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激流の中で  作者: 清水京太郎
第7章 覇王サラン
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60 開かれた部屋

 「初めまして、私が砂漠のガイドを務めますルギットと申します」

 

 その男は、丁寧にアレン達に挨拶した。

 

 「よろしく頼むぜ」

 

 「村を救ってくださった英雄御一行を案内出来るとは、光栄に存じます」

 

 「俺達はすぐにでもソリッドに行きたいんだ。頼めるか?」

 

 「かしこまりました。それでは、只今から港町ソリッドへ向け出発しましょう」

 

 オーベルが家から出てきた。

 

 「アレン、行くのかい」

 

 「ああ、世話になったな、ありがとう」

 

 アレンとオーベルは、しっかり握手した。

 

 「あんた達は村を救った英雄、いつでも歓迎するよ」

 

 アレンは、にっこり微笑んだ。

 

 「じゃ、」

 

 「アレン、あんた達の旅の無事を祈ってるよ」

 

 アレンはオーベルに手を振った。

 

 「では、行きますね」

 

 アレン達は、ルギットの後をついて歩いた。

 砂漠が見えてきた。

 砂漠との境界線に立ったルギットは、後ろを向きアレン達に言った。

 

 「砂漠を越えるにあたりまして、いくつか注意事項がございます」

 

 「なんだ?」

 

 「私は、ここから東の方へ少し移動します。移動が終われば合図しますので、お一人が私の左横に5メートルくらい距離を置いて並んでください。そして、その方の左横にもうお一人と、順に距離を置いてお一人ずつ横並びになります」

 

 ギルが、ルギットに言った。

 

 「つまりルギットさんを起点に、左に5メートルの間隔を置いて一人ずつ横に並ぶということですね」

 

 「はい、そうです」

 

 「要するに、固まって移動するなってことだよな」

 

 「アレン様、その通りです。これは砂漠の魔物対策として、会話しないというルールを守るために、お一人様ずつバラバラになっていただきます」

 

 アクロスが、怪訝そうな顔でルギットに言った。

 

 「もう砂漠に魔物はいなくなったんじゃないのか?」

 

 「アクロス様の言う通りです。ですが、念のためです。ガイドは、何よりお客様の安全を補償するのが仕事ですから」

 

 「そうか、」

 

 アクロスは納得出来なかったが、それが仕事と言われると言い返せない。

 

 「わかった。じゃ、そうしよう。他に何かあるのか」

 

 「これを履いてください。これは歩く振動を砂に伝え難くするもので、ラケットと言います」

 

 それは靴に装着する木製の輪っかのようなものだった。

 

 「なるほど、歩くときの音や振動をこれで分散させるのか」

 

 「はい。ギル様、その通りです」

 

 「ルギッドさんって、あたし達の名前知ってる?」

 

 「もちろんでございます、サリヤ様。皆様は、テンプ村の最重要人物ですから」

 

 「そうなんだ、」

 

 「今後皆様が村で買い物や宿屋に宿泊されても、お金をいただくことはありません。全て無料でございます」

 

 「まじか、」

 

 「じゃ、このガイド料金も無料ですか?」

 

 「はい、無料でございます」

 

 「いいのか?」

 

 「これは村の長からの厳命です。違反すれば、村から追い出されます」

 

 そう言って、ルギットは笑った。

 アレン達は、靴にラケットを装着した。

 

 「これで、いいのかな」

 

 「はい。それを使えば、砂漠も歩きやすくなりますよ」

 

 「あ、本当だ。砂に足を取られることが全くないですね、これはいい」

 

 ギルは嬉しそうに砂の上を歩き回っていた。

 

 「他に何かあるのか?」

 

 「進むときは、右横を見ながら全員同じ速度で並んで歩きます。砂の山とかで遅れる人があれば、揃うまで待ちます。あとは叫んだり横の方と喋ったりせず、砂漠を渡りきるまでは、ひたすら黙って歩いて下さいね」

 

 「わかった」

 

 「順調にいけば、半日程でソリッド側へ到着します」

 

 「早いな、」

 

 「あたし達、砂漠で迷ってたってことね」

 

 「それでは、私は移動します。合図したら、お一人ずつ横並びでお願いします」

 

 ルギットは東へ歩きだした。

 

 

 「結構離れるなー、」

 

 アレンは手で顔に影を作りながらつぶやいた。小さく見えているルギットが手を振った。

 

 「お、合図だ。よし、じゃ行くか」

 

 「待って下さいアレンさん、」

 

 「どした、ギル」

 

 「ルギットさんの横には僕が行きます」

 

 「えっ?おっ、おう」

 

 ギルはアレンを制して、ルギットのいる方へ歩いていった。

 

 「なんだよ、ギルの奴」

 

 アクロスがアレンの肩を叩き、小声で言った。

 

 「砂漠の謎を解くつもりなんだよ、」

 

 「好きだね、そういうの」

 

 アレンは苦笑した。

 ルギットの横にギル、そしてアレン、サリヤ、アクロスの順に並んだ。ルギットは全員並んだのを確認して、砂漠へ足を踏み入れた。

 

 「それでは、出発します」

 

 

 ギルは、ルギットをガン見していた。ルギットは、ギルの突き刺さるような痛い視線に苦笑していた。

 

 (別に変なところは無いな・・・)

 

 上空は、いつしか厚い雲に覆われていた。ギルが後ろを見ると、砂しか見えなくなっていた。しかし、ルギットはコンパスを使うでもなく、迷うことなく前を見て砂漠を進んでいる。

 

 (一体どうやって方向がわかるんだ・・・)

 

 周りを見渡しても砂しかなく、目標になりそうなものは何も無い。

 ルギットはギルの方を見て、にっこり微笑んだ。

 

 (謎が解けないことに自信があるな。解けるものなら解いてみろって感じか・・・)

 

 ギルは、じわじわと敗北感を感じていた。

 

 ( くそー、わかんない!)

