣内ににわかに銅羅の音が鳴り渡った。



「敵襲ーッ! 敵襲ーッ!」



 そら来たと孟徳は装具をかため、天幕をとび出した。

「やはり来たぞ! 数は?」

あらかじめ陣の外周部でやすんでいた副将に訊ねかける。

「いまだ不明ですが······なぁに、備えに怠りはござらぬ!」


 彼の言うとおり、備えは万全であった。兵たちもまだまだ元気いっぱいで、ちょっとやそっとの奇襲で遅れをとるはずなどない。

 そのはずであった。



 異様な感覚が彼らを包んだのは、それからしばらくたってのことだ。大将のもとに駆け込んできた物見が伝えた、あり得べからざる事実を耳にした時からだった。


「賊軍の数を把握! 数は十三! みな徒步(かち)にて進んでまいります!」

「なにぃ?」

副将は不満げに唸って立ちあがった。


「たった十三だと? しかも馬にも乗らぬ、そのような者どもに何故かように時を要するのだ!」


「は······それが、その······奴ら、斬っても突いてもいっこうに堪えませぬ。力も並の兵とは思えぬほどで」


「馬鹿者! 決死隊とはそういうものだ! ()めてかからず、数で一気に押し潰すのだ!」

「は!」


 物見から伝令へと忙しないその兵は前線に飛んで返る。しかし、またすぐに戻ってきた。その顔は唖然とし、いまだ我が目に見たものを信じられぬといった風で、松明に照らされていながらも蒼白となっているのがわかった。


「······駄目です! 賊兵はいまだ健在! 我が軍に被害がふえています!」

「なんだと!」


 副将は激怒してその兵の胸ぐらを絞りあげる。

「貴様、なんと伝えた! 部将どもはいったい何を······ええい、もうよいッ!」


 兵を投げ捨てると、副将は孟徳にむき直る。

「ワシが行って参る!」

「まあ待ちたまえ」


 孟徳はカッカとするその副将をなだめるように、床几(しょうぎ)から腰をあげた。


「貴殿までそう頭に血がのぼっていては、だせる力も出せなくなりますぞ。ここは共にいこう」

「おお、心得た!」



 二将が陣頭にたってみると、なるほど、白装束の一団が、周りを十重二十重(とえはたえ)に囲む漢の兵を意にも介さず、じわじわと進んできていた。


「む······なんなのだ、アレは」


 異質なのは、その歩みの速度からしてそうだった。

 遅い。とても命はやる戦場でのこととは思えぬ。あれではまるで、午後の庭を散策しているかのようてはないか。げんにこちらの放った矢はほぼ命中している。賊兵みな、針鼠のように矢を全身からはやしているのだ。

 にもかかわらず、その賊兵どもに怯む様子はいささかもみえず、ただ異様なまでの静寂をもって、手にもった剣や槍といったまとまりのない得物を振るった。そのたびに、こちらの兵が、まるで塵のごとくに掃き飛ばされていく。


「······信じられぬ」

副将もただ愕然として、その様をみるのだった。



中国的ホラーといえば······

昔観てからちょっとトラウマ。


明日、つづきを更新いたします。


一部よみがなを追加しました。

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