55 砂の城
「これが砂の城か?」
「こんな形が城と言えるのか?」
「初めて見ますね、これは」
アレン達は、オーベルに教えられた道を馬でやってきた。
見えてきた建造物はかなり巨大であり、そしてこれまで見たことが無い形をしている。
アレン達は馬を降り、砂の城の周りを歩いて一周した。
「三角の面は全部で4つ、これは四角錐の形ですね」
「入り口は、ここか」
入り口というより、誰かに破壊されたような歪な形に穴が空いていた。
アレン達は、中に入った。暗闇の中で、砂に混じった小石を踏む音が響いた。
サリヤとギルは、杖を光らせた。
砂を固めて建てられているその建造物は、オーベルが言った通り、中は空洞になっていた。壁に沿って、階段が斜めに上まで続いている。
「おい、これって・・・」
「インドラの塔と同じですね」
「また、あの悪夢の再来なの。もうたくさんだわ」
3人は、揃って青ざめた顔になった。
「お前達がガルーダを倒した、あのインドラの塔か」
「ああ、そうだよ、アクロス。思い出しただけで、体力が無くなりそうだ」
「それは、大袈裟だぞ」
「大袈裟なもんか。俺はあそこで一度死んでるんだからな」
「はっ?」
「アレンさん、それってどういうことですか?」
アレンは、当時の状況を説明し始めた。
「ギル、俺がガルーダに壁に叩きつけられたことを覚えてるか?」
「ええ、まさかそれで死んだと?」
「いや、あの後俺は立ち上がった。けど、全身の骨がバラバラにされたような感覚で、立ってるのが自分でも不思議なくらいだったよ」
(アレンさんが立ち上がったのを見てない・・・ということは、僕が気を失った後か・・・)
「その時、ガルーダがサリヤとギルのいる方へ向かっているのが見えた」
(やはり、僕の魔法では・・・)
ギルは、唇を噛んだ。
「剣を振るどころか歩くことさえ出来ない俺は、炎の精霊を呼び出し、そいつに自分達のボスを召喚するように命令した」
「アレン、そんなことよく出来たわね。精霊は人に友好的じゃないと聞いてるけど」
「俺もタダで奴らがいう事を聞くなんて、思ってなかったぜ。だから、交換条件を出したんだよ」
「交換条件?」
「ああ、自分の命を引き換えにした」
「えーっ?」
「それで、上位精霊は召喚されたんですか?」
「何が出たかわかんないけど、ガルーダはビビってたみたいだぜ」
「あんた死にかけて夢でもみたんじゃない?」
「夢?」
「上位精霊の召喚なんて、そんな簡単に出来るわけないよ」
「そうか?確かに意識は朦朧としてたけど、」
「きっと、気を失う一歩手前で夢を見たんだって。そもそも死んでたら生き返るはずないし」
「まあ、それはそうか・・・」
アレンは、次第に自分の記憶に自信が無くなってきた。
「昔話はその辺で終わったらどうだ。そろそろ、この階段登らないか」
アクロスは、上を見上げて言った。
「そうだな、じゃ行くか」
アレン達は、階段を登り始めた。
「アレンさん、これって形が円筒から四角錐になっただけで、中の構造はインドラの塔と全く同じですよ」
ギルの声が、薄闇の内部で響いた。
「砂で出来てるってのも同じだしな」
「もしかして、またガルーダのような神獣がいたりしますかね」
「やめろよ、ギル。考えただけで憂鬱になるぜ」
「同感です」
アレンとギルは、小さくため息が出た。
サリヤは、急に立ち止まった。そして、上まで続く階段を見て、
「また、この果てし無い階段を上まで登るわけ?あたしパスしてもいいかな?」
「おいサリヤ、もうギブアップ宣言か?」
「延々と続く階段を見てるだけで、足が痛くなってきたし」
「サリヤさん、今回は大丈夫っぽいですよ。ほら、途中に小部屋が結構たくさんあります」
上部まで杖の光が届いていないが、確かに階段の途中にある小部屋の数は塔よりもありそうだ。
「足が疲れたら言ってくださいね」
「ギル。それって、あたしに階段を登れってことだよね」
「サリヤさんがいるからこそ、このパーティーは成立してるんです。サリヤさん抜きでは考えられませんから」
「上手いこといって、結局階段を登らせるんだから」
「そんなことないですよ」
「今疲れたって言ったら、あたしのこと殴る?」
「もちろん、グーで殴るさ」
「アレンに聞いてないもーん、」
「サリヤ、お前が動くと明かりが揺れるから酔いそうになるんだよ。手は動かすな!」
アレン達は、なんだかんだ言いながら階段を登っていった。
サリヤはアレンの背中に向けて、思いっきり舌を出した。
(なんか不愉快な感じがするのは、気のせいか・・・)
ギルは、階段を登りながら考えていた。
(アレンさんの話しが本当だったら、アレンさんは一度死んでることになる
ガルーダがアレンさんの召喚を見て驚いていたのなら、上位精霊が召喚された可能性が高い
炎の上位精霊といえばイフリートだ
確かに何の代償もなしに、イフリートを召喚出来たとは考え難い
やはり、アレンさんの命が使われたのか?
