53 砂上の舞
「サリヤ、悪かった。俺達はお前に従うぜ」
「じゃ、決まりね」
アレン達は、サリヤが指さした方向に進んだ。
サリヤは、手にヴェールドゥテールの肉片を持っている。
「サリヤさん、それは虫の餌ですか?」
「そうよ。あの小さな虫が、私達をテンプ村へ導くの」
「やっぱり、砂漠の謎を解いたんですね!」
「解いてない。言ったでしょ、あたしの勘だって」
「えっ、」
「ギル、あたしは虫に賭けたのよ」
サリヤは少し時間が経つと、肉片を小さくちぎり砂の上に置いて目を近づけた。
すると、上下から虫が現れ、肉片に向かって真っすぐ進んだ。
「進んでいる方向は、あってるわね」
どれくらい歩いただろうか。いつしか砂の起伏が無くなり、平坦になっていた。
空は曇ったままだ。
「もう、そろそろ着いてもいい頃だと思うが、」
「まだ何も見えませんね」
「お前ら、サリヤを疑っているわけじゃないだろうな」
「信じたいが、そろそろ水も尽きる頃だぞ」
「暗くなってきたので、もう夕方じゃないでしょうか」
サリヤは、肉片に進む虫を見て微笑んでいた。
「最後までこのまま行こうぜ」
その時、足元の砂が揺れ出した。
「おい、まだ魔物がいるのか」
揺れは次第に大きくなり、これまで経験したことのない程グラグラと大きく揺れた。まるで地震のようだ。アレン達は、立っていられなくなった。
「こっ、これは、かなり大物かもよ」
ドッカーーン!
アレン達の前の砂が大きく吹き上がり、ヴェールドゥテールが姿を現した。
「で、でかい・・・」
「どうやら、こいつが砂の魔物の親玉らしいな」
アレンは、背中の剣を抜いた。そのヴェールドゥテールは、口の牙が3対6本生えていた。胴体の色も、これまでの個体とは異なり黒かった。ヴェールドゥテールは、砂の地面から真っすぐ伸びて静止していた。襲ってくる気配がない。
「襲ってこないのか?」
「アクロス、きっとこいつは俺達を観察してるんだぜ」
「そうか・・・じゃ、挨拶代わりにこれはどうだ!」
アクロスは、スプロンディッド・フォーシーユ、光の鎌を放った。鎌の形をした白い光が、ヴェールドゥテール目掛けて凄い速さで放たれた。
しかし、光の鎌は魔物をすり抜けた。
「なに!」
次の瞬間、魔物は透明になって消えた。
「どうなっている、」
「アレンさん!これは・・・」
なんとアレン達は、4体の巨大なヴェールドゥテールに、いつしか囲まれていた。
4人は背中合わせになった。
「アレン!こいつら同時に攻撃してきたら、さすがに防ぎきれないぞ!」
アレンは、冷静に魔物を見ていた。
「俺とアクロスは光の鎌を撃つ!ギル、お前は広範囲の魔法を前方へ撃て!」
「わっ、わかりました」
「光の鎌って、アレンお前スプロンディッド・フォーシーユを使えないだろ」
「今見たよ」
(まさか、この技も一度見ただけで使えるとでも言うのか・・・)
「サリヤ!光の盾を出せるか」
「いけるわ」
「よし、お前は光の盾で防御だ!」
「わかった!」
「俺の掛け声で一斉に撃つんだ。いいな」
手に持った武器を握りしめた。
「いくぞ、3、2,1、撃て!」
「はあぁ!」
アレンとアクロスは光の鎌を、ギルは竜巻の魔法を前方へ放った!
しかし、全く手ごたえがない。
「サリヤの前にいるのが本物だ!」
アレン達は即座にサリヤの横一列に並んだ!
「はあぁl」
アレン、アクロスそしてギルは前方へ同じ攻撃を放った!
