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激流の中で  作者: 清水京太郎
第7章 覇王サラン
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68 旅の終わり

 グラグラグラ、

 

 サランの城が大きく揺れ出した。

 部屋の壁が次々と崩れ落ちている。

 

 「城が崩れる!アレンさん、早く逃げましょう!」

 

 ギルはアレンの腕を引っ張った。

 

 「ギル!何言ってやがんだ!アクロスのこの穴に落ちた!助けに行くんだよ!」

 

 「わかってます!ですが、何の道具も無い中で、この穴に入るのは危険です!ここは一旦下がりましょう!」

 

 その時サリヤは、微かな潮の香を感じた。

 

 「ダメだ!今助けないと奴は死んじまうぞ!」

 

 「今助けに行ったら、僕達も死にますよ!」

 

 「うるせー!じゃ、お前は残れ、俺は行く!」

 

 「仕方ない、」

 

 ギルはアレンに金縛りの魔法をかけた。アレンは途端に動けなくなった。

 

 「ギル!お前何してんだ!」

 

 「サリヤさん、アレンさんを僕に背負わせてください」

 

 「わかった、」

 

 アレンは動けないまま、背中合わせでギルの背中に乗せられた。ギルはアレンと自分の胴体を、持っていた紐で縛った。

 ギルは燃えた古文書のところへ走った。

 古文書は固い表紙を残して、後は灰になっていた。

 

 「ダメだ、最後のページも燃えている・・・」

 

 サリヤは、焦げた本の表紙をギルに見せた。

 

 「これは闇の古文書、」

 

 ガガガガー、

 

 揺れが激しくなってきた。

 

 「サリヤさん、急ぎましょう!」

 

 「そうね、」

 

 サリヤとギルは部屋の扉に向け走った。扉の近くに人影が見えた。

 

 「シアンさん!どうしてここへ、」

 

 「話は後だ!早く逃げないと巻き込まれるぞ!」

 

 ギルは城の入り口に向け走ろうとした。

 

 「そっちはもう崩れてダメだ、こっちに抜け道がある!」

 

 「わかりました!」

 

 サリヤとギルは、シアンの誘導で崩れゆく城の中を走った。その間も、アレンはギルの背中でわめいていたが、サリヤとギルは城を脱出すべく全力で疾走した。

 

 ドドドーーン・・・

 

 脱出した直後、サランの城は崩れ落ちた。物凄い砂煙が舞い、辺りは真っ白になった。

 サリヤとギルは城近くの芝生まで来て、走るのを止めた。

 

 「はあはあ、サッ、サリヤさん・・・大丈夫ですか・・・」

 

 「・・・平気よ、」

 

 ギルはアレンを芝生の上に降ろした。

 

 「あれ、シアンさんは?」

 

 「そう言えば、いないね」

 

 「どこかで、はぐれたのかな・・・」

 

 二人が後ろを振り向くと、真っ白な煙で何も見えない。

 

 「ギル・・・いい加減魔法解いてくれよな、」

  

 「あ、忘れてました、」

 

 

 やがて砂煙は無くなり、視界が元に戻った。

 サランの城は瓦礫へと変わっていた。

 アレンは芝生の上に座ったまま、立ち上がろうとしない。瓦礫になった城跡を、ぼんやり眺めていた。

 

 しばらくして、アレンは立ちあがって言った。

 

 「宿屋に戻ろう」

 

 

 

 宿屋に戻った三人は、着替えて厨房のテーブルに座っていた。

 そこには、アクロスが朝作っていたスープの鍋が、そのまま残されている。

 夕闇が辺りを暗く染めていた。

 

 「アレンさん、明日からアクロスさんを探しましょう」

 

 「・・・」

 

 「アレンさん、」

 

 「ギル、お前もわかってんだろ、」

 

 「えっ、」

 

 「もう手遅れなんだよ」

 

 「・・・でも、少しでも生きている可能性があれば、」

 

 「あの時!」

 

 アレンはテーブルをドンと叩いた。サリヤとギルは、ビクっとなった。

 

 「お前が止めなけりゃ、アクロスを助けられる可能性がまだあった!アクロスは生きてたんだよ!」

 

 「・・・」

 

 「でも俺達は宿屋に戻り、テーブルにこうして座ってるじゃねえか・・・今更何をやっても手遅れさ」

 

 サリヤとギルは、言い返すことが出来なかった。

 


 「ギル・・・燃えたのは何の古文書だ・・・」

 

 「闇です」

 

 「そうか・・・」

 

 アレンは立ち上がった。

 

 「アクロスは俺の身代わりで死んだ・・・闇の古文書も燃えちまった・・・もう、俺達が旅を続ける理由は無くなったな、」

 

 「アレン、あなたまさか・・・」

 

 アレンはサリヤとギルの顔を見た。

 

 「ここで終わりにしようぜ」

 

 「ちょっと待って下さい!それって、解散ってことですか!」

 

 「ああ、そうさ」

 

 「アレンさん!古文書は全部で5冊です!あと、もう一冊残ってますよ!」

 

 「アレン、探そうよ!ここで解散なんて、あたし嫌だからね!」

 

 「お前らー!」

 

 アレンは大声を出した。サリヤとギルは黙った。

 

 「アクロスは死んだんだ。残ってる古文書を探して、もしサリヤやギルが死ぬことになったら、俺はどうすりゃいいんだ・・・そこまでして、あんな本を集める意味あんのかよ!」

 

 アレンは椅子に座った。

 

 「あの本はギルの言う通り、世界を救う本かも知れねえ。だけど、俺はそんなことより、お前らの命の方が大切なんだ」

 

 「アレン・・・」

 

 「仲間が死ぬくらいなら、世界なんてどうだっていいんだよ」

 

 アレンは立ちあがり、厨房を出て行こうとした。

 

 「アレンさん!」

 

 「ここで解散だ!俺達の旅は、ここで終わりだ・・・お前らは自分の場所へ帰れ」

 

 「・・・」

 

 アレンは厨房を出ていった。

 サリヤとギルは、厨房のテーブルに座ったまま動かなかった。

 

 しばらくして、階段を降りてくる音と、カウベルのカランカランという音が寂しく聞こえた。

 

 

 宿屋を出たアレンは、そのまま暗闇の中へ消えて行った。

 

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