85 死闘の果てに
「出てこいアレン。それくらいで、くたばるお前ではなかろう!」
アレンは、エルダーの光の鎌で破壊された岩の瓦礫に埋もれていた。
「くたばるわけ、ねーだろー!」
瓦礫が吹き飛んだ!
現れたアレンの皮の鎧は、激しい戦闘で無数の斬り跡が刻まれていた。
額から、血が流れている。
「はあはあ、これからが本番だぜ」
「フフッ、そんな荒い息でよく言う」
「俺はまだ若いんだよ!」
アレンは、またもエルダーに向け跳躍した!
ガキーーン!
ギリギリギリ、
「ふん!」
気合とともに、エルダーは強引にアレンの剣を押し返した!
「ぐはぁ!」
ドカーン!
吹き飛ばれたアレンは、瓦礫に背中から激突して地面に転がった。
「くっ、くそ・・・」
「どうした!お前の力とは、その程度のものか!」
「まっ、まだだ・・・」
「ドラゴンオーブを奪うなど笑止。一生かかっても、わしには勝てぬわ」
エルダーは、剣を降ろした。
「もうこの戦いにも飽きた。お前を葬り、お前の仲間とやらも、加担した罰で皆殺しにしてやろう」
「なんだと!」
アレンは、ゆっくりと起き上がった。
「はあはあ、じっちゃん・・・それ本気で言っているのか、」
「当たり前じゃ。わしの言うことは常に正しい。わしは神だ。人間に罰を与えて当然。ドラゴンオーブを盗みにくる、お前らこの世界のゴミどもにな」
「・・・そうかい」
アレンの足元が、ぼんやりと赤く光った。
「そこまで言うんだな・・・わかったぜ・・・」
(アレン・・・それでいい・・・お前の本気を、このわしに見せてみろ)
「俺のじっちゃんは死んだ。てめえは、俺の知るじっちゃんじゃねえ!」
「ほお、ではわしは一体何だと言うのだ」
「お前は、俺の敵だよ!」
その声とともに、アレンは全身赤い光に包まれた!
「だあぁー!」
ガキーーン!
両者は、中央で激突した!剣と剣とが激しく衝突する!
ギリギリギリ、
「うおおぉー!」
アレンは、そのまま剣を縦に振り切った!
ドカーーン!
今度は、エルダーが吹き飛ばされた!
ドラゴンオーブが置いてあった岩場に、背中から激突した!
「はあぁ!」
アレンは超速で飛び込み、エルダーが埋まった瓦礫の上から剣を振った!
ガキーン!
エルダーは瓦礫に埋もれがらも、アレンの剣を受け止める!
「ナメるな!」
エルダーを覆っていた瓦礫が吹き飛んだ!
バキッ、ドカッ、ズカッ!
「うがあ、」
アレンは無数の瓦礫を身体全身に受け、地面に倒れた。
大き目の岩が腹部にめり込み、アレンは血を吐いた。
「ペッ、」
血の塊を吐き出すと、腕で口を拭きながら起き上がる。
既に目前でエルダーは剣を構えていた。
全身が赤い炎に包まれている。
「ふん!」
物凄い速さで、エルダーの剣がアレンの心臓目掛けて振り下ろされた!
ガキーーン!
アレンはなんとか剣で受けたが、エルダーの剣の勢いで吹き飛ばされた。
ドカーン!
「ぐはぁ、」
また、元いた岩の瓦礫の山にアレンは激突した!
「どうしたアレン!」
(はあはあ・・・くそっ・・・つ、強え・・・なんで・・・なんで、こんなに強えんだ・・・全身が痛え・・・)
「さあ、かかってこい!」
(・・・もしかして・・・・・・どうやっても、俺は勝てねえのか・・・)
この時、アレンはある二文字が脳裏に浮かんだ。
それは、これまで数々の戦いをこなしてきたアレンが、一度も思い浮かべたことのない文字だった。
アレンは剣をささえに、立ち上がった。
さっきまであった赤い光は、消え失せている。
戦う意思はあるが、ダラリと下がった両手が動かなった。
「どうやら、終わりのようだな」
「はあはあ・・・なっ、ナメんじゃねえよ、」
「もはやそう言うのが、精一杯だろう」
エルダーの赤い炎が消えた。
「お前はよくやった。生身の人間が、神にここまで善戦したというのは誇りに思っていいぞ」
「・・・もう、勝った気か」
「お前を育てたわしの、せめてもの情けだ。苦しまずに、一瞬であの世に送ってやろう」
エルダーは、再び全身が赤い炎に包まれた!
