表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
激流の中で  作者: 清水京太郎
第7章 覇王サラン
65/94

64 少年シアン

 「おー、あそこに村か町かわかんねえけど、あるな」

 

 アレンは少し高い所から遠くを見ていた。

 

 「きっと、ディスペアですよ」

 

 「行ってみるか」

 

 アレン達は集落が見える方へ歩いた。

 

 

 

 「結構住居の密度が高いですね。道も綺麗に整備されてる」

 

 「これは村から町へ変わった感じだな」

 

 「あ、あそこに宿屋みたいな看板があるわ」

 

 アレン達は、宿屋と思える店の扉を開けた。カウベルが、カランカランと大きな音を立てて鳴った。

 にも関わらず、店員らしき男がカウンターの中で居眠りをしている。

 

 「おい、起きろ」

 

 アレンが声をかけても、男は眠ったままだった。

 サリヤは男を睨んだ。

 

 「ぐわぁー、頭が痛いぃ!」

 

 店の男は頭をかかえて、うずくまった。

 

 「起きたか、」

 

 次の瞬間、店の男の頭痛がピタっとやんだ。

 

 「あ、あれ?」

 

 「おい、ここは宿屋か?」

 

 「うわぁ!あんた誰だ!」

 

 「客だよ、」

 

 「客?」

 

 「ここは宿屋なのかって聞いてるんだ、」

 

 「確かにここは宿屋だが、客が来るなんて・・・」


 店の男は、驚いた様子でアレン達をジロジロ見ながらカウンターから出てきた。

 

 「あんたら船で来たのか?」

 

 「ああ、そうさ。船は壊れちまったがな」

 

 「よくそれで、生きてここまで来れたな、」

 

 「俺達は運がいいんだよ」

 

 ギルが店の男に言った。

 

 「しばらくここに宿泊したいのですが、部屋は空いてますか?」

 

 「ああ、部屋は空いてるが、こんな田舎の村に来て一体何の用だ?」

 

 「田舎って、結構家があるじゃねえか」

 

 「それは奴らが来て、この村を勝手に変えてるからさ」

 

 「奴ら?」

 

 アクロスが店の男に言った。

 

 「奴らってだ・・・」

 

 アクロスは途中で喋るのを止めた。

 アレンとアクロスは、互いに顔を見合わせた。

 

 「アレン、これは・・・」

 

 「団体だな」

 

 アレン達は、扉を開け表に出た。

 遠くから、額に角が生えた背が高く体格のがっしりした男と、その後ろに狼だが二足歩行している集団が、アレン達の方に向かってくる。

 

 「獣か?」

 

 「あれはウエアウルフだな」

 

 角が生えた男とウエアウルフの集団は、アレンと距離を取って止まった。

 

 「見知らぬ一行が、このディスペアに入ったとの情報を聞きましてね」

 

 アレンは、先頭に立つ角が生えた男を睨んでいた。

 

 (こいつ、かなり強えな・・・)

 

 「あなた達ですよね?」

 

 アレンは答えた。

 

 「俺達に何か用か、」

 

 「この町に外部からの訪問者は、久しく無かったものですから、」

 

 「それで?」

 

 「ちょっと、お尋ねしたい事があります」

 

 「なんだ、」

 

 「この本について何か知らないですか?」

 

 角が生えた男は、一冊の本をアレンに見せた。

 

 「あっ、あれは古文書!」

 

 ギルが叫んだ。

 遠くでよく見えないが、これまで得た古文書と同じデザインの表紙に間違いない。

 

 「フフフ・・・ハッハッハ、」

 

 アレンは大きな声で笑った。

 

 「何がおかしいのですか?」

 

 「こうも話がトントン拍子に進むとはな。笑えるぜ」

 

 「全くだ。新しい町に来た途端に次の古文書に出会えるなんて。俺達は幸運だな」

 

 「ほー、あなた達は、この本の事を知っているようですね」

 

 アレンは剣を抜いた。

 

 「お前が持っているその本、俺達に渡してもらおうか」

 

 「ククク、いきなりですか」

 

 「力ずくでもいいんだぜ」

 

 「あなた達も、この本を集めているということですね」

 

 「ってことは、お前も本を集めているってことか」

 

 「私はグレア。私は集めるように指示されているだけですよ」

 

 アクロスは、背中のアッシュ・ノワールを手に持った。

 

 「おとなしく渡した方が身のためだぞ」

 

 「フフ、やる気満々ですね。あなた達が私をどう見ているか知りませんが、私は偉大なるサラン様の手下にしかすぎませんよ」

 

 「ほー、ボスがいるってわけか」

 

 「その私でさえ、あなた達に余裕で相手できます。大人しく、そちらが持ってる本を渡した方がいいと思いますがね、」

 

