57 炎の魔人
アレン達は一か所に集まった。
「ギル、何なんだよ、これは」
「攻撃してくる様子は今のところないが、何がしたいのかさっぱりわからんぞ」
「あの魔人が、宝箱の中にある鍵を守っているのは間違いないと思いますけど・・・」
「じゃ、なぜ攻撃してこないんだ?」
「僕達のことを、敵と理解していないのかもしれませんね」
「もしそうだったら、今が鍵を奪うチャンスなんじゃないか?」
「アクロスの言う通りだぜ」
アレンは、箱に向かった歩き出した。
「まだ奴の本当のチカラが分かってない、危険ですよ」
「心配すんなギル。箱を素早く開けて中の鍵を取っちまえば、いくら煙が出ようが関係ないぜ」
アレンはギルの警告も聞かず、箱の近くでまで行き、そこで立ち止まった。
箱はフタを閉じたままで変化はない。
(パッと開けて鍵を取れば、それで終わりじゃねえか、こんなの)
アレンが箱に手をかけようと近づいた時、突然箱のフタが開いた!
「うわぁ!」
アレンは驚き、後ずさりした勢いで転倒した。
先程と同じ様に、大量の煙が箱から放出され、魔人が出現した。
アレンは、皆がいる所へ戻ってきた。
「今度は勝手に開きやがった、マジ焦ったぜ」
巨大な魔人に、アレン達は見降ろされている。
「ナニヲサガシテイル」
また、同じ事を魔人は喋った。
「こいつ、それしか言う事ないのかよ」
ギルは、魔人に向けて言った。
「魔封印の鍵だ、お前が持っているんだろ?」
「・・・」
魔人は少し沈黙して、再び言った。
「ナニヲサガシテイル」
「あーもう、同じ事ばっかり言いやがって!イライラしてきたぜ!」
サリヤは、アレンの腕を引っ張った。
「ちょっとアレン、落ち着きなさいよ!ギルが今一生懸命考えてるんだから」
ギルは、魔人の顔を直視していた。
(なにか、あるはずだ。きっと、前に進む何かが・・・)
アレン達が沈黙していると、魔人は煙になって箱に戻った。
パタンと箱のフタが閉まった。
「そうか、」
ギルは反転し、後ろのアレン達に向けて言った。
「今の動きで、わかったことがあります」
「何かつかんだのか?」
「最初はアレンさんが箱を手で開けましたが、二度目は自動で開きました」
「その違いはなんだ」
「僕の推察では、二度目の動きが独眼の賢者が想定した動きだと思います」
「あのデカイのは、クソ賢者の仕業か!」
「アレンさん、賢者以外でこんなことが出来る者はいませんよ」
「くそっ!俺達からすりゃ迷惑でしかないぜ」
「ギル、なぜ二度目の動きが想定された動きなんだ?」
「アクロスさん、誰も近づけないようにするためには、箱に接近したときに魔人が出ないといけません。そうでないと、箱の中の鍵が見えてしまうし、魔人の出現が遅いとその間に奪われてしまう」
「じゃ、最初にアレンが箱の中を見たのは、賢者の想定外だったのね」
「そうです。何かの理由で、賢者の仕掛けが上手く動かなかったんじゃないでしょうか」
アレンは近くの草の葉を引きちぎり、口にくわえた。
「んじゃ、もう箱に近づけないってことか?」
「ですね、」
ギルは、ため息をついた。
「ってことは、俺らのいつものパターンじゃねえか」
「いつものパターンって、何よアレン」
アレンは、プっと葉を口から吹き飛ばした。
「倒すんだよ、あのデカイのを」
ギルは、難しい顔をしていた。
「ん、どうしたギル、俺が信用出来ないってか?」
「いえ、そうじゃないですが・・・」
「じゃなんだ、」
「なにか引っかかるんですよね、あの魔人・・・」
アレンは、草の上に座った。
「よし、ここはじっくりギルの話しを聞こうじゃないか。お前らも座れよ」
サリヤ、ギル、そしてアクロスも、手に持っている武器を置いて座った。
「僕の勘ですが、あの魔人は実態が無いような気がします」
「実態が無い?」
「ええ、そもそも煙から現れる時点で、普通じゃないですし」
アレン達は、その言葉に沈黙した。
「ま、クソ賢者のやることは俺達の理解を超えてるってことだよな」
「独眼の賢者は、きっと僕達の戦力や戦術を想定して、この仕掛けを作ったんじゃないでしょうか」
「それはつまり、俺達の戦い方は賢者に読まれてる、ってことか」
「アクロスさん、あくまで僕の想像ですよ」
「けど当たってるような気がするな」
アクロスは、小さくため息をついた。
「気になるのが、魔人がどんな攻撃をしてくるかですが、」
「考えたくもないぜ」
「実態が無いとすれば、攻撃は物理ではなく魔法だと思います。その魔法も、どの程度の威力なのか全然わかりません」
「未知数ってやつか」
「あと、これは淡い期待なのですが、話せばわかってもらえるかも知れませんよ」
アレンは、呆れた顔になった。
「ギル、奴は同じ事しか言わないポンコツ野郎だぜ。話したって、きっと俺達が何言ってるかさえ理解出来ないさ」
「多分、それは違うと思いますよ」
「違わないさ」
「試してみますか、」
「何をする気だ?」
「皆さんは、そこにいてください」
そう言ってギルは立ち上がり、箱に向かって歩き出した。
ギルが箱に近づくと、フタが自動的に開き、煙の中から魔人が現れた。
「ナニヲサガシテイル」
ギルは、その場で魔人を見上げ言った。
「お前は誰だ」
「ワガナハミラル」
「おお!会話が成立した!」
「どういうことだ、言葉が理解出来ないんじゃないのか?」
魔人ミラルは、また同じ言葉を口にした。
「ナニヲサガシテイル」
ギルは答えた。
「魔封印の鍵」
「ソレハナイ」
「答えたわ!」
「あいつ嘘つきやがったぜ!」
「ナニヲサガシテイル」
ギルは腕を組み少し考えて、こう言った。
「古文書」
「コモンジョ・・・」
「古文書って言葉繰り返したぞ!」
アクロスは、興奮して立ち上がった。
「コモンジョ・・・コモンジョ・・・・・・」
・・・グラ、グラ、
突如、最上の部屋全体が揺れ始めた!