「さらばだ、アレン!」
エルダーは、剣を両手を持ちながら後ろにエビぞりになった!
「ふん!」
そして、そのまま抱え込むように剣を振る!
キーーン!
(なんだとっ!)
なんと、通常の何倍もある大きさの光の鎌が、回転しながらアレンに向かってきた!
それは鎌というより光の輪!
ガキーン!
ギリギリギリ!
アレンは剣を両手で持ち、巨大光の鎌を受けた!
両足が押されて、後ろへ下がる!
(こいつは、俺だけを斬りにきたやつじゃない・・・
岩の洞窟の反対側にいる、サリヤ達も狙ってやがる・・・)
アレンは光の鎌を弾き飛ばせなかった!
剣でなんとか受けてはいるが、光の鎌は激しく回転しながらアレンを押している!
ガガガガガッー!
(こっ、このまま押し負けたら・・・こいつは岩を貫通して・・・)
「くっ、くそー-!」
アレンは、両腕にありったけの力を込めて押し返した!
しかし、光の鎌は動かない!
ガガガガー!
高速で回転する光の鎌と剣が擦れて、火花が飛び散る!
アレンの剣が押されて、アレンの胸に徐々に食い込んできた!
「ぐはぁ、」
「アレン!そのままだと、お前を切り裂いたあと、仲間も真っ二つになるぞ!」
(・・・そんなこと・・・わかってんだよ・・・)
ボタ、ボタ、ボタ、
アレンの胸から出た血が、アレンの剣を伝って地面に落ちる。
(・・・くそっ・・・もう、俺はもうダメなのか・・・)
その時、
アレンの頭の中で声が聞こえた。
<<あなたの場合、強いのか弱いのか、よくわからないわね>>
<<あ、はい。軽く雷撃魔法を撃ちましたが、まさかあの程度で死ぬとは思ってなかったですが>>
<<そう言えば、君達がなぜこの村に来たのか聞いてなかったな>>
なぜかアレンの頭に、出会った頃の3人の声が聞こえた。
(そうだ・・・ここで俺が諦めたら・・・俺達4人の物語が終わる・・・・・・くそーっ!)
ガガガガー!
アレンの足元が、赤い色に光り始めた。
(終わらせて・・・た、ま、る・・・かぁーー!)
ガキーーン!
アレンは回転する巨大光の鎌を、ついに押し返した!
光の鎌は夜空へ消えた。
「はあはあはあ、」
アレンは胸を手で押さえながら、膝をついた。
胸からの出血が止まらない。
(はあはあはあ・・・くっ、くそ・・・もう体力が・・・ほとんど残ってねえ・・・・・・だが・・・)
アレンは、剣を構えた。
「ほお、まだやる気か」
アレンはエルダーを睨みながら、呼吸を整えていた。
(なにか、しかけてくる気か・・・そんなボロボロの身体で・・・)
(はあはあ、・・・俺にできることは・・・たぶん次で最後だろう・・・・・・この最後の一撃に・・・俺は全てを・・・賭ける・・・)
アレンは、剣を両手を持ちながら後ろにエビぞりになった!
(そっ、それは!まさか!)
「はあはあ、じっちゃん!これで最後だ!」
そして、そのまま抱え込むように剣を振った!
それはエルダーが放った巨大光の鎌と全く同じものだった!
(なんという奴じゃ!)
エルダーは、剣でアレンの放った巨大光の鎌を受け止めた!
その時!
キーーン!
(なに!)
もう一つの光の鎌が、すぐ後ろにいた!
(ばかな!同時に2つ放ったというのか!)
回転する巨大光の鎌は縦に放たれていたが、後ろの光の鎌は横だった!
