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激流の中で  作者: 清水京太郎
第1章 武闘大会
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07 風の剣士ハザード

アレンのあまりの一方的な強さに、コロセウムはざわついた。


 「おっ、おい、あのガキ、めちゃくちゃ強いんじゃないのか?」


 「なあに、心配すんな。あのラウルスって野郎が、たまたま油断してただけさ」


 「そうだよ、あんなヒョロっこい奴が勝てるわけがないぜ」


 「おまえら、見たろ!奴の速さを!ありゃ、普通じゃねえぜ」


 「・・・」


 「きっと魔法かなんか使ってやがるんだ。でなきゃ・・・」


 「でなきゃ?」


 「化物だよ」


 「・・・」


次のアレンとの対戦者は、会場から逃げ出していた。


 「棄権とみなし、アレンの勝とします」


そんなこんなで、アレンは順調に勝ち進んでいった。

初戦のように背後に回ることはせず、開始直後に攻撃を仕掛け、失神か降参で早々に決着を付けていった。

対戦相手は、ラウルスのような肉体派が殆どで、速さという圧倒的な優位性でアレンが負けることはなかった。


そして、いよいよ決勝の時がきた。


 「次の試合、今大会の決勝戦です」


負けた者は退場するルールなので、コロセウムには二人しか残っていなかった。

中央に出てきたのは、アレンと、レイピアの様な銀色の細身の剣を腰に持った青年だった。


 「待っていたよ」


 「ん? 俺はお前を知らないぞ」


 「では、改めて自己紹介をしよう。俺はハザード、風の剣士ハザードだ」


その端正な顔立ち。小さな顔に細い顎、切れ長の黒い瞳で、肩の辺りまで伸びた細く長い髪色は、銀色だった。


 「風の剣士? なんかカッコイイな」


 「お前はアレンだな」


 「そうだ」


 「アレン、一応君の名を覚えておこう。俺の名は覚えなくていいぞ。どうせ・・・」


 「どうせ、お前はここで死ぬから、とか言うんだろ? お決まりだね、セリフが」


アレンは、意地悪く笑った。


 「フっ、いいだろう」


ハザードはうつむき、そして腰の剣を抜いた。


審判は、二人の顔を交互に見て言った。


 「対戦始め!」


 「今のが最後の言葉になったな!」


そう言いながら、アレンに向かって凄い勢いで飛び込んできた!


 (早い! こいつ今まで本当の力を隠してやがったな) 


ハザードの攻撃は、ラウルスのときのようにゆっくりとは見えなかった。

アレンは、受けるのが精一杯だった。

一瞬でアレンの間合いに入ったハザードは、受けられた剣を引き、すぐに身体を回転させてアレンの足元を狙った。

それにぎりぎり反応したアレンは、飛び上がって避けた。


 「あぶねー、」


ハザードは、離れて間合いをとった。


 「よく受けたな、俺の一撃を」


ハザードの動きは、無駄が無く洗練されていた。

今までの相手とは明らかに段違いで、強敵と呼べる存在であった。


 (こいつ、めちゃ強え。速さもじっちゃんと同じか、それ以上・・・)


アレンも負けじと、ハザードに攻撃を繰り出したが、ことごとく受けられた。

何度か打ち合っているとき、ハザードの体制が少し崩れた瞬間があった。


 (今だ!)


アレンは、その瞬間を見逃さなかった。

素早く大上段に剣を構え、だぁー、という気合とともに打ち降ろした。

試合を決定付ける渾身の一撃!


 ガキーーーン!


金属が激しくぶつかり、火花が飛び散った。


「ぐっ、」


ハザードは両手で剣を支えながらも、アレンの一撃を受け止めた。

アレンは、咄嗟に後ろへ下がった。


 (まじかこいつ、この一撃も受けやがった・・・)


しかし、受けたハザードの両手は、アレンの凄まじい一撃の威力で痺れてしまった。

ハザードは、剣を持てなくなり地面に落とした。

そして、何か考えていた。


 「おい、どういうつもりだ。降参か?」


 「フフ、君は強い。だが、やはり俺には勝てない」


 「なに言ってやがんだ、剣を持てよ」


ハザードは、アレンを見てニヤリと笑った。


 「まさか、素手でやろうってのか?」


 「教えてやろう。なぜ俺が、風の剣士と呼ばれているのかを」


 (ん、何かするつもりか・・・)


ハザードは両手を合わせ、掛け声とともに精神集中した。


ハザードの髪が逆立ってきた。

そして、何か呟き始めた。


 (あれは、まさか・・・)


 「精霊召喚!」


突然、ハザードの頭上に緑色の妖精が姿を現した!

妖精は好戦的な目で、アレンを見ていた。


 「これで君の勝ちは無くなったな」


 (くそ! 魔法が使えるのか!)


 「くらうがいい、風の召喚魔法! ラ・・・」


ハザードが、風の召喚魔法を行使しようとした、その時!

アレンの背後に、突如巨大な黒い影を見た!


 (あ、あれは・・・あれは、まさか・・・)


ハザードは、両手を降ろし呪文を止めた。


召喚された精霊は消え、ハザードの髪も元に戻った。

アレンの背後に出た黒い影もスっと消えた。


 (ん、どうしたんだ?)


ハザードは、審判の男を見た。審判は何事もなく、こちらを見ていた。


 (今のが見えてないのか・・・)


そして、審判に向かってこう言った。


 「俺は負けを認める」


 「なっ、なにーー!?」


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