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激流の中で  作者: 清水京太郎
第6章 炎の魔人
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58 砂の崩壊

 ミラルは、サリヤに向けて炎を吐き出した!

 

 ゴオオォォー!

 

 サリヤは思わず目を閉じた!

 しかし、炎がサリヤを蒸発させることはなかった。

 

 なんと、ギルが竜巻の魔法で、ミラルの炎を巻き上げていた!

 炎は竜巻の渦に巻かれ、火柱となって部屋の上部の壁を蒸発させた。

 

 今度はギルに顔を向け、ミラルは炎を吐き出した!

 ギルは横に飛び炎を避けたが、そこは度重なる振動で床が脆くなっていた。

 ギルの着地と同時に砂の床は崩れ、ギルはまるで蟻地獄に落ちるように、下に落ちる砂に引き込まれそうになった!

 

 「うわぁ!」

 

 落ちる寸前、草の束を片手で掴んだ。足元は床が完全に抜け、ギルは宙刷り状態になっている!

 

 「ギル!」

 

 アクロスは、草を掴んでいるギルの手が見えていた。

 ミラルはギルに顔を向けたまま、再び大きな口を開けた!

 

 「ダメだ!やめろー!」

 

 思わずアクロスは、顔を横にそらした。

 ミラルが炎を吐き出そうとした、その時!

 

 バキッ!

 

 

 次にアクロスが目を開けたとき、ミラルは消えていた。

 箱が置いてあった周囲は、細かい砂煙が舞い上がり空気が白く濁っていた。

 

 「消えた!?」

 

 アクロスは、宙吊りになっているギルに駆け寄り引き揚げた。

 

 「魔人がいない?」

 

 「突然消えたよ」

 

 「サリヤさんは!?」

 

 「倒れたままだ」

 

 ギルはサリヤの元へ走り、抱き起した。

 

 「サリヤさん、大丈夫ですか、」

 

 「あたし生きているの?」

 

 「ええ、生きてますよ」

 

 「あれ、魔人は」

 

 「理由はわからんが、突然消えた」

 

 「えっ、消えた?」

 

 「あれですよ」

 

 ギルは、箱があったところを指差した。徐々に見えてきたそこには、アレンがうつ伏せで倒れていた。

 

 「アレン!」

 

 アクロスは、アレンを起こした。

 

 「アレン、大丈夫か!」

 

 「もう少し優しく起こしてくれよ。全身痛えんだから」

 

 「すまん、」

 

 アレンの胸には、箱に入っていた鍵が張り付いていた。周りには、バラバラになった箱の破片が飛び散っている。

 

 「その胸の鍵、」

 

 「ああ、これが魔封印の鍵さ」

 

 サリヤとギルが、アレンとアクロスの元へやってきた。サリヤは、アレンを回復させた。

 アレンは胸に貼りついていた鍵を取り、ギルに渡した。

 

 「ギル、こいつで三冊目の古文書ゲットだな」

 

 「ええ、そうです」

 

 ギルは、アレンから受け取った鍵を高々と掲げた。

 

 「アレンさん、僕達は独眼の賢者の試練を見事に乗り越えたんですよ」

 

 「そうだな、」

 

 ギルは、満足そうな笑みを浮かべた。

 

 「アレン、箱に向かって飛び込んだのね」

 

 「ああ。壁にぶつかって、身体が痛くて上手く動けなかったけどな。あいつが炎を吐きまくっているのを後ろで見て、もう箱を壊すしかねえと思ったのさ」

 

 「しかし、よくアレンの動きが魔人に感知されなかったな」

 

 「アクロスさん、あの魔人が動きをキャッチ出来るのは魔人より前方だけで、後ろ側はむしろ安全だったんですよ」

 

 「そういうことか、」

 

 サリヤは、ギルが手に持っている鍵を見つめて言った。

 

 「これが魔封印の鍵なの?普通の部屋の鍵にしか見えないけど、」

 

 「独眼の賢者が、僕達を消そうとしてまで渡したくなかった鍵です。もしこの鍵じゃなかったら、僕が独眼の賢者の首を締めますよ」

 

 「しかし、箱を壊すことが魔人を倒す方法だったとは。今思えば、簡単な話だったんだな」

 

