表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
激流の中で  作者: 清水京太郎
第8章 神の島
71/94

70 穴へ突撃

 アレンとサリヤ、そしてギルの3人は、イールドの村からディスペアへと続く道を歩いていた。

 

 「こんな綺麗な道があったなんて、山道をずっと歩いていた俺は一体・・・」

 

 アレンは後ろを振り返ってつぶやいた。

 

 「だから遅かったのね」

 

 「でも、よく俺があの村に行くとわかったな」

 

 「ディスペアから一番近い集落はイールドですからね。アレンさんなら、必ず来ると思ってました」

 

 「なるほど、」

 

 「アレンはイールドの村を知ってたの?」

 

 「ディスペアを出て何日か後に、旅の吟遊詩人に出会ったんだよ。そいつが、あの村を教えてくれた。まあ、辿り着くのに苦労したけどな」

 

 「アレンさんが村に来た夜は、土砂降りの雨でしたもんね。再会した時のボロボロ具合を見ると、ディスペアからの苦労がわかりました」

 

 「そんなに酷かったのか、俺って」

 

 「ええ、それはもう」

 

 サリヤは急に立ち止まった。

 

 「ねえ、アレン」

 

 「なんだ?」

 

 アレンとギルも止まり、後ろを振り返った。

 

 「あたし言い過ぎた。おじいさんのこと・・・」

 

 アレンは小さくため息をついた。

 

 「サリヤ、お前の言った事は正しいよ。じっちゃんのことを探しながら、ドラゴンオーブも見つかればいいななんて俺はずっと考えてた。甘過ぎたよ、その考えは」

 

 「・・・」

 

 「死ぬことは怖くなかった。俺も命を賭けて戦ってきたし。けど、仲間に犠牲者が出た瞬間に、」

 

 アレンは、青い空に浮かぶ雲を見上げた。

 

 「俺は怖くなったんだ」

 

 サリヤはアレンの手を取った。

 

 「ごめんなさい、あたしアレンのそんな気持ち全然わかってなかった、」

 

 「サリヤ、リーダーは仲間の犠牲を乗り越えても、目的を達成しなきゃいけない。俺には無かったんだよ、その自覚が、」

 

 「アレンさん・・・」

 

 「命を賭ければいいってもんじゃない。全てにおいて、俺は考えが甘過ぎだ」

 

 アレンはサリヤを見た。

 

 「サリヤのあの一言で俺は救われたんだ。むしろ、感謝してるくらいだぜ」

 

 サリヤはアレンの手をギュっと握りしめた。

 アレンはサリヤの肩をポンと叩いた。そして、ディスペアへと続く、真っすぐに伸びる道の彼方を見た。

 

 「さあ、行こうぜ。アクロスが待ってる島にな」

 

 「うん、」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 アレン達は、10日程でディスペアの町へ戻って来た。

 サランの恐怖から解放さたれた町は安堵の笑顔が戻り、見るから活気があった。

 

 カランカランとカウベルを鳴らして、アレンは宿屋の扉を開けた。

 それぞれの部屋で荷物を降ろし、さっそくアレンの部屋で3人は穴へ突撃する作戦会議を行った。

 

 「あの穴ですが、かなり距離があると思われますね」

 

 「まあ、反対側の海に繋がってるくらいだからな」

 

 「問題はどうやって穴の中に入るかね」

 

 「サリヤさん、僕に考えがあります」

 

 「お、ギル。何かたくらんでるな」

 

 「穴に入る方法は僕に任せてもらうとして、アレンさんに凄く重要な話があります」

 

 「なんだ、」

 

 「神の島の場所、わかりましたよ」

 

 「なにっ!」

 

 ギルはアレンの前に、部屋から持ってきた3冊の古文書を並べた。

 

 「わかったって、まだ2冊残ってるんだぜ?」

 

 「そうです。ですが、ドラゴンオーブが隠された神の島の位置は、どれか3冊そろえばわかるようになっているんですよ」

 

 「そうだったのか・・・」

 

 「僕も驚きましたが、地面に埋めた地の古文書を掘り出して、最後のページを見たときそれに気が付きました」

 

 「じゃ、あと2冊は集めなくていいってわけか」

 

 「いえ、そうはいきません」

 

 「えっ?」

 

 「アレンさん、覚えてますか。最後のページには、地図といっしょに言葉が書かれていたことを」

 

 「そういえば、あったな」

 

 「あの言葉は、おそらく5冊全部必要です。仮に揃っても、何を言ってるか理解できないかも知れませんが、」

 

 「それってドラゴンオーブを見つけるための言葉か?」

 

 「今の時点では何とも・・・」

 

 「ふむ・・・」

 

 ギルは3冊の古文書の最後のページを開けた。

 

 「この3冊の地図によると、神の島はテンプ村の東側、あの崩れた砂の城のもっと東に位置します」

 

 「東側の海ってことか?」

 

 「いえ、この3つの地図の交点は陸地です」

 

 「陸?神の島って、海に浮かぶ島じゃないのか?」

 

 「僕もそう思ったんですが、何度見ても陸地ですね」

 

 「陸地なのに島って変だわね」

 

 3人は考え込んだ。

 

 

 「ここでいくら考えても仕方ない。まずは、アクロスを追いかけようぜ」

 

