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激流の中で  作者: 清水京太郎
第6章 炎の魔人
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53 砂上の舞

 「サリヤ、悪かった。俺達はお前に従うぜ」

 

 「じゃ、決まりね」

 

 アレン達は、サリヤが指さした方向に進んだ。

 サリヤは、手にヴェールドゥテールの肉片を持っている。

 

 「サリヤさん、それは虫の餌ですか?」

 

 「そうよ。あの小さな虫が、私達をテンプ村へ導くの」

 

 「やっぱり、砂漠の謎を解いたんですね!」

 

 「解いてない。言ったでしょ、あたしの勘だって」

 

 「えっ、」

 

 「ギル、あたしは虫に賭けたのよ」

 

 サリヤは少し時間が経つと、肉片を小さくちぎり砂の上に置いて目を近づけた。

 すると、上下から虫が現れ、肉片に向かって真っすぐ進んだ。

 

 「進んでいる方向は、あってるわね」

 

 

 

 どれくらい歩いただろうか。いつしか砂の起伏が無くなり、平坦になっていた。

 空は曇ったままだ。

 

 「もう、そろそろ着いてもいい頃だと思うが、」

 

 「まだ何も見えませんね」

 

 「お前ら、サリヤを疑っているわけじゃないだろうな」

 

 「信じたいが、そろそろ水も尽きる頃だぞ」

 

 「暗くなってきたので、もう夕方じゃないでしょうか」

 

 サリヤは、肉片に進む虫を見て微笑んでいた。

 

 「最後までこのまま行こうぜ」

 

 その時、足元の砂が揺れ出した。

 

 「おい、まだ魔物がいるのか」

 

 揺れは次第に大きくなり、これまで経験したことのない程グラグラと大きく揺れた。まるで地震のようだ。アレン達は、立っていられなくなった。

 

 「こっ、これは、かなり大物かもよ」

 

 ドッカーーン!

 

 アレン達の前の砂が大きく吹き上がり、ヴェールドゥテールが姿を現した。

 

 「で、でかい・・・」

 

 「どうやら、こいつが砂の魔物の親玉らしいな」

 

 アレンは、背中の剣を抜いた。そのヴェールドゥテールは、口の牙が3対6本生えていた。胴体の色も、これまでの個体とは異なり黒かった。ヴェールドゥテールは、砂の地面から真っすぐ伸びて静止していた。襲ってくる気配がない。

 

 「襲ってこないのか?」

 

 「アクロス、きっとこいつは俺達を観察してるんだぜ」

 

 「そうか・・・じゃ、挨拶代わりにこれはどうだ!」

 

 アクロスは、スプロンディッド・フォーシーユ、光の鎌を放った。鎌の形をした白い光が、ヴェールドゥテール目掛けて凄い速さで放たれた。

 しかし、光の鎌は魔物をすり抜けた。

 

 「なに!」

 

 次の瞬間、魔物は透明になって消えた。

 

 「どうなっている、」

 

 「アレンさん!これは・・・」

 

 なんとアレン達は、4体の巨大なヴェールドゥテールに、いつしか囲まれていた。

 

 4人は背中合わせになった。

 

 「アレン!こいつら同時に攻撃してきたら、さすがに防ぎきれないぞ!」

 

 アレンは、冷静に魔物を見ていた。

 

 「俺とアクロスは光の鎌を撃つ!ギル、お前は広範囲の魔法を前方へ撃て!」

 

 「わっ、わかりました」

 

 「光の鎌って、アレンお前スプロンディッド・フォーシーユを使えないだろ」

 

 「今見たよ」

 

 (まさか、この技も一度見ただけで使えるとでも言うのか・・・)

 

 「サリヤ!光の盾を出せるか」

 

 「いけるわ」

 

 「よし、お前は光の盾で防御だ!」

 

 「わかった!」

 

 「俺の掛け声で一斉に撃つんだ。いいな」

 

 手に持った武器を握りしめた。

 

 「いくぞ、3、2,1、撃て!」

 

 「はあぁ!」

 

 アレンとアクロスは光の鎌を、ギルは竜巻の魔法を前方へ放った!

 しかし、全く手ごたえがない。

 

 「サリヤの前にいるのが本物だ!」

 

 アレン達は即座にサリヤの横一列に並んだ!

 

 「はあぁl」

 

 アレン、アクロスそしてギルは前方へ同じ攻撃を放った!