 「でも、あの魔人を見た人が、箱を壊すという発想は、おそらくでないですからね」

 

 「確かにな、」

 

 「魔人の後ろ側が安全だったのも、魔人に向かって飛び込んでくることを、賢者は想定していなかったからだと思います」

 

 「まあ、普通は飛び込まないよ」

 

 「アレンが異常で良かったわ」

 

 「サリヤ、誉めてるのか、バカにしてるのか、どっちなんだよ」

 

 サリヤは、アレンに腕をからませた。

 

 「何言ってるの。アレンの普通じゃない行動が、あたし達を救ったのよ」

 

 「全然嬉しくないんだけど、」

 

 「まあ、いいじゃないか。アレンに皆が救われたのは事実だ」

 

 「そうですよ。魔封印の鍵も手に入ったことですし」

 

 ギルは、鍵を腰の皮袋に入れた。

 

 「そうだな。まあ、よしとするか」

 

 アレン達は、皆で笑いあった。

 

 その時、

 

 グラ、グラ、グラ、

 

 また、部屋全体が揺れ始めた!

 

 「おっ、おい、どうした!」

 

 「新たな敵か!」

 

 「いや、何も感じないぞ」

 

 「アレンさん、もしかして、これは本物の地震じゃないでしょうか!」

 

 「なに!このタイミングでか!」

 

 バアーーン!ドーーン!

 

 大きな音を立てて、砂の床がどんどん抜けていく!

 

 「やばい!階段だ、階段へ急げ!」

 

 アレン達は、急いで階段があるところへ向かった。その時、ギルが走っていた床が、大きな音を立てて落下した!

 

 「うわぁー!」

 

 「ギル!」

 

 アレンが手を伸ばしたが、間に合わなかった。

 

 「ギーール!」

 

 ギルは、暗闇の底に消えた。

 

 「くそーっ!」

 

 アレンは、握り拳を思いっきり床に叩きつけた!

 その間も部屋は揺れ続け、徐々に揺れが大きくなってきた。砂の城全体が揺れている!

 

 「アレン!今は降りることが先だ!早く来い!」

 

 アレンは立ち上がり、3人は階段を降り始めた。

 アレンが後ろを見ると、天上が崩れ、大量の砂が下の闇へ吸い込まれていった。

 

 「ダメだ、崩れる方が早いぞ!」

 

 「くそーっ!」

 

 次の瞬間、周りの壁が一気に全て崩れ、アレン達は足場の階段を失い、暗い闇へ落下した。

 

 「うわぁー!」

 

 「キャーー!」

 

 ズシーーン

 

 全てが崩れ、静寂が訪れた。

 

 

 

 「ブファ、」

 

 アレンは、砂の中から顔を出した。

 

 「アレン!無事だったか!」

 

 近くにいたアクロスが駆け寄り、顔だけ出したアレンを引き上げた。

 

 「サリヤとギルは?」

 

 「まだ見つかっていない」

 

 アレンは全身砂だらけになっているのを構いもせず、目を閉じ気を探った。

 

 「アクロス、こっちだ!」

 

 アクロスは砂に足を取られながら、アレンの走る方についていった。

 

 「この辺りだ!」

 

 「よし、」

 

 アレンとアクロスは、手で砂をかき分けながら必死に掘った。

 白い頭が見えた!

 

 「見えたぞ!サリヤだ」

 

 サリヤは砂の中で淡い光に包まれていた。アクロスは両腕をグッと砂に突っ込み、サリヤを引き上げた。砂だらけのサリヤは、両腕がだらんとなり意識を失っているようだ。しかし、クレセント・カルマンは、しっかり握られている。

 アレンは、サリヤの胸に耳をあてた。

 

 「まだ生きてる!」

 

 「アレン、任せろ!」

  

 アクロスはサリヤの背骨に膝を当て、両手を持ってグっと後ろに引いた。

 

 「はぁ!」

 

 サリヤは目を開き、口を開けて呼吸した。

 

 「よし!これでサリヤは大丈夫だ!あとはギルか」

 

 アレンは再び目を閉じて、気を探った。

 

 「一体・・・何が・・・起きたの」

 

 横になっているサリヤは、はっきりしない意識の中で喋った。

 

 「静かにしろ。今アレンが、ギルの気を探っている」

 

 なかなか見つけることが出来ない。目を閉じたアレンの眉間に、焦りのシワが寄った。

 その時、

 

 ドカーーン!

