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激流の中で  作者: 清水京太郎
第6章 炎の魔人
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55 砂の城

 「これが砂の城か?」

 

 「こんな形が城と言えるのか?」

 

 「初めて見ますね、これは」

 

 アレン達は、オーベルに教えられた道を馬でやってきた。

 見えてきた建造物はかなり巨大であり、そしてこれまで見たことが無い形をしている。

 アレン達は馬を降り、砂の城の周りを歩いて一周した。

 

 「三角の面は全部で4つ、これは四角錐の形ですね」

 

 「入り口は、ここか」

 

 入り口というより、誰かに破壊されたような歪な形に穴が空いていた。

 アレン達は、中に入った。暗闇の中で、砂に混じった小石を踏む音が響いた。

 サリヤとギルは、杖を光らせた。

 砂を固めて建てられているその建造物は、オーベルが言った通り、中は空洞になっていた。壁に沿って、階段が斜めに上まで続いている。

 

 「おい、これって・・・」

 

 「インドラの塔と同じですね」

 

 「また、あの悪夢の再来なの。もうたくさんだわ」

 

 3人は、揃って青ざめた顔になった。

 

 「お前達がガルーダを倒した、あのインドラの塔か」

 

 「ああ、そうだよ、アクロス。思い出しただけで、体力が無くなりそうだ」

 

 「それは、大袈裟だぞ」

 

 「大袈裟なもんか。俺はあそこで一度死んでるんだからな」

 

 「はっ?」

 

 「アレンさん、それってどういうことですか?」

 

 アレンは、当時の状況を説明し始めた。

 

 「ギル、俺がガルーダに壁に叩きつけられたことを覚えてるか?」

 

 「ええ、まさかそれで死んだと?」

 

 「いや、あの後俺は立ち上がった。けど、全身の骨がバラバラにされたような感覚で、立ってるのが自分でも不思議なくらいだったよ」

 

 (アレンさんが立ち上がったのを見てない・・・ということは、僕が気を失った後か・・・)

 

 「その時、ガルーダがサリヤとギルのいる方へ向かっているのが見えた」

 

 (やはり、僕の魔法では・・・)

 

 ギルは、唇を噛んだ。

 

 「剣を振るどころか歩くことさえ出来ない俺は、炎の精霊を呼び出し、そいつに自分達のボスを召喚するように命令した」

 

 「アレン、そんなことよく出来たわね。精霊は人に友好的じゃないと聞いてるけど」

 

 「俺もタダで奴らがいう事を聞くなんて、思ってなかったぜ。だから、交換条件を出したんだよ」

 

 「交換条件?」

 

 「ああ、自分の命を引き換えにした」

 

 「えーっ?」

 

 「それで、上位精霊は召喚されたんですか?」

 

 「何が出たかわかんないけど、ガルーダはビビってたみたいだぜ」

 

 「あんた死にかけて夢でもみたんじゃない?」

 

 「夢?」

 

 「上位精霊の召喚なんて、そんな簡単に出来るわけないよ」

 

 「そうか?確かに意識は朦朧としてたけど、」

 

 「きっと、気を失う一歩手前で夢を見たんだって。そもそも死んでたら生き返るはずないし」

 

 「まあ、それはそうか・・・」

 

 アレンは、次第に自分の記憶に自信が無くなってきた。

 

 「昔話はその辺で終わったらどうだ。そろそろ、この階段登らないか」

 

 アクロスは、上を見上げて言った。

 

 「そうだな、じゃ行くか」

 

 アレン達は、階段を登り始めた。

 

 

 「アレンさん、これって形が円筒から四角錐になっただけで、中の構造はインドラの塔と全く同じですよ」

 

 ギルの声が、薄闇の内部で響いた。

 

 「砂で出来てるってのも同じだしな」

 

 「もしかして、またガルーダのような神獣がいたりしますかね」

 

 「やめろよ、ギル。考えただけで憂鬱になるぜ」

 

 「同感です」

 

 アレンとギルは、小さくため息が出た。

 サリヤは、急に立ち止まった。そして、上まで続く階段を見て、

 

 「また、この果てし無い階段を上まで登るわけ?あたしパスしてもいいかな?」

 

 「おいサリヤ、もうギブアップ宣言か?」

 

 「延々と続く階段を見てるだけで、足が痛くなってきたし」

 

 「サリヤさん、今回は大丈夫っぽいですよ。ほら、途中に小部屋が結構たくさんあります」

 

 上部まで杖の光が届いていないが、確かに階段の途中にある小部屋の数は塔よりもありそうだ。

 

 「足が疲れたら言ってくださいね」

 