 

 

 やがて、ソリッドの森が見えてきた。

 

 (あー、ダメだ。森が見えたらもう迷うこともない・・・くそ、負けた・・・)

 

 アレン達は、ソリッド側に到着した。

 

 「すごーい、全然迷うことなく歩けるなんて!」

 

 「まさに感動ものだな」

 

 「さすがは砂漠のガイド、恐れ入ったぜ」

 

 「恐れ入ります。アレン様御一行に褒めていただいたことは、私の誇りです」

 

 そう言って、ルギットは頭を下げた。

 

 「いや、本当に凄いよ」

 

 「ありがとうございます」

 

 アレン達は、ラケットを外した。

 

 「じゃあ、俺達はこれで。ありがとな、助かったぜ」

 

 「アレン様の旅のご無事を祈っております」

 

 アレン達はルギットと別れ、ソリッドの町へ向け歩き出した。


 「ギル、砂漠の謎は解けたのか?」

 

 「アレンさん、・・・僕の負けです」

 

 アレンはギルの背中を叩いた。

 

 「ギル、負けることが明日の成長につながるんだぜ、フフ」

 

 「アレンさん、なんで嬉しそうなんですか」

 

 「気のせいだよ、」

 

 「・・・」

 

 アレン達は寄り道することもなく、真っすぐレゼルの屋敷を目指した。

 

 

 

 「いよいよだな、ギル」

 

 「ええ、ここに来るのに何度死にかけたことか」

 

 アレン達はレゼルの屋敷の前にいた。

 

 「ギル、まさか鍵が無いってことはないだろうな?」

 

 ギルはアクロスに鍵を見せた。

 

 「ご心配なく、ちゃんとあります」

 

 「じゃ、いくぜ」

 

 アレンは屋敷の中庭を通り、ノックもせずにドアを開けた。

 

 「じいさん、いるか?」

 

 「お前さんらか。ノックもせず人の家に勝手に入りおって、一体ど・・・」

 

 「この前の封印された部屋、開けさせてもらうぜ」

 

 「構わんが、金を・・・」

 

 ギルは銀貨5枚をレゼルの手に握らせ、不敵に笑った。

 

 「・・・」

 

 

 アレン達は屋敷の中を歩き、魔封印の部屋の前に立った。

 

 「ギル、俺が開けよう。鍵を渡してくれ」

 

 「わかりました」

 

 ギルはアレンに魔封印の鍵を渡した。

 アレンはゆっくり部屋のドアに近づいた。アレン達の後ろで、レゼルが恐々とアレン達の様子を見ている。

 

 「おっ、おい、お前ら本当に大丈夫なのか?」

 

 「しーっ、」

 

 3人に一斉にしーっをされ、レゼルは思わず口を閉じた。

 

 アレンは、鍵を鍵穴に差し込んだ。

 

 (よし、防御反応がない!あの鍵で間違いない!)

 

 ギルは、拳を握った。

 

 アレンは差し込んだ鍵を、ゆっくり回した。

 

 

 ガチャ

 

 

 その時、プシューっと空気が抜けたような音がした!

 

 「キャッ!」

 

 サリヤの声にアレンは思わず飛び退き、背中の剣に手をかけた!

 

 

 しかし、何も起こらない。

 

 「ごっ、ごめん。緊張してたからプシュって音に驚いたの、」

 

 アレンは剣を握った手を離した。

 

 「よし、扉を開けるぞ」

 

 「ちょっと待て、アレン」

 

 アクロスは後ろにいるレゼルに言った。

 

 「ここは危険だ。あんたは避難してくれ」

 

 「なっ、なにを言う!ここは、わしの屋敷だぞ!」

 

 「巻き込まれて死にたくないだろ?」

 

 ギルも後ろを向いた。

 

 「レゼルさん、もしかしたら魔物が出てくるかも知れませんよ」

 

 「ほっ、本当か!?」

 

 「もしかしたらです。でも、魔物が現れたら、僕達は戦うのに精一杯で、レゼルさんを守ることが出来ません。いいですか、それでも」

 

 「おっ、脅しよって・・・」

 

 レゼルはブツブツ言いながらも、その場を離れどこかにいった。

 アレンはそれを確認して、

 

 「よし、開けるぞ。お前ら、準備はいいな?」

 

 アレンの言葉に、それぞれ戦闘態勢を取った。武器を持つ手にチカラが入る。

 

 

 アレンは、ドアの取っ手に手をかけた。

 

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