 

 爆発が起き、砂が空中に噴き上げられた!爆発の穴から、ギルが出てきた。

 

 「ふうー、良かった。なんとか脱出できた」

 

 ギルの姿を見たアレンとアクロスは、安堵のため息をついた。

 

 「よかった。なんとか全員生きてたな」

 

 「あ、アレンさん!」

 

 「ギル、こっちだ」

 

 ギルは、砂の上をヨロヨロしながら走ってきた。

 

 「皆無事だったんですね」

 

 「ああ、サリヤはちょっと危なかったけどな」

 

 「多分、神器の杖に守られたんじゃないか?」

 

 「そういえば砂の中で光ってたぜ、サリヤ」

 

 「あたし、何も覚えてない」

 

 アレン達は砂まみれになりながらも、全員の無事を喜んだ。

 

 「ギルが落ちたときは、ダメかと思ったぜ」

 

 「部屋から落ちたときに、咄嗟に光の盾をだして自分を包み込んだんです」

 

 「なるほど、」

 

 「俺達は、たぶん先に落ちた砂がクッションになって助かったんだと思う」

 

 「しかし、ハデに潰れましたね」

 

 「ああ、まさか砂の城全体が崩れるとはな・・・」

 

 砂の城は跡かたもない。周囲には、大量の砂が一面に積み上がっていた。

 

 「まあ、でも結果オーライというか、魔封印の鍵も手に入ったことですし・・・」

 

 ギルは鍵を入れた腰の皮袋を取ろうとしたが、無かった。

 

 「あれ?」

 

 自分の腰を見たが、あるはずの皮袋が無い。

 

 「まさか!」

 

 「どうした、ギル」

 

 ギルは、自分が爆発の魔法で這い出た所に向け走った。

 

 「なにがあった?」

 

 「鍵を無くしたんじゃないか、」

 

 「なに!」

 

 アレン達も、ギルの後を追いかけた。

 ギルは自分が這い出た穴を見て、茫然と立っていた。

 

 「ギル、落ちたとき、どこかにいったのか?」

 

 「おそらく、そうかと・・・」

 

 「まあ、この砂の中にあるんだし、探すしかねえな」

 

 「アレンさん、無理です・・・こんな大量の砂の中から、皮の袋を見つけるなんて・・・」

 

 「ギル、諦めんなって。さあ、探すぞ」

 

 アレン達は、ギルが腰につけていた皮の袋を探し始めた。

 

 

 

 夕闇が訪れた。

 

 「暗くなってきたな」

 

 アクロスの言葉に、アレンは腰をトントンと叩きながら、

 

 「よし、今日はここまでにしようぜ」

 

 「どうする、アレン」

 

 「ここで野宿しよう」

 

 アレン達は、馬を繋げた辺りの木々がある所で、野宿することにした。

 

 「ちょっと近くに川がないか探してくる」

 

 「わりい、頼むわ」

 

 アクロスの言葉に、サリヤが反応した。

 

 「アクロス、あたしもいっしょに行くわ」

 

 「すまんな」

 

 サリヤは杖で灯りをつけ、アクロスの後を追った。

 

 

 

 パチパチと燃える炎が、ギルの元気のない顔を照らしていた。

 

 「ギル、そう落ち込むなって」


 「こんな大量の砂の中から見つけるなんて、出来るんでしょうか」

 

 「出来るかじゃない、やるんだよ」

 

 「・・・おそらく、凄い時間がかかると思いますけど・・・」

 

 アレンは、ギルの肩を叩いた。

 

 「ギル、それでもやるんだよ。俺達が命を賭けて、勝ち取ったもんだぜ。そう簡単に諦めんなよ」

 

 アレンの言葉に、ギルは辛い思いをして砂漠を乗り越えてきたことを思い出した。皆が協力し、命を賭けてここまで来た。

 

 「あの鍵は、みんなの鍵ですね」

 

 「そうさ、俺達の鍵だ」

 

 「頑張って探します!」

 

 

 「その調子だ。頑張ろうぜ、ギル」

 

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