 「お喋りな奴だな。そんなに自信があるなら、かかってこいよ」

 

 アレンは剣を構えた。

 

 「待て、アレン」

 

 アクロスは、手でアレンを制した。

 

 「ん、どうした?」

 

 「ここは一旦下がろう」

 

 「はっ?何言ってんだ。次の古文書は目の前だぜ」

 

 「わかっている。だが俺達は長時間泳いで疲れている、ベストな状態じゃない」

 

 「まあ、それはそうだが、俺達4人いれば問題ないんじゃねえ?」

 

 「アレン、お前も感じてるだろう。あの角が生えたグレアって奴、かなりできるぞ」

 

 「どうした、いつものアクロスじゃないぞ」

 

 「それに背後のウエアウルフも相当な数だ。今ここで戦えば、町に被害が出る」

 

 町に被害が出ると言われると、アレンは弱かった。

 

 「じゃ、どうするんだよ」

 

 アクロスは、アレンの前に出てグレアに言った。

 

 「お前らはこの町を作っているんだろ。今ここで戦って、町が壊れるのは本意ではないはず。違うか?」

 

 「そうですね、本意ではありませんね」

 

 「俺達もこの町に着いたところで、疲れている。ここは、お互い引かないか」

 

 「さっきはやる気満々だったのに、おかしいですね。だが、まあいいでしょう。町が壊れては、元も子もないので。では、明日私達の城へ来てください。もちろん、あなた達が持っている古文書も忘れないで下さいね。そこで奪い合いをしましょう。まあ、その時はサラン様があなた達の相手をされるので、一瞬で終わると思いますがね、ククク」

 

 アレンはグレアを睨みつけて言った。

 

 「ペラペラ喋りやがって。俺達の実力を思い知らせてやるぜ、覚悟しとけよ」

 

 アクロスは、アッシュ・ノワールを背中に戻して言った。

 

 「貴様らの城へ行く道は?」

 

 「この町の住人なら誰でも知ってますよ。適当に聞いてください」

 

 「明日がお前らの最後の日になるな、この角野郎」

 

 「ククク、せいぜい頑張って下さいよ」

 

 グレアとウエアウルフの集団は、くるりと反転し通りの向こうへ引き上げていった。


 

 パチパチパチ、

 

 拍手が聴こえた。

 

 「いやー、お見事」

 

 一人の少年が、アレン達の前に出てきた。

 アレンは剣を背中に戻した。

 

 「なんだ、お前は」

 

 「俺は、この町に住んでいるシアンだ。あの魔物の連中にケンカを売る人が現れるなんてねー。いやー、カッコよかったよ」

 

 「俺達はあの本がほしいだけさ。別に争いたいわけじゃないぜ」

 

 「なるほどね。あ、本って言えば、グレアのボスのサランが集めてるらしいけど、あの本は何か特別なのか?」

 

 「お前に話すことじゃない」

 

 「冷たいなー。まあ、俺にはどうでもいいことだけどね、」

 

 「じゃ、聞くなよ」

 

 アレンは宿屋に戻ろうとした。

 

 「そうだ。俺が奴らの城へ行き方を教えてやるよ」

 

 「お前に聞かなくても、この町の誰でも知ってるんじゃないのか?」

 

 「俺は奴らの事が知りたくて、何度か潜入したことがあるんだ。中の構造まで詳しく知ってるぜ」

 

 アレンはシアンの顔を見た。アレン達を騙そうとしているようには感じられない。

 

 「わかった。宿屋で聞こう」

 

 アレン達は、シアンを連れて宿屋に入った。

 

 「あんた達、とんでもないことをしたな!」

 

 宿屋の店の男は震えながら、アレンに食って掛かった。

 

 「俺達にとっては普通のことさ」

 

 「あのグレアに逆らうなんて・・・もう俺達はおしまいだ!」

 

 アクロスは、店の男の肩を叩いた。

 

 「明日、あの魔物からこの町を解放する」

 

 「あんた達は、グレアやサランの恐ろしさを知らないからそんな事が言えるんだよ!」

 

 アレンは男に顔を近づけて言った。

 

 「あんたも俺達の恐ろしさを知らないだろ?」

 

 ギョっとした店の男は、アレンの不敵な笑みに背筋が寒くなった。

 

 「あんた達は一体何者なんだ、」

 

 「さあな」

 

 「・・・」

 

 アレンは、後ろにいるシアンの方を向いた。

 

 「じゃ少年、奴らの城のこと教えてもらおうか」

 

 「少年じゃなくて、俺はシアン。覚えてくれよな、」

 

 「わかった。シアン、教えてくれ」

 

 アレンがふとサリヤを見ると、なにか考え事をしている顔だった。

 

 「どしたサリヤ、何かあるのか?」

 

 

 「えっ、ううん、なんでもない。大丈夫よ・・・」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