表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
激流の中で  作者: 清水京太郎
第1章 武闘大会
9/94

08 ドラゴンオーブ

 アレンはハザードのところへ歩み寄った。


 「一体どういうつもりだよ」


 「まあそう怒るなって。この手は今でも痺れているんだから」


 ハザードは震えている手をアレンに見せた。


 「これじゃ剣を持てないだろ?」


 (あの一撃か・・・)


 「わかってもらえたか?」


 「魔法はどうなんだ。途中で止めただろ」


 ハザードは苦笑した。


 「あの魔法はコケ脅しさ。たとえ撃っても君に致命傷は与えられない」


 「なにっ?」


 「君が魔法にビビって降参してくれることを期待してたんだよ」


 (本当かよ・・・あの時出てきた緑色のやつからは強い気配を感じたけど・・・)


 「さっ、分かったら、とっとと王のところへ行けよ。褒美もたんまりあるだろうし」


 ハザードは震える手でどうにか剣を腰に収めた。


 「魔法の話は信じられねえな。本当のことを言えよ」


 「じゃな、アレン。お互い生きてたら、またどこかで会おう」



 ハザードは後ろ手でアレンに手を振りコロセウムを後にした。アレンは憮然とした表情で遠ざかるハザードを見送った。


 (なんか納得できねえ・・・)


 服を着替えて荷物をまとめ、しばらく待っていると大臣オッドが現れた。王のところへ案内するとアレンに告げ、言われるままオッドについて行った。コロセウムを出て中庭を歩き、王のいる城へと入って行った。途中ですれ違った城の兵隊や役人のような連中は、揃ってオッドに通り道を開けていた。


 城の扉が開くと、そこは大きなホールになっていて彫刻や絵画が飾ってあった。外はまだ暑かったが城の内部は壁が石でできているせいか、ひんやりしていた。オッドの靴音が静かな城内に響いた。


 やがてある部屋の前に到着し、この部屋の中で待つように言われた。部屋の扉を開けると、ガラスのテーブルを挟んでソファーが置いてあった。アレンは背負っていた荷物を降ろし、ソファーに座って足を組んだ。


 (さて・・・ついにあの依頼をされる時がきたな・・・)


 アレンの答えは決まっていた。ノーだ。呪いを解くなんてどう考えても無理だし、どうやったら解けるのかを調べる時間も無駄だと思えた。アレンにはウォルタ国に対する忠誠心などなく、お姫様がどうなろうと興味の無いことだった。


(まっ、じっちゃんに聞けば何か知ってるかもな・・・)


 考え事をしていると、オッドが複数の衛兵を連れて部屋に入ってきた。それを見たアレンは、ソファーから立ち上がった。


 「で、どこへ行けばいいんだ?」


 「王は急用が出来た」


 「はっ?」


 「よって、わたしが王の代理としてお前に賞品を授ける」


 なんだか変な話だと思ったが、別に王に会いたいわけでもないのでアレンはソファーに座り直した。続いて正面にオッドが座った。オッドはついてきた部下らしき男から、木の箱を受けとりテーブルに置いた。


 「これが今回の賞品だ。受け取れ」


 オッドが箱を開けると、眩い金色の剣が入っていた。箱を開けたとき、オッドは意地悪な顔でアレンを見た。


 (どうだ。貴様ら貧乏人にとっては、涎が出るほどの代物だろう)


 アレンはチラっと金の剣を見て視線をオッドに戻した。


 「賞金はないのか?」


 「なに賞金?金は無い。その金の剣だけだ」


 「あっ、そう」


 アレンは箱をパタンと閉じ、脇にかかえて自分の荷物を背負った。


 「じゃ、俺はこれで」


 そう言って、立ち上がった。


 「待て、」


 オッドの声を聴いた衛兵が、素早くアレンの前に立ちはだかった。


 「なんだよ」


 「優勝した貴様の栄誉を称え、王から直々に依頼事がある」


 (やっぱりきやがったか・・・)


 オッドは不敵な笑みを浮かべていた。アレンはどうしようか考えていた。しかし、このまま話を聞かずに強引に部屋を出ようとするには、今の状況は無理がありそうだった。


 (一応聞いてから断るか・・・)


 アレンはため息をつき、荷物と金の剣が入った箱を足元に置き再びソファーに座った。


 「で、頼みってのは?」


 「単刀直入に言おう。ドラゴンオーブを探してほしい」


 「ドラゴンオーブ?なにそれ?」


 「ドラゴンオーブは片手で持てるくらいの大きさ。ガラスのようなもので出来ており、薄水色の透き通った丸い玉だ」


 「なんだ、眠り姫の呪いの話じゃねえのか」


 オッドはビクっとなった。


 「貴様・・・その話をどこで聞いた・・・」


 急にその場の空気が重くなった。


 「さあ、どこかな?忘れちゃったよ」


 オッドは衛兵に目で合図した。衛兵は一斉に剣を抜き、アレンをソファーに越しに取り囲んだ。


 「なに?やろうってのか」


 「フフフっ、貴様は確かに強い。それはコロセウムの戦いぶりを見て分かった」


 「で?」


 「バカめ、いくら貴様が強くても王立軍5千を相手に出来ると思っているのか?」


 アレンはヤレヤレといった表情で頭を掻いた。


 「そんな数に勝てるわけねえだろ。だけど、」


 「だけど?なんだ」


 「やるっていうのなら、相手になるまでだ。例え、勝てないのが分かっていてもな!


 アレンはそう言いながら立ち上がり、オッドを睨みつけながら自分の荷物から剣を取り出した。


 (この小僧、本気で死ぬ気か・・・面白い・・・)


 オッドは片手を上げた。衛兵は一斉に剣を収め戦闘態勢を解いた。


 「貴様にはドラゴンオーブを探す命がある。この場でどうこうするのは本意ではない。但し、」


 「なんだ」


 「どこで聞いたか知らんが、眠り姫のことは他言無用だ。いいな」


 アレンは黙っていた。時間が経つにつれ少しずつその場の空気が再び重くなってきた。衛兵は自分の剣に手を伸ばしていた。ふとアレンはこの部屋の外にも兵隊が複数いる気配を感じた。


 (こいつら、俺が断れば殺すつもりか・・・)


 その時、アレンの頭に宿屋で話した男の言葉が浮かんだ。


 ((「コロセウムの武闘大会は、誰にも公開してないらしい」))


 (あっ! まさか依頼を断った優勝者を殺してたってのか・・・)


 アレンは頭の中で思い付いた衝撃的なことをオッドに悟られないように平静を装った。


 (だから公開せず、優勝者が誰か分からないようにしてたのか・・・)


 オッドは、ずっと黙っているアレンに痺れを切らした。


 「おい、どうなんだ!眠り姫のことを他言無用でドラゴンオーブを探すのか?」


 アレンはオッドに目線を移して、こう言った。


 「わかった。その話受けるぜ」



 (こいつらの悪事、俺が暴いてやる!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