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激流の中で  作者: 清水京太郎
第7章 覇王サラン
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63 さらばディアマンテ

 バチバチバチ、ドドーーン

 

 雷鳴が鳴り響いた。

 叩きつけるような土砂降りの雨と、上下に激しく揺れる波にディアマンテ号は必死に耐えていた。

 波の高さは、想像を超えている。

 

 「サリヤ!大丈夫か!」

 

 サリヤは船室の柱を握りしめ、下を向き口も利けない状態だった。

 船は急降下と急上昇を繰り返し、アレン達は立っていられなかった。

 

 「くそっ、なんだよ!この急な嵐は!」

 

 「南の大陸まであと少しというところなのに!」

 

 「これが海竜神の怒りか、」

 

 もう舵も効かない。船は嵐の中で、流れに身を任せるしかなかった。

 

 バキバキ、ドドーン

 

 何かに衝突して、急に船が止まった!

 

 「ぐはぁ、」

 

 「キャー、」

 

 アレン達は急停止した反動で、船室の壁に叩きつけられた!

 

 バキバキバキ!

 

 なんと船の真下から、鋭利な刃物のような尖った岩が船室に突き出してきた!

 

 「うわぁ!」

 

 「船から岩が!」

 

 「アレンさん!これは岩礁に乗り上げたようです!」

 

 海水がまるで噴水のように、一気に船室に浸水してきた!

 

 「このままでは、船ごと海に沈みます!」

 

 「どうする、アレン!」

 

 「皆、荷物を背負って海に飛び込め!」

 

 「アレンさん!どっちが陸なのか、全くわからないんですよ!」

 

 アレンは、海水を頭から浴びながらギルに言った。

 

 「今そんなこと言ってる場合じゃない!荷物を背負って早く飛び込め!」

 

 「手漕ぎのボートは使わないのか!」

 

 「ダメだ、波が高過ぎる!」

 

 アレン達は、それぞれの荷物を背負いデッキに出た。

 風の轟音と叩きつける雨で、声がほとんど聞こえない。

 アクロスとサリヤが、海に飛び込んだ!

 

 「ギル!お前も早く飛び込め!」

 

 「ア、アレンさん!僕は泳げません!」

 

 「いいから、行くんだよ!」

 

 アレンはギルを突き飛ばした!


 「うわぁー」

 

 ギルは悲鳴を上げながら、海に落ちた。

 続いてアレンが飛び込もうとしたとき、背後に大きな気配を感じた。

 アレンが後ろを向くと、荒れ狂う波間に光る2つの目がアレンを見ている。

 

 「お前が海竜神か。俺達の大事な船を壊しやがって、タダで済むと思うなよ」

 

 アレンは吹きすさぶ風雨の中、背中のオセアオン・ブロンシュを抜いた。

 抜いた剣から、キーンという高い金属音が鳴っている。

 

 「風に共鳴しているのか?」

 

 アレンは剣を高々と、灰色の空に真っすぐ掲げた。

 キーンという金属音は、更に大きな音になった。

 海に光る2つの目は、しばらくじっとしていたが、そのまま海中深く消えた。

 

 「逃げやがったか、」

 

 アレンは、剣を背中に戻した。

 急に嵐がおさまってきた。

 雨がやみ、風は穏やかな流れに変わった。空を覆っていた灰色の厚い雲が切れ、太陽の光が差してきた。

 

 アレンが船から海を見ると、海中から大きな尖った岩がいくつも突き出ていた。

 

 「アレンー!」

 

 海にいるアクロスが手を振っていた。

 3人は、ディアマンテ号の破片の板につかまっている。

 ギルも無事のようだ。

 アレンは飛び込む前に、ディアマンテを優しくなでた。

 

 「ありがとな、今まで俺達を乗せてくれて。お前とは、ここでお別れだ。これからは天国で俺達のことを見守ってくれよ」

 

 そう言い残し、アレンは海に飛び込んだ。

 アレンが3人のいるところまで泳ぐと、まるでその姿を見届けたかのように、ディアマンテ号はゆっくりと海中に沈んでいった。

 

 「おしいな、綺麗な船だったのに」

 

 アクロスの呟きに、アレンは答えた。

 

 「あいつは自分を犠牲にして、俺達を助けたんだよ」

 

 「そうかもしれないわね」

 

 「なあ、ディアマンテは俺達の5人目の仲間、そう思わないか?」

 

 「ああ、そうだな」

 

 板につかまっているギルが言った。

 

 「嵐は止みましたけど、どこに行けばいいか、全くわからないですね」

 

 アレンはしばらく考えて、ギルに言った。

 

 「ギル、ディアマンテの船首はどっちへ向いていたか覚えてるか?」

 

 「えっと、確かあっちですね」

 

 ギルは海に手を入れ、腰の皮袋からコンパスを取り出した。

 