アレンさんの死からの生還、そしてガルーダに止めを刺した重力魔法、
僕達が倒れているときに、誰かがインドラの塔に来たはずだ・・・
一体誰なんだ・・・)
階段を登り始めて、最初の小部屋が現れた。
「どうする、休憩するか?」
サリヤは、即座に手を挙げた。
アレンは、「はいはい、わかってましたよー」というセリフを、心の中で言って小部屋に入った。
小部屋の中央には、蓋が開いた木箱が一つある。
「これは宝箱のようですが、既に誰かに盗まれてますね」
「村長は古い建物って言ってたから、盗賊も結構中へ入ってるんじゃないか?」
「あ、そういえば、化物が出るって話しですが、」
「どうした、ギル」
「この建物の一番上にいるとしたら、魔物の類ではないですね」
「それは、食料が無いからか?」
「その通りです、アレンさん。魔物と言えど何か食べなきゃ死んでしまう。この建物の上に、食料が常時あるとは考えられませんからね」
「それじゃ、上には何がいるというんだ?」
ギルは、聞いてきたアクロスの顔を見た。
「神か悪魔か、もしくは、」
「幽霊かも」
アレンは、パン!とサリヤの肩を叩いた。
「キャ!」
サリヤは、思わず飛び上がった。
「よし、階段登り再開だ」
「ちょっとアレン、脅かさないでよ!」
「固くなっているサリヤの緊張をほぐしたんだよ」
「あんた、テキトーな事言わせたら天才ね」
「サリヤ、俺は持ってる男さ」
「使うところ、間違ってるし」
確かにインドラの塔よりも、階段の途中にある小部屋は多かった。
どの部屋も窓もない小さな部屋で、塔と同じように階段の途中休憩所といった感じだ。
小部屋には、必ず中央に木の箱が一つ置いてあったが、どの箱も開けられ、中には何も入ってない。
アレン達は、かなり高くまで登ってきた。下を見ると、もう外から漏れる入り口明かりは、小さな光の点にしか見えない。
いつしか、アレンは無口になっていた。
「アレン、ほら下見てよ。もう入り口が、あんなに小さくなってるよ、ほらほら」
アレンは、黙っていた。
「あ、入り口で誰か手を振ってる!アレンちょっと見てよ、ほらー」
アレンは、小刻みに震えながらも黙っていた。
「アレン、なに黙ってる。どうして喋らないんだ?」
アクロスは、心配になってアレンに尋ねたが、それでもアレンは何も言わなかった。
「あいつ、何黙ってんだ?」
ギルは後ろを向き、アクロスに小声で言った。
「アレンさん、高所恐怖症なんですよ」
「なに!あいつに弱点があったのか、」
アクロスは、急に意地悪な顔になった。
「アレンなにか黙っているようだが、一体どうしたのかな?そうだ、お前が見たがってた投げる武器、ほら、これだよこれ。ちょっと後ろを向いてみろよ。ほら、どうしたアレン、ほらほら」
(サリヤとアクロス、マジあとで殴る・・・)