バシュー
ヴェールドゥテールは、ギルの竜巻に巻かれ、2つの光の鎌で切断された。
バラバラになって砂の上に、ボトボトと落ちてきた。
「やったぜ」
「分身する魔物を初めて見ましたよ」
「アレン、やったじゃないか光の鎌」
「アクロス程の威力はないが、形だけでも出せてよかったぜ」
(もうこいつの事で、いちいち驚くのはよそう・・・)
だがその時、アレンは違和感を感じた。
(まだ魔物の気配が残っている気がする。なんか変だ・・・)
次の瞬間、アレン達は信じられない光景を見た。
バラバラになったヴェールドゥテールの肉片が、集まり再生し始めたのだ。
肉片はあっという間に繋がり、元のヴェールドゥテールがアレン達の前に立ちはだかった。
「なっ、なんだと!」
「嘘でしょ!」
「これは夢だ、夢に違いない」
アクロスは光の鎌を放った。ヴェールドゥテールは切断されるが、次の瞬間元に戻っている。
「くそっ、化物め、」
「これはどうだー!」
ドッカーーン!
物凄い音を砂漠中に響かせ、ギルは大爆発の魔法を放った!
ヴェールドゥテールは細かくちぎれてバラバラになったが、それでも肉片はまるで磁石が引き合うように結合し、あっという間に元に戻った。
「うっ、嘘だろ!これでも元に戻るのか!」
再生したヴェールドゥテールは胴体をくねらせ、アレン達めがけて頭から突っ込んできた!
「くるぞー!」
サリヤとギルは、光の盾を前方に展開した!
ドガーーーン!
「キャーー」
「サリヤ!」
凄い衝撃がサリヤとギルに伝わり、サリヤが吹き飛ばされた。
ギルは耐えたが、胸まで砂に埋まり身動きが取れなくなった。
「大丈夫か!サリヤ」
「へっ、平気よ、」
アレンは、飛ばされたサリヤを起こした。口が切れて血が流れている。
アクロスは、ギルを砂から引っ張り上げた。
「くそ、斬っても元に戻るんじゃ剣は使えないぜ!」
「どうするアレン、これはヤバイぞ」
ヴェールドゥテールは、再び胴体を大きくのけぞらせた。
「また何かしてくるぞ!」
ギャーーーーン
ヴェールドゥテールは、口を大きく開け物凄い叫び声を上げた!
次の瞬間、アレン達は視界が無くなり暗闇になった。
目は開いているのに、何も見えない!
「どういうことだ、アクロス、お前は見えているのか!」
「なっ、何も見ない」
「アレンさん、僕も暗闇です」
「サリヤは!」
「あたしも何も見えない」
「サリヤ、魔法で戻せないのか」
「この魔法は、あたしの理解の範囲を超えているわ」
「くそー、なんて奴だ!」
アレン達は、窮地に立たされた。
ただでさえ攻撃方法が分からない上に、全員の目が見えなくなっている。
「皆、声出して背中合わせになれ」
アレンは、ヴェールドゥテールが近づいてくる気配を感じていた。
( くそ、どうすりゃいいんだ!)
ヴェールドゥテールは胴体をのけぞらせ、頭からアレン達に突っ込んでいった!
その時、
ヒューン、バシュ!
ヒューン、ヒューン、バシュ、バシュ
どこからか火矢が飛んできて、ヴェールドゥテールの胴体突き刺さった!
その時、アレン達の視界が元に戻った。
ヴェールドゥテールは、燃えている矢が胴体に突き刺さり悶絶している!
「ギル、火だ!火炎の魔法を撃て!」
「燃え尽きろ!」
ギルは、爆炎魔法をヴェールドゥテールに放った!
ゴォォォーー!
ヴェールドゥテールは胴体をよじらせながら、断末魔を残して砂上に崩れ落ちた。
「やったのか、」
煙を胴体から無数に上げているヴェールドゥテールは、もう再生することはなかった。
アレンを剣を収めた。
「こいつの弱点は火だったんだな」
「それにしても、矢はどこから飛んできたんだ?」
「あ、アレンさん、人が来ます」
アレンは後ろを振り向くと、中年の女性を先頭に数人の男達が、歩いてアレン達の方へ向かってくるのが見えた。
「大丈夫かい」
「あんたが助けてくれたのか」
「砂漠からの振動で村が揺れたからね、男衆を集めて見に来たのさ。まさか、ヴェールドゥテールと戦っていたとは、驚いたよ」
女性の後ろには、屈強の男達が手に弓を持ちズラリと並んでいた。
「わたしは、オーベル。テンプの長だよ」
「テンプ!テンプ村に着いたのか」
「まさか、あんた達ガイド無しで砂漠を渡ってきたのかい。無茶なことを、命知らずにも程があるよ」
「俺はアレン。ソリッドからテンプ村を目指してきた」
「そうかい、ようこそテンプ村へ」