 「東の方向です」

 

 「よし、じゃ東へ泳ごうか」

 

 「え、そんな感じで決めちゃっていいの?」

 

 「サリヤ、言ったろ。あいつは俺達の仲間なんだ。きっと陸に向かっていたに違いないぜ」

 

 「ただ流されていただけのような気がするけど?」

 

 「あいつは嵐に耐えながら、俺達をここまで運んだんだ。あいつを信じろよ」

 

 アレンは泳ぎだした。仕方ないという感じで、サリヤ、アクロスも続いた。

 

 「あっ、ちょっと!アレンさん!この板引っ張ってもらえませんか!」

 

 「ギル、自分で泳げよ」

 

 「僕は泳げないんですって!」

 

 ギルは浮き輪代わりに板を両手で持って、バタ足でなんとかアレン達についていった。

 

 「皆待ってー!」

 

 

 

 「はあ、はあ、なんとか泳ぎきったな」

 

 「アレン、海が荒れたままだったら、間違いなく全員星になってたぞ」

 

 「そうだな、」

 

 アレン達は、波が打ち寄せる砂浜に身体を投げ出していた。

 

 「足が・・・僕はもう一歩も動けません」

 

 「一体どのくらいの時間泳いでいたのか・・・」

 

 「アクロス、考えるのはやめた方がいいぜ。よけい疲れるから」

 

 「アレン、ディアマンテが示した方向は正解だったな」

 

 「俺は最初から信じてたさ」

 

 砂浜は、寄せては返す波の音が規則正しく聞こえるばかりだ。

 じっと動かずにいると、寝てしまいそうになる。

 

 「よしっと、」

 

 アレンは掛け声と共に、上半身を起こした。

 

 「サリヤ、動けるか?」

 

 「大丈夫よ」

 

 「ギルは?」

 

 「もう少し休憩させてください・・・」

 

 「お前、途中からアクロスに引っ張ってもらってただろ、」

 

 「アレンさん、僕は僕なりに頑張って足で漕いでましたから!」

 

 「なんだ、元気そうじゃねえか。よし、出発しようか」

 

 「あ、ちょっと、待ってください」

 

 「なんだよ」

 

 「出発する前に、本を確認します」

  

 アレンは立ちあがったが、また砂浜に座った。

 

 「そうだな、もし無くしてたら大変だぜ」

 

 ギルは、荷物の中から古文書を探した。

 

 「水と光、そして・・・あった、地と。全部ありました、びしょ濡れですけど」

 

 「まあ、それは仕方ない」

 

 「破かないように、慎重に乾かさないとなー、」

 

 アクロスは立ち上がり、遠くの方を見ていた。

 

 「アレン、どっちに向かうんだ?」

 

 「とりあえず、あそこの小高い所にいってみようぜ。何か見えるかも知れないしな」

 

 「わかった、そうしよう」

 

 それぞれ荷物を背負った。

 

 「ギル、行くぞ」

 

 返事がない。アレンが振り向くと、ギルは背中を丸めて本を見ていた。

 

 「ギル、お前まだ本を見てるのか?」

 

 「ああー!」

 

 「なんだよ、急にでけえ声だして、」

 

 「アレンさん、これ!」

 

 ギルは手に持った古文書を見ながら叫んでいた。

 

 「どうした?」

 

 ギルの周りに集まった。

 

 ギルが口を開けて指さす水の古文書には、文字と絵が浮き出ていた。

 アクロスは言った。

 

 「やっぱり時間じゃないのか?」

 

 「わかりました!水だ、海水ですよ!」

 

 「なるほど、そういうことね!水の古文書だから、水に濡れると浮き出るんだ」

 

 「そうです、サリヤさん!光の古文書が浮き出ていたのは、ソリッドで古文書のことを聞き回っているときに、太陽の光にあたっていたからですよ」

 

 ギルは、濡れている水の古文書を胸に抱きしめた。

 

 「くそー、こんな単純な事だったのか!」

 

 アレンは落ち着いて言った。

 

 「ってことは、地の古文書は土に埋めたら浮き出る感じか」

 

 「やってみるか?」

 

 「いや、待って下さいアクロスさん。今は本が濡れちゃってますので、無理すると紙が破れる危険性があります」

 

 「そうだな、」

 

 ギルは、丁寧に古文書3冊を荷物に入れた。

 

 「嬉しそうだな」

 

 「アレンさん、めちゃくちゃ嬉しいです。やっと古文書の謎が解けましたからね」

 

 「よかったわね、ギル」

 

 「あー、これでスッキリしたー」

 

 「でも、砂漠の謎は、謎のままだぞ、ギル」

 

 「それ言わないでくださいよ、」

 

 温かい日差しと乾いた南風で、アレン達の服と髪はすっかり乾いた。

 

 

 「よし、じゃ行こうか」

 

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