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激流の中で  作者: 清水京太郎
第6章 炎の魔人
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50 砂漠への一歩

 アレンの声に、全員ギルの周りに集まった。

 

 「ほんとだ、文字のようなものと線があって、これは地図?」

 

 「そうですよ、サリヤさん!これこそが、・・・」

 

 ギルは、急に黙った。

 

 「どうしたんだ?」

 

 パタンと本を閉じ、人差し指を口の前に立て小声で言った。

 

 (アレンさん、これって監視者が聞いてますよね)

 

 (多分な)

 

 (なるほど、ここでうかつに喋れないってことか)

 

 (どうします?)

 

 アレンは、少し考えて、

 

 「ギル、本は一旦荷物に入れろ」

 

 「わかりました」

 

 「この続きは、砂漠に着いてからだ」

 

 

 アレン達はソリッドの町を南へ向かい、砂漠へ向け歩き始めた。


 南へ半日程歩き、目の前には森が広がった。

 木や雑草はそれなりに繁っているが、密度は高くない森だ。

 

 「ギル、この森はどのくらい続くんだ?」

 

 「半日程歩くと、砂漠との境目に出るとタイロンさんは言ってました」

 

 「今からだと、ちょうど日暮れくらいだな」

 

 「よし、この森を抜けるまで歩こうぜ」

 

 ギルは、コンパスを腰の革袋から出した。まだ正しく方位を示している。

 

 「ここでは、まだ磁気の乱れはありませんね」

 

 「持ってたんだ、コンパス」

 

 「旅には欠かせませんから」

 

 「砂漠でも使えたらいいのにね」

 

 「サリヤさんが、砂漠の謎を解いてくれることを期待してますよ」

 

 「無理よ、わたしなんて、」

 

 「サリヤ、お前はスゲーちからを持ってるんだ。自信持てよ」

 

 サリヤは、立ち止まって呟いた。

 

 「期待されることが嫌なんだけどな」

 


 「おーい、サリヤ。早く来い、おいてくぞ」

 

 

 

 夕日が森を染める頃、アレン達は砂漠と森との境目に到着した。

 進行方向は見渡す限り砂しかなかった。風が吹いているのか、遠くで所々砂が舞い上がていた。

 アクロスは手で砂をすくってみた。砂の粒は、かなり細かい。

 

 「これが南の砂漠か・・・」

 

 「別名砂の海です」

 

 「確かに砂の海だ」

 

 「見てると、砂漠に吸い込まれそうだわ」

 

 「アレン、この中に行くには覚悟が必要だな」

 

 「ビビったのか、アクロス」

 

 「ああ、正直これ程広範囲とは思ってなかったよ」

 

 「まあな、」

 

 想像以上の砂漠の大きさに、アレン達は圧倒されていた。

 

 「ギル、コンパスはどうだ?」

 

 「まだ使えます」

 

 アレンは反転し、後ろの森の方を向いた。

 

 「今日はここで野宿だ。明日夜明けとともに出発しよう」

 

 

 

 パチパチと火の粉を上げて、焚き火は燃えていた。

 

 「この季節は、野宿には最適だな」

 

 見上げた夜空は、今日も満天の星空だった。空気が澄んでいるせいか、外で見ると星の煌めきはさらに鮮やかで、この美しい光景に心を奪われない人はいないだろう。

 

 「よし、古文書の話しをしようか」

 

 「アレンさん、さすがにここまで監視者は来ないでしょうね」

 

 「どうかな。身を隠す木は後ろに沢山あるぜ」

 

 アレンは立ち上がり、その辺りから枯れた木の枝を4本拾ってきた。それを一本ずつ渡すと、

 

 「皆、輪になって座ってくれ」

 

 「なにが始まるの?」

 

 アレンの右横にギル、左にサリヤ、正面にアクロスが座った。

 アレンは木の枝で、砂に文字を書いた。

 

 (ギルが古文書で見たことを発表してもらう。声を出すな、砂に文字を書け)

 

 アレンは皆が理解したのを確認すると、手で文字を消した。

 ギルは荷物から2冊の古文書を取り出すと、最後のページを見た。そして、素早く荷物の中に戻した。

 

