表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
激流の中で  作者: 清水京太郎
第9章 流星にのって
86/94

85 死闘の果てに

 「出てこいアレン。それくらいで、くたばるお前ではなかろう!」

 

 アレンは、エルダーの光の鎌で破壊された岩の瓦礫に埋もれていた。

 

 「くたばるわけ、ねーだろー!」

 

 瓦礫が吹き飛んだ!

 現れたアレンの皮の鎧は、激しい戦闘で無数の斬り跡が刻まれていた。

 額から、血が流れている。

 

 「はあはあ、これからが本番だぜ」

 

 「フフッ、そんな荒い息でよく言う」

 

 「俺はまだ若いんだよ!」

 

 アレンは、またもエルダーに向け跳躍した!

 

 ガキーーン!

 

 ギリギリギリ、

 

 「ふん!」

 

 気合とともに、エルダーは強引にアレンの剣を押し返した!

 

 「ぐはぁ!」

 

 ドカーン!

 

 吹き飛ばれたアレンは、瓦礫に背中から激突して地面に転がった。

 

 「くっ、くそ・・・」

 

 「どうした!お前の力とは、その程度のものか!」

 

 「まっ、まだだ・・・」

 

 「ドラゴンオーブを奪うなど笑止。一生かかっても、わしには勝てぬわ」

 

 エルダーは、剣を降ろした。

 

 「もうこの戦いにも飽きた。お前を葬り、お前の仲間とやらも、加担した罰で皆殺しにしてやろう」

 

 「なんだと!」

 

 アレンは、ゆっくりと起き上がった。

 

 「はあはあ、じっちゃん・・・それ本気で言っているのか、」

 

 「当たり前じゃ。わしの言うことは常に正しい。わしは神だ。人間に罰を与えて当然。ドラゴンオーブを盗みにくる、お前らこの世界のゴミどもにな」

 

 「・・・そうかい」

 

 アレンの足元が、ぼんやりと赤く光った。

 

 「そこまで言うんだな・・・わかったぜ・・・」

 

 (アレン・・・それでいい・・・お前の本気を、このわしに見せてみろ)

 

 「俺のじっちゃんは死んだ。てめえは、俺の知るじっちゃんじゃねえ!」

 

 「ほお、ではわしは一体何だと言うのだ」

 

 「お前は、俺の敵だよ!」

 

 その声とともに、アレンは全身赤い光に包まれた!

 

 「だあぁー!」

 

 ガキーーン!

 

 両者は、中央で激突した!剣と剣とが激しく衝突する!

 

 ギリギリギリ、

 

 「うおおぉー!」

 

 アレンは、そのまま剣を縦に振り切った!

 

 ドカーーン!

 

 今度は、エルダーが吹き飛ばされた!

 ドラゴンオーブが置いてあった岩場に、背中から激突した!

 

 「はあぁ!」

 

 アレンは超速で飛び込み、エルダーが埋まった瓦礫の上から剣を振った!

 

 ガキーン!

 

 エルダーは瓦礫に埋もれがらも、アレンの剣を受け止める!

 

 「ナメるな!」

 

 エルダーを覆っていた瓦礫が吹き飛んだ!

 

 バキッ、ドカッ、ズカッ!

 

 「うがあ、」

 

 アレンは無数の瓦礫を身体全身に受け、地面に倒れた。

 大き目の岩が腹部にめり込み、アレンは血を吐いた。

 

 「ペッ、」

 

 血の塊を吐き出すと、腕で口を拭きながら起き上がる。

 既に目前でエルダーは剣を構えていた。

 全身が赤い炎に包まれている。

 

 「ふん!」

 

 物凄い速さで、エルダーの剣がアレンの心臓目掛けて振り下ろされた!

 

 ガキーーン!

 

 アレンはなんとか剣で受けたが、エルダーの剣の勢いで吹き飛ばされた。

 

 ドカーン!

 

 「ぐはぁ、」

 

 また、元いた岩の瓦礫の山にアレンは激突した!

 

 「どうしたアレン!」

 

 (はあはあ・・・くそっ・・・つ、強え・・・なんで・・・なんで、こんなに強えんだ・・・全身が痛え・・・)

 

 「さあ、かかってこい!」

 

 (・・・もしかして・・・・・・どうやっても、俺は勝てねえのか・・・)

 

 この時、アレンはある二文字が脳裏に浮かんだ。

 それは、これまで数々の戦いをこなしてきたアレンが、一度も思い浮かべたことのない文字だった。

 

 アレンは剣をささえに、立ち上がった。

 さっきまであった赤い光は、消え失せている。

 

 戦う意思はあるが、ダラリと下がった両手が動かなった。

 

 「どうやら、終わりのようだな」

 

 「はあはあ・・・なっ、ナメんじゃねえよ、」

 

 「もはやそう言うのが、精一杯だろう」

 

 エルダーの赤い炎が消えた。

 

 「お前はよくやった。生身の人間が、神にここまで善戦したというのは誇りに思っていいぞ」

 

 「・・・もう、勝った気か」

 

 「お前を育てたわしの、せめてもの情けだ。苦しまずに、一瞬であの世に送ってやろう」

 

 エルダーは、再び全身が赤い炎に包まれた!

