66 聖剣vs闇剣
サランは、うずくまっているアクロスの髪を鷲掴みにした。
「首と胴を切り離してやろう」
そう呟き、サランは闇剣オプスキュリテを振り上げた。
アクロスは、このチャンスを待っていた。
サランの一瞬の隙をつき、アッシュ・ノワールで剣を持っているサランの腕を斬り落とした。サランの腕は、剣を持ったまま肘から先が床に落ちた。
「地獄へ落ちろ!」
アクロスは、ルタールアニュレでサランの小さな胴体を三つに切り裂いた!
しかし、サランは平然としている。
「ばっ、ばかな・・・」
斬れた感触はあるのに、サランは全く無傷だった。
「ククク、腕を斬り落としたのは、なかなか良かった。だが、それもわずかに生き延びただけのこと」
ブシュ!
「ぐああぁー、」
アクロスの背後から、サランの斬り落とされた腕が、闇剣でアクロスの背中を突き刺した。闇剣は、アクロスの背中から腹部を貫通していた。腹部から突き出た剣の周りから、血が噴き出した。
アクロスは、ガクっと膝から崩れ落ちた。
サランはアクロスに剣を突き刺している腕を引き抜き、斬られた部分にくっつけた。
「ばっ、化物め・・・がはっ!」
アクロスは、口から吐血した。
「身体がデカイだけあって、なかなかしぶとい奴だな」
サランは、足でアクロスの頭を踏みつけた。
「これで終わりにしよう」
サランはアクロスの首を狙って、闇剣オプスキュリテを大きく振り上げた。
「これまでか・・・」
アクロスは目を閉じた。
ヒュっという風切り音とともに、闇剣が振り下ろされた、
その時!
ガキーン!
アクロスの首筋直前で、闇剣オプスキュリテは、聖剣オセアオン・ブロンシュに阻まれていた。
「苦戦してんじゃねえか、アクロス」
「ア、アレン!」
サランは素早く後ろに下がり、アレンと距離をとった。
(接近がまるで感知出来なかった・・・恐ろしく素早い奴だ・・・こいつ人間か?)
「お前がサランとか言う角野郎のボスか」
「来たか、残りのゴミ虫ども」
サリヤはアクロスを回復させた。
アクロスの傷口は、あっという間に塞がった。
「すまん、助かった、」
「あとでゆっくり聞かせてもらうぜ、俺達に毒を盛ったわけをな」
「アレン・・・俺は、」
「今は何も言うなよ。あんたにも、何か譲れない事情があったんだろ」
「・・・」
「しかし、サリヤの皿にだけ毒を入れ忘れるってのは間抜けだったな。お陰で、俺達はサリヤに治してもらえたぜ」
(なんだと?二時間は身体がマヒする無味無臭の猛毒のトレドシキン。入れたのは鍋だ・・・サリヤの皿だけ入らないなんて、そんな事あり得るわけがない)
「僕達をのけ者にするなんて、アクロスさんヒドイですよ。僕は、額が切れて血まみれになったんですからね」
「そうよ、アクロス。あたし達は仲間なんだからね」
「サリヤ、本当になんともないのか?」
「えっ、全然平気だけど?」
「スープを飲まなかったのか?」
「全部美味しくいただいたわ。おかわりするために下に降りたら、アレンとギルが倒れてたってわけ」
(どういうことだ・・・)
「まあ、今はあのコスプレ野郎に集中しようぜ」
サランが、アレンに向けて言った。
「無駄話しは終わったか?」
「ああ、今からお前をブチのめすとこだ」
「お前がアレンとかいう小僧か、」
サランはアレンの剣を見た。
「なるほど。聖剣に選ばれし者か。ククク、これは楽しくなりそうだ」
「勝手に楽しんでんじゃねえよ、」
その時、アレンの手に持つ聖剣オセアオン・ブロンシュが、キーンと高い金属音を発した。
「ん、剣が怒ってる?お前、この剣と知り合いか、」
「さあな、勝手に想像してろ」
「ま、いっか。じゃ、本番といこうぜ」
アレンは剣を手に低い姿勢になった。
「待て。ここはひとつ取引しようじゃないか、」
「ちょっとおい、今更何言ってやがんだ」
「お前達が持っている本を全て私に渡し、本について知っている事を教えるのだ。そうすれば命だけは、助けてやるぞ」
それを聞いたアレンは失笑した。
「命だけは助けるって、悪人お決まりのセリフだな。命乞いした方がいいのは、お前の方だろ」
「わからんのか、私は最後のチャンスをお前達に与えているのだぞ」
アクロスはアレンに言った。
「アレン、奴は斬っても、まるで斬られてないように無傷だ。何か特別な能力があるぞ」
「心配するな、アクロス。俺はこれまでいろんな変態を相手にしてきた、問題ないぜ。お前はここで待機してくれ」
アレンは前へ歩み出た。
「さあ、もう御託はたくさんだ。そろそろやろうぜ」
「なぜそう死にたがる。理解できん奴だ」
「理解していただなくて結構」
「そうか、わかった」
サランは両手を広げた。
「まずは、これから始まる戦いの邪魔が入らんようにしよう」
サランは、ハァと気合を入れた声を上げた。
その時、サリヤは異変に気が付いた!