「うわぁ」
「おい!マジか!」
「アレン!やつの闘気が!」
「ギル、離れろ!そいつの闘気が上がってきやがった!」
ギルは、よろけながら叫んだ。
「皆さん、散らばってください!かたまっていると、魔人に狙い打ちされます!」
アレン達は、距離を置いて部屋の隅に散らばった。
グラ、グラ、グラ!
部屋の振動と共に、ミラルの闘気はどんどん上昇した!
「こいつ、とんでもない闘気だ!」
「話せば理解し合えるってのは、幻想だったな」
ピタ、
振動が止んだ。
「アレン、これは大丈夫になったの?」
「違うな。奴は自分の闘気を高めたままだ。きっと何かしてくるぜ」
アレンは、背中の剣を抜いた。その動きに合わせて、ミラルはアレンの方へ顔を向けた。
「これで終わりだ、このペテン師野郎!」
アレンは、ミラルに向け飛び出した!ミラルの口が大きく開いた!しかし、アレンの凄まじい跳躍の速さは、ミラルの顔面まで一瞬で到達していた!
アレンは剣を振り下ろした!しかし、あろうことか剣は空を斬り、アレンはミラルの顔を通り抜けて、そのまま反対側の壁に激突した!
「ぐはぁ、」
アレンは背中から壁にぶつかった。自分の速さが逆にあだとなり、激しい勢いで壁に衝突し、そのまま落下してうつ伏せで倒れた。
アレンの様子は、ミラルが邪魔でサリヤ達には見えていない。
「アレンが魔人をすり抜けたぞ!」
「やはり実態が無い!」
ミラルの口から炎が直線状に吐き出された!炎はアレンが立っていた場所を一瞬で蒸発させ、砂の床には大きな穴が空いた。
それを見たギルは、目を見開いた!
(なっ、なんて熱量だ!床の砂が一瞬で蒸発した!)
「壁にぶつかった音がしたが、あいつ大丈夫か!」
サリヤはアレンを回復させようとしたが、魔法が行使出来ない。
「ダメ、なにかに邪魔されて回復が出来ない!」
(なんだって!まさか、アンチマジックを!)
ギルはミラルに向けて、威力を抑えて爆発の魔法をかけた!
ドカーン!
ミラルは霧のように吹き飛んだが、すぐに元に戻った。
(魔法は使える・・・まっ、まさか、回復魔法だけを無効に・・・独眼の賢者め、そこまでして僕達を試すのか!)
「これはどうだ!」
アクロスは、持ち上げたアッシュ・ノワールを振り下ろし、光の鎌を放った!キーンという音を残して、光の鎌はミラルを通り抜けた。
ミラルはアクロスに顔を向け、大きく口を開けた!
「アクロスさん!逃げてください!」
ゴオオォォー!
アクロスは横へ飛び込みながら、間一髪で炎をかわした!ミラルの炎が、アクロスが立っていた場所に穴を開けた。
煙が上がっている黒い穴を見て、アクロスは恐怖を感じた。
「まともにくらったら、跡形もなく蒸発するな」
「信じられない熱量ですよ、これは」
「くそっ、俺達を消すつもりか!」
「ギル!あたし、どうしたらいいの!」
「サリヤさん、絶対動かないでください!動かなければ、きっと大丈夫です」
「・・・ギル、もしかして奴は、」
「そうです。動くものを感知して、そこを狙ってきています」
「なるほど、視界があるわけじゃないのか」
(あの一つだけの大きな黒い目、あれが動きを感知するセンサーだ)
そのとき、ミラルは更に闘気を上げた!
ゴゴゴゴー!
部屋全体が、再びグラグラと大きく振動した!
「キャー、」
サリヤはバランスを崩し転んだ。手からクレセント・カルマンが落ちた。
ミラルの顔がサリヤに向けられた!
「サリヤさん!早く逃げて!」
しかし、サリヤは足を痛めて動けない!
ミラルの口が大きく開いた!
「サリヤさーーーん!」