(縦を防げば、横を食らうというわけか!)
エルダーは左手を伸ばし、手をパッとひろげた!
その手に、瞬時に槍が出現する!
エルダーは後ろから飛んできた光の鎌を、その槍で間一髪弾き飛ばした!
「がぁー!」
そして気合とともに、アレンの放った回転する巨大光の鎌を夜空へ押し返した!
「はあはあ、今のは危なかっ、」
エルダーの視界に赤く染まった刃が入った。
そして、その刃を持つアレンの顔も。
エルダーは微笑んだ。
バシュ!
ガシャン、
エルダーの手から、剣と槍が地面に落ちた。
エルダーが地面に崩れ落ちる瞬間、アレンは剣を放り出しエルダーを受け止めた。
「アッ、アレン・・・強くなったな・・・」
エルダーは、元の痩せた老人の身体に戻っていた。
「じっちゃん・・・どうして、わざと俺に斬られただよ・・・」
「フフフッ・・・」
「サリヤ!来てくれ!」
「はっ!」
耳を塞いでいたサリヤは、カッと両目を開いた!
「呼んでる!アレンがあたしを呼んでる!」
「なに!何も聞こえなかったぞ」
「アクロス、この岩の扉を壊して!」
「そんな事をしたら、ドラゴンオーブが、」
「いいから!早く!」
「わっ、わかった、」
アクロスは、アッシュ・ノワールを大上段に構えた!
「ふん!」
カキン!
「うわぁ!」
なんと、岩に傷ひとつつけられずに、アクロスの斧は跳ね返された!
「ばっ、ばかな・・・ただの岩じゃないのか、」
「下がってください、サリヤさん!」
ギルが岩の前に立った。
「少々手荒いですが、この岩の洞窟ごと吹き飛ばします!」
ギルは右手にサージュ・グロークを握り、左手を高く上げた!
「吹き飛べ!エクスプロージオン!」
ドカーーン!
凄い爆発音とともに、砂煙が舞い上がった!
「そっ、そんなばかな・・・」
砂塵がおさまり見えた視界には、先程と変わらない岩の洞窟があった。
サリヤは、岩の扉にしがみついた。
「アレン!行けない!この岩が!・・・この岩が開かないのよ・・・」
サリヤは、その場に泣き崩れた。
「サリヤ!どうしたんだ、早く、早く来てくれ!」
エルダーは、血に染まった震える手でアレンの手を握った。
「フフッ、アレン・・・こうしていると・・・昔のことを思い出すの・・・」
「・・・じっちゃん、」
「おっ、覚えておるか・・・お前とわしは・・・冬の冷たい風が吹きすさぶ海岸を・・・二人で歩いた・・・」
「・・・」
「わっ、わしらは・・・めぐんでもらった一杯の粥を・・・空き家の軒下で、二人で分けて飲んだんじゃ・・・」
アレンに抱かれているエルダーの身体から、止めどなく血が流れている。
「じっちゃん、しゃべるんじゃねえよ、」
「・・・小さいお前をかかえ・・・わしは何度死のうと思ったことか・・・」
「じっちゃん!」
「その時・・・いっ、いつもお前は・・・わしを見て笑った・・・わしを見て微笑んだ・・・・・・そっ、その笑顔が・・・わしに生きる勇気を・・・与えた・・・」
「頼む・・・頼むから、しゃべらないでくれよ・・・」
エルダーは、起き上がろうとした。
「がはっ!」
そして、大量に吐血した。
「サリヤー!なにしてる!来てくれ、早く!」
全身で叫ぶアレンの腕を、エルダーは血まみれの手でつかんだ。
「・・・アッ、アレン・・・たっ、頼んだぞ・・・・・・お前が・・・こっ、この世界で・・・さっ、最後の・・・き・・・ぼ・・・・・・」
ドサッ
アレンの腕をつかんでいたエルダーの手は、地面に落ちた。
「・・・じっ、じっちゃん・・・じっちゃん・・・・・・じっちゃー-ん!」
アレンは、動かなくなったエルダーを強く抱きしめた。