「ギル!」
サリヤとギルは、部屋全体が何かにコーティングされるような感覚を覚えた!
「させるか!」
ギルは闘杖サージュ・グロークを掲げ、うおぉぉーっと唸り声を上げた!
「なるほど、魔導は洗練されているな。だが圧倒的に経験が足りてない。まだまだ若いな」
サランが、ハアァ!という大きな声を上げた途端、ギルは何かに吹き飛ばされ壁に激突した!
「があっ」
「ギル!」
サリヤはギルに駆け寄り、すぐ回復魔法をかけた。しかし、発動しない。
「えっ、まさか・・・ギル、これって・・・」
「サリヤさん・・・すみません。奴の方が僕より魔法力が高い・・・」
ギルは壁にぶつかったときに頭を切ったのか、血が流れてきた。
アレンはサランの方を向いた。
「お前、何をしやがった」
「頭から血を流した仲間に聞いたらどうだ」
「アレンさん・・・奴はアンチマジックエリアをこの部屋に展開したんです。僕とサリヤさんは、魔法が使えなくなりました・・・」
「ククク、」
サランは薄笑いを浮かべた。
「これで邪魔がなくなった。小僧、貴様の優位性も消滅したというわけだ」
「バカじゃねえの?」
「なんだと、」
「俺がお前みたいなコスプレ野郎を倒すに、いちいち仲間を頼るわけないだろう。もっと大物なら話しは別だけどな」
「大口を叩きよって、」
「大口かどうか、教えてやるぜ!」
ガキーン!
聖剣と闇剣が激しくぶつかり火花が飛んだ!
サランはアレンの瞬間的な攻撃を直前で受けた。サランの顔面のすぐ先に、アレンの剣身がキラリと光っている。
「こっ、小僧!」
アレンは後ろにジャンプし、サランと間合いを取った。
「どうやら、顔と頭は斬られても無傷とはいかないようだな」
「・・・」
(顔と頭が弱点・・・アレン、お前は一瞬でサランの構造を見抜いたというのか・・・)
「貴様かなり実戦を経験してきたな」
「かなりなんてもんじゃねえぜ。俺は生まれてから、ずっと生きるか死ぬかの戦いの中で育ってきた」
(俊敏な動き、鋭い洞察力・・・この小僧、野生動物か・・・)
ガッキーン!
また激しく両者の剣はぶつかった!
その瞬間、アレンはサランの背後に素早く回った。その動きは早過ぎてサランは捉えきれない!
アレンはサランの首と胴を切断すべく、剣を横に走らせた!
「もらったぁ!」
しかし、アレンの剣はサランの首筋まであとわずかというところで止まった。
いや剣が止まったというより、アレンの動き自体が止まっている。
「なんだ、これは!」
「動けまい」
「あっ、あれは、パラハソメイル!」
手で頭を押さえているギルに、アクロスは言った。
「ギル、それは何だ!」
「金縛りの魔法です!動きを封じる魔法!」
「なに!」
「しかし、おかしい。アンチマジックエリアでは、サランも魔法が使えないはず、なぜ魔法が発動したんだ・・・」
サランは反転し、アレンの方を向いた。
「魔法なんか汚ねえマネしやがって、解除しやがれ!」
「魔法?バカめ、ここはアンチマジックエリアだ。魔法は私とて使えない」
「じゃ、なんで動けねえんだよ!」
「それは魔法ではない、呪詛だ。いわゆる呪いの類だ」
「なんだか知らねえが、正々堂々と勝負しやがれ、このコスプレ野郎!」
「これは私の戦い方において、紛れもなく正々堂々だよ。ククク、」
「くそー!」
「死ね、小僧!」
ヒューン!
突如、弓型の光がサランの顔面目掛けて飛んできた。
サランは瞬間的に顔を下へ向けて避けたが、サランの髪が切断された。
「この死にぞこないが!」
アクロスはサランに向け突進した!
「アレンが動けないなら、俺が戦う!」