 「ギル。それって、あたしに階段を登れってことだよね」

 

 「サリヤさんがいるからこそ、このパーティーは成立してるんです。サリヤさん抜きでは考えられませんから」

 

 「上手いこといって、結局階段を登らせるんだから」

 

 「そんなことないですよ」

 

 「今疲れたって言ったら、あたしのこと殴る?」

 

 「もちろん、グーで殴るさ」

 

 「アレンに聞いてないもーん、」

 

 「サリヤ、お前が動くと明かりが揺れるから酔いそうになるんだよ。手は動かすな!」

 

 アレン達は、なんだかんだ言いながら階段を登っていった。

 サリヤはアレンの背中に向けて、思いっきり舌を出した。

 

 (なんか不愉快な感じがするのは、気のせいか・・・)

 

 

 ギルは、階段を登りながら考えていた。

 

 (アレンさんの話しが本当だったら、アレンさんは一度死んでることになる

 

  ガルーダがアレンさんの召喚を見て驚いていたのなら、上位精霊が召喚された可能性が高い

  

  炎の上位精霊といえばイフリートだ

  

  確かに何の代償もなしに、イフリートを召喚出来たとは考え難い

  

  やはり、アレンさんの命が使われたのか?

  

  アレンさんの死からの生還、そしてガルーダに止めを刺した重力魔法、

  

  僕達が倒れているときに、誰かがインドラの塔に来たはずだ・・・

  


  一体誰なんだ・・・)

  


 階段を登り始めて、最初の小部屋が現れた。

  

 「どうする、休憩するか?」

  

 サリヤは、即座に手を挙げた。

 アレンは、「はいはい、わかってましたよー」というセリフを、心の中で言って小部屋に入った。

 小部屋の中央には、蓋が開いた木箱が一つある。

 

 「これは宝箱のようですが、既に誰かに盗まれてますね」

 

 「村長は古い建物って言ってたから、盗賊も結構中へ入ってるんじゃないか?」

 

 「あ、そういえば、化物が出るって話しですが、」

 

 「どうした、ギル」

  

 「この建物の一番上にいるとしたら、魔物の類ではないですね」

 

 「それは、食料が無いからか?」

 

 「その通りです、アレンさん。魔物と言えど何か食べなきゃ死んでしまう。この建物の上に、食料が常時あるとは考えられませんからね」

 

 「それじゃ、上には何がいるというんだ?」

 

 ギルは、聞いてきたアクロスの顔を見た。

 

 「神か悪魔か、もしくは、」

 

 「幽霊かも」

 


 アレンは、パン!とサリヤの肩を叩いた。

 

 「キャ!」

 

 サリヤは、思わず飛び上がった。

 

 「よし、階段登り再開だ」

 

 「ちょっとアレン、脅かさないでよ!」

 

 「固くなっているサリヤの緊張をほぐしたんだよ」

 

 「あんた、テキトーな事言わせたら天才ね」

 

 「サリヤ、俺は持ってる男さ」

 

 「使うところ、間違ってるし」

 

 

 確かにインドラの塔よりも、階段の途中にある小部屋は多かった。

 どの部屋も窓もない小さな部屋で、塔と同じように階段の途中休憩所といった感じだ。

 小部屋には、必ず中央に木の箱が一つ置いてあったが、どの箱も開けられ、中には何も入ってない。

 

 アレン達は、かなり高くまで登ってきた。下を見ると、もう外から漏れる入り口明かりは、小さな光の点にしか見えない。

 いつしか、アレンは無口になっていた。

 

 「アレン、ほら下見てよ。もう入り口が、あんなに小さくなってるよ、ほらほら」

 

 アレンは、黙っていた。

 

 「あ、入り口で誰か手を振ってる!アレンちょっと見てよ、ほらー」

 

 アレンは、小刻みに震えながらも黙っていた。

 

 「アレン、なに黙ってる。どうして喋らないんだ?」

 

 アクロスは、心配になってアレンに尋ねたが、それでもアレンは何も言わなかった。

 

 「あいつ、何黙ってんだ?」

 

 ギルは後ろを向き、アクロスに小声で言った。

 

 「アレンさん、高所恐怖症なんですよ」

 

 「なに!あいつに弱点があったのか、」

 

 アクロスは、急に意地悪な顔になった。

 

 「アレンなにか黙っているようだが、一体どうしたのかな?そうだ、お前が見たがってた投げる武器、ほら、これだよこれ。ちょっと後ろを向いてみろよ。ほら、どうしたアレン、ほらほら」

 


 (サリヤとアクロス、マジあとで殴る・・・)


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