 

 「さらばだ、アレン!」

 

 エルダーは、剣を両手を持ちながら後ろにエビぞりになった!

 

 「ふん!」

 

 そして、そのまま抱え込むように剣を振る!

 

 キーーン!

 

 (なんだとっ!)

 

 なんと、通常の何倍もある大きさの光の鎌が、回転しながらアレンに向かってきた!

 それは鎌というより光の輪!

 

 ガキーン!

 ギリギリギリ!

 

 アレンは剣を両手で持ち、巨大光の鎌を受けた!

 両足が押されて、後ろへ下がる!

 

 (こいつは、俺だけを斬りにきたやつじゃない・・・

  岩の洞窟の反対側にいる、サリヤ達も狙ってやがる・・・)

 

 アレンは光の鎌を弾き飛ばせなかった!

 剣でなんとか受けてはいるが、光の鎌は激しく回転しながらアレンを押している!

 

 ガガガガガッー!

 

 (こっ、このまま押し負けたら・・・こいつは岩を貫通して・・・)

 

 「くっ、くそー-!」

 

 アレンは、両腕にありったけの力を込めて押し返した!

 しかし、光の鎌は動かない!

 

 ガガガガー!

 

 高速で回転する光の鎌と剣が擦れて、火花が飛び散る!

 アレンの剣が押されて、アレンの胸に徐々に食い込んできた!

 

 「ぐはぁ、」

 

 「アレン!そのままだと、お前を切り裂いたあと、仲間も真っ二つになるぞ!」

 

 (・・・そんなこと・・・わかってんだよ・・・)

 

 ボタ、ボタ、ボタ、

 

 アレンの胸から出た血が、アレンの剣を伝って地面に落ちる。

 

 (・・・くそっ・・・もう、俺はもうダメなのか・・・)

 

 

 その時、

 アレンの頭の中で声が聞こえた。

 


  <<あなたの場合、強いのか弱いのか、よくわからないわね>>

  

 

  <<あ、はい。軽く雷撃魔法を撃ちましたが、まさかあの程度で死ぬとは思ってなかったですが>>

 

 

  <<そう言えば、君達がなぜこの村に来たのか聞いてなかったな>>

 

  

 なぜかアレンの頭に、出会った頃の3人の声が聞こえた。

 

 (そうだ・・・ここで俺が諦めたら・・・俺達4人の物語が終わる・・・・・・くそーっ!)

 

 ガガガガー!

 

 アレンの足元が、赤い色に光り始めた。

 

 (終わらせて・・・た、ま、る・・・かぁーー!)

 

 ガキーーン!

 

 アレンは回転する巨大光の鎌を、ついに押し返した!

 光の鎌は夜空へ消えた。

 

 「はあはあはあ、」

 

 アレンは胸を手で押さえながら、膝をついた。

 胸からの出血が止まらない。

 

 (はあはあはあ・・・くっ、くそ・・・もう体力が・・・ほとんど残ってねえ・・・・・・だが・・・)

 

 アレンは、剣を構えた。

  

 「ほお、まだやる気か」

 

 アレンはエルダーを睨みながら、呼吸を整えていた。

 

 (なにか、しかけてくる気か・・・そんなボロボロの身体で・・・)

 

 (はあはあ、・・・俺にできることは・・・たぶん次で最後だろう・・・・・・この最後の一撃に・・・俺は全てを・・・賭ける・・・)

 

 アレンは、剣を両手を持ちながら後ろにエビぞりになった!

 

 (そっ、それは!まさか!)

 

 「はあはあ、じっちゃん!これで最後だ!」

 

 そして、そのまま抱え込むように剣を振った!

 

 それはエルダーが放った巨大光の鎌と全く同じものだった!

 

 (なんという奴じゃ!)

 

 エルダーは、剣でアレンの放った巨大光の鎌を受け止めた!

 

 その時!

 

 キーーン!

 

 (なに!)

 

 もう一つの光の鎌が、すぐ後ろにいた!

 

 (ばかな!同時に2つ放ったというのか!)