 「そうですね、わかりました」

 

 「ギル、さっき何か考えがあるって言ってたよな。具体的にどうやるんだ?」

 

 「さっそく取り掛かりましょう。アレンさんも手伝ってください」

 

 「おっけー、さっそく始めるか」

 

 

 

 そして次の日、

 アレン達は、アクロスが落ちた穴の前にいた。

 

 「これを試す時が来ましたね」

 

 「ギル、大丈夫なのか?」

 

 アレンが不安そうに見つめるのは、木の丸太を紐でくくったイカダだった。

 

 「穴の中がどうなっているのか全くわかりませんので、大丈夫と言い切れないですが、とにかく頑丈に作りました」

 

 「でも、これって3人が座ってちょうどくらいの大きさしかないわよね」

 

 「サリヤさん、あまり大きく作ると、穴が小さくなっていた場合動けなくなるか、イカダが壊れてしまいますから」

 

 ギルは、不安そうなアレンに説明した。

 

 「中は真っ暗だと思いますので、前にはランタンを取り付けました。そして、後ろには摩擦によるブレーキをかける棒を2本取り付けてあります」

 

 「方向はどうやって決めるんだ?」

 

 「舵はありません」

 

 「ない?」

 

 「おそらく真っすぐ海に繋がっているはずです。それに舵を付けたとしても、きっと役に立たないでしょう」

 

 「それくらい速くなるってことか、」

 

 ギルは頷いた。

 

 「もし右や左に行く必要があれば、そこはもう運に任せるしかないですね」

 

 「ふむ、」

 

 アレンは、足元の真っ暗な穴を覗き込んだ。

 

 「ギル、この穴って、そもそも何のためにあるんだろうな」

 

 「ちょっとわかりませんが、もしかすると、サランが非常時の脱出用に掘ったのではないでしょうか」

 

 「ふーむ、だとすると、あの時サランは脱出しようとしてたわけか」

 

 「あと、気になることがひとつ、」

 

 「ん、なんだ?」

 

 「もしかしたら、地下水が流れ込んでいるかも知れません」

 

 「だとしたら、どうなる?」

 

 「抵抗がなくなりますから、イカダはとてつもなく速くなるでしょうね」

 

 「そのためのブレーキだろ?」

 

 「ええ、そうなんですが・・・」

 

 「なんだ、歯切れが悪いな」

 

 「あ、いえ。ちょっと考え過ぎかもしれません、大丈夫です」

 

 「そうか、」

 

 アレンは若干気になったが、未知の穴に対して、ここであれこれ言っても仕方のないことだろう。

 

 「よし、じゃ思い残すことは無いな」

 

 「ちょっとアレンさん、その言い方止めましょうよ」

 

 アレンが前に乗り、その後ろにサリヤが乗った。

 

 「いいですか、行きますよ」

 

 「ギル、ちょっと待て」

 

 アレンは、服の外に出していた首飾りを服の中に入れた。

 

 「いいぜ、」

 

 「アレンさん、多分経験したことがない速度になると思いますよ」

 

 「覚悟は出来てるさ」

 

 「途中でイカダがバラバラになったら、もうヤバイことになりますね」

 

 「ギル、ここまで来たらさっきの話しじゃないが運を天に任せようぜ。お前が大好きな神に祈りでも捧げるか」

 

 「アレンさんが神って言ってくれるだけで、僕は救われた気持ちになります」

 

 ギルは微笑んだ。

 アレンは、ランタンに火を付けた。

 

 「よし、押せ!ギル!」

 

 「行きます!」

 

 ギルは穴に向けてイカダを押し、落ちる直前にサリヤの後ろに飛び乗った。

 イカダは真っ逆さまに穴の暗闇に落ちた。

 進むにつれ、ギルの予想通り地下水が穴に流れ込んでいた。イカダは壁の抵抗を受けることなく進み、速度をさらに上げた。

 ゴォーーという風切り音が、3人の聴覚を奪う!

 

 「こっ、これは思った以上の速さだ!ギル、ブレーキをかけろ!」

 

 「わかりました!振動が凄いと思うので、イカダにつかまってください!いきますよ!」

 

 ギルは木の棒のブレーキを穴の壁にこすりつけた!

 ガガガーという凄い音と振動がアレン達に伝わった!

 

 「うわぁー」

 

 思わずアレンはイカダから落ちそうになったが、なんとか踏ん張った。

 ギルがブレーキを離すと、途端にイカダは加速した。

 穴を駆け抜ける風で、ランタンが吹き飛んだ。

 イカダはとてつもなく速くなり、凄い風圧がアレン達を襲った!アレンは目が開けられない!

 

 「くそっ、息が出来ない・・・ギル!ブレーキだ!ブレーキをかけろ!」

 

 ギルは2本のブレーキを同時にかけた!

 

 ガガガガー

 

 イカダはまるで暴れ馬のように、バタンバタンと激しく上下に揺れた!

 サリヤは固く目を閉じ、一言も喋らずアレンの背中にしがみついている!

 ギルは2本のブレーキを、さらに思い切りかけた!

 

 バキッ!

 

 「ギル!今の音は何だ!」

 

 「・・・」

 

 

 「ギーール!」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