 

 バシュー

 

 ヴェールドゥテールは、ギルの竜巻に巻かれ、2つの光の鎌で切断された。

 バラバラになって砂の上に、ボトボトと落ちてきた。

 

 「やったぜ」

 

 「分身する魔物を初めて見ましたよ」

 

 「アレン、やったじゃないか光の鎌」

 

 「アクロス程の威力はないが、形だけでも出せてよかったぜ」

 

 (もうこいつの事で、いちいち驚くのはよそう・・・)

 

 だがその時、アレンは違和感を感じた。

 

 (まだ魔物の気配が残っている気がする。なんか変だ・・・)

 

 次の瞬間、アレン達は信じられない光景を見た。

 バラバラになったヴェールドゥテールの肉片が、集まり再生し始めたのだ。

 肉片はあっという間に繋がり、元のヴェールドゥテールがアレン達の前に立ちはだかった。

 

 「なっ、なんだと!」

 

 「嘘でしょ!」

 

 「これは夢だ、夢に違いない」

 

 アクロスは光の鎌を放った。ヴェールドゥテールは切断されるが、次の瞬間元に戻っている。

 

 「くそっ、化物め、」

 

 「これはどうだー!」

 

 ドッカーーン!

 

 物凄い音を砂漠中に響かせ、ギルは大爆発の魔法を放った!

 ヴェールドゥテールは細かくちぎれてバラバラになったが、それでも肉片はまるで磁石が引き合うように結合し、あっという間に元に戻った。

 

 「うっ、嘘だろ!これでも元に戻るのか!」

 

 再生したヴェールドゥテールは胴体をくねらせ、アレン達めがけて頭から突っ込んできた!

 

 「くるぞー!」

 

 サリヤとギルは、光の盾を前方に展開した!

 

 ドガーーーン!

 

 「キャーー」

 

 「サリヤ!」

 

 凄い衝撃がサリヤとギルに伝わり、サリヤが吹き飛ばされた。

 ギルは耐えたが、胸まで砂に埋まり身動きが取れなくなった。

 

 「大丈夫か!サリヤ」

 

 「へっ、平気よ、」

 

 アレンは、飛ばされたサリヤを起こした。口が切れて血が流れている。

 アクロスは、ギルを砂から引っ張り上げた。

 

 「くそ、斬っても元に戻るんじゃ剣は使えないぜ!」

 

 「どうするアレン、これはヤバイぞ」

 

 ヴェールドゥテールは、再び胴体を大きくのけぞらせた。

 

 「また何かしてくるぞ!」

 

 ギャーーーーン

 

 ヴェールドゥテールは、口を大きく開け物凄い叫び声を上げた!

 

 次の瞬間、アレン達は視界が無くなり暗闇になった。

 目は開いているのに、何も見えない!

 

 「どういうことだ、アクロス、お前は見えているのか!」

 

 「なっ、何も見ない」

 

 「アレンさん、僕も暗闇です」

 

 「サリヤは!」

 

 「あたしも何も見えない」

 

 「サリヤ、魔法で戻せないのか」

 

 「この魔法は、あたしの理解の範囲を超えているわ」

 

 「くそー、なんて奴だ!」

 

 アレン達は、窮地に立たされた。

 ただでさえ攻撃方法が分からない上に、全員の目が見えなくなっている。

 

 「皆、声出して背中合わせになれ」

 

 アレンは、ヴェールドゥテールが近づいてくる気配を感じていた。

 

 ( くそ、どうすりゃいいんだ!)

 

 ヴェールドゥテールは胴体をのけぞらせ、頭からアレン達に突っ込んでいった!

 その時、

 

 ヒューン、バシュ!

 

 ヒューン、ヒューン、バシュ、バシュ

 

 どこからか火矢が飛んできて、ヴェールドゥテールの胴体突き刺さった!

 その時、アレン達の視界が元に戻った。

 ヴェールドゥテールは、燃えている矢が胴体に突き刺さり悶絶している!

 

 「ギル、火だ!火炎の魔法を撃て!」

 

 「燃え尽きろ!」

 

 ギルは、爆炎魔法をヴェールドゥテールに放った!

 

 ゴォォォーー!

 

 ヴェールドゥテールは胴体をよじらせながら、断末魔を残して砂上に崩れ落ちた。

 

 「やったのか、」

 

 煙を胴体から無数に上げているヴェールドゥテールは、もう再生することはなかった。

 アレンを剣を収めた。

 

 「こいつの弱点は火だったんだな」

 

 「それにしても、矢はどこから飛んできたんだ?」

 

 「あ、アレンさん、人が来ます」

 

 アレンは後ろを振り向くと、中年の女性を先頭に数人の男達が、歩いてアレン達の方へ向かってくるのが見えた。

 

 

 「大丈夫かい」

 

 「あんたが助けてくれたのか」

 

 「砂漠からの振動で村が揺れたからね、男衆を集めて見に来たのさ。まさか、ヴェールドゥテールと戦っていたとは、驚いたよ」

 

 女性の後ろには、屈強の男達が手に弓を持ちズラリと並んでいた。

 

 「わたしは、オーベル。テンプの長だよ」

 

 「テンプ!テンプ村に着いたのか」

 

 「まさか、あんた達ガイド無しで砂漠を渡ってきたのかい。無茶なことを、命知らずにも程があるよ」

 

 「俺はアレン。ソリッドからテンプ村を目指してきた」

 

 

 「そうかい、ようこそテンプ村へ」 


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