 

 回転する巨大光の鎌は縦に放たれていたが、後ろの光の鎌は横だった!

 

 (縦を防げば、横を食らうというわけか!)

 

 エルダーは左手を伸ばし、手をパッとひろげた!

 その手に、瞬時に槍が出現する!

 エルダーは後ろから飛んできた光の鎌を、その槍で間一髪弾き飛ばした!

 

 「がぁー!」

 

 そして気合とともに、アレンの放った回転する巨大光の鎌を夜空へ押し返した!

 

 「はあはあ、今のは危なかっ、」

 

 エルダーの視界に赤く染まった刃が入った。

 そして、その刃を持つアレンの顔も。

 

 エルダーは微笑んだ。

 

 バシュ!

 

 

 ガシャン、

 

 エルダーの手から、剣と槍が地面に落ちた。

 

 エルダーが地面に崩れ落ちる瞬間、アレンは剣を放り出しエルダーを受け止めた。

 

 「アッ、アレン・・・強くなったな・・・」


 エルダーは、元の痩せた老人の身体に戻っていた。

 

 「じっちゃん・・・どうして、わざと俺に斬られただよ・・・」

 

 「フフフッ・・・」

 

 「サリヤ!来てくれ!」

 

 

 

 「はっ!」

 

 耳を塞いでいたサリヤは、カッと両目を開いた!

 

 「呼んでる!アレンがあたしを呼んでる!」

 

 「なに!何も聞こえなかったぞ」

 

 「アクロス、この岩の扉を壊して!」

 

 「そんな事をしたら、ドラゴンオーブが、」

 

 「いいから!早く!」

 

 「わっ、わかった、」

 

 アクロスは、アッシュ・ノワールを大上段に構えた!

 

 「ふん!」

 

 カキン!

 

 「うわぁ!」

 

 なんと、岩に傷ひとつつけられずに、アクロスの斧は跳ね返された!

 

 「ばっ、ばかな・・・ただの岩じゃないのか、」

 

 「下がってください、サリヤさん!」

 

 ギルが岩の前に立った。

 

 「少々手荒いですが、この岩の洞窟ごと吹き飛ばします!」

 

 ギルは右手にサージュ・グロークを握り、左手を高く上げた!

 

 「吹き飛べ!エクスプロージオン!」

 

 ドカーーン!

 

 凄い爆発音とともに、砂煙が舞い上がった!

 

 

 「そっ、そんなばかな・・・」

 

 砂塵がおさまり見えた視界には、先程と変わらない岩の洞窟があった。


 サリヤは、岩の扉にしがみついた。

 

 「アレン!行けない!この岩が!・・・この岩が開かないのよ・・・」

 

 サリヤは、その場に泣き崩れた。

 

 

 

 「サリヤ!どうしたんだ、早く、早く来てくれ!」

 

 エルダーは、血に染まった震える手でアレンの手を握った。

 

 「フフッ、アレン・・・こうしていると・・・昔のことを思い出すの・・・」

 

 「・・・じっちゃん、」

 

 「おっ、覚えておるか・・・お前とわしは・・・冬の冷たい風が吹きすさぶ海岸を・・・二人で歩いた・・・」

 

 「・・・」

 

 「わっ、わしらは・・・めぐんでもらった一杯の粥を・・・空き家の軒下で、二人で分けて飲んだんじゃ・・・」

 

 アレンに抱かれているエルダーの身体から、止めどなく血が流れている。

 

 「じっちゃん、しゃべるんじゃねえよ、」

 

 「・・・小さいお前をかかえ・・・わしは何度死のうと思ったことか・・・」

 

 「じっちゃん!」

 

 「その時・・・いっ、いつもお前は・・・わしを見て笑った・・・わしを見て微笑んだ・・・・・・そっ、その笑顔が・・・わしに生きる勇気を・・・与えた・・・」

 

 「頼む・・・頼むから、しゃべらないでくれよ・・・」

 

 エルダーは、起き上がろうとした。

 

 「がはっ!」

 

 そして、大量に吐血した。

 

 「サリヤー!なにしてる!来てくれ、早く!」

 

 全身で叫ぶアレンの腕を、エルダーは血まみれの手でつかんだ。

 

 「・・・アッ、アレン・・・たっ、頼んだぞ・・・・・・お前が・・・こっ、この世界で・・・さっ、最後の・・・き・・・ぼ・・・・・・」

 

 ドサッ

 

 

 アレンの腕をつかんでいたエルダーの手は、地面に落ちた。

 

 「・・・じっ、じっちゃん・・・じっちゃん・・・・・・じっちゃー-ん!」

 

 

 アレンは、動かなくなったエルダーを強く抱きしめた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