 (では、発表します)

 

 (光の古文書には、古代文字で、『統べる者はそこにいる』、という言葉が浮き出ていました)

 

 ギルは皆の顔を見た。全員それってどういう意味だ?という顔になっている。

 手で文字を消し、次を書いた。

 

 (あと、地図のようなものは、アブスト城の東が示されています)

 

 全員頷くの見ると、ギルは次を書いた。

 

 (水の古文書ですが、こちらは何も浮き出ていません)

 

 「え、浮き出てない?」

 

 アレンが思わず声を出した。


 「ちょっと、声を出すなと言った本人が喋ってどうすんのよ」

 

 「わりい、サリヤ」

 

 アレンは、穴があったら入りたくなった。

 

 「大事な所は皆に伝わったんだ。もう声に出してもいいんじゃないか?」

 

 「アクロスの言う通りだな」

 

 アレン達は、大きく息を吐いた。まるで、水に長く潜っていたかのように。

 

 「しかし、不思議だな。光の古文書には浮き出て、水の古文書には何もないか・・・ギル、これは時間の経過か?」

 

 「アクロスさん、それだと水の古文書の方が先に浮き出るはずですよ」

 

 「まったく謎だらけで参るよ、この古文書探しは、」

 

 アレンは、持ってる木の棒を焚き火の中に放り投げた。

 

 「でも、最後のページがドラゴンオーブの在処を伝えてくれることは、これで証明されましたね」

 

 「ドラゴンオーブのことか、まだ決まったわけじゃないぜ」

 

 ギルは立ち上がり、砂を後ろ手で払った。 

 

 「アレンさん、ここまできたらドラゴンオーブ以外考えられませんよ」

 

 「まあ、そりゃそうだな」

 

 

 

 アレン達は、明日に備え寝ることにした。

 アレンは、焚き火を消した。明かりが消えて、音のしない暗闇の世界に包まれた。

 

 ギルは星空を見ながら、古文書のことを考えていた。

 

 (光にあって水にないか・・・

  浮き出たのは、おそらく港町ソリッドへ到着してから、宿屋を出るまでの間だ

  その間に何があった・・・

  なぜ水の古文書には何もないんだ


  港に着いてから、宿屋を出るまでに起きた事といえば、

  土の古文書が描かれてある絵を見つけたこと、

  あ、あと魔封印の部屋の存在・・・

  光の古文書と何か関係があるのか?)

  

 「うーん、わからない!」

 

 「ギル、いいから寝ろ」

 

 「アレンさん、起きてたんですか」

 

 「お前は悩み過ぎなんだよ。そのうち勝手に浮き出るって、」

 

 「それは絶対にありません。これは神が仕組んだことです、きっと何かの理由があるはずですよ」

 

 「わかった。でも、寝ろ」

 

 ギルは、小さくため息をついた。

 

 「そうですね、わかりました」

 

 「頼りにしてるぜ、ギル」

 

 ギルは星空の下、目を閉じた。

 

 「任せてください、アレンさん」

 

 

 

 さて、いよいよアレン達が砂漠に挑む朝が来た。空は、雲一つない澄み切った青空が広がっている。

 

 「さあ、いよいよだな」

 

 アレンは、横にいるサリヤと手を繋いだ。

 

 「これが皆の顔を見れる最後かも知れないね」

 

 サリヤは、横にいるギルと手を繋いだ。

 

 「最後の一言は、誰かと家族を持ちたかったなー、です」

 

 ギルは、アクロスに手を出した。

 その手をアクロスは右手で握り、左手でアレンと手を繋いだ。

 

 「皆死ぬ気満々だな。俺は生き残る方に賭けるとしよう」

 

 「アクロス、俺も死ぬなんてこれっぽっちも思ってないぜ。ここにる全員生きてテンプ村まで行くんだよ」

 

 アレンのいつも通りの根拠のない言葉だったが、不思議とちからが湧いてくるうような感覚があった。

 

 「よし、行くぞ!」

 

 

 目の前に広がるベージュ色の世界。

 アレン達は、その第一歩の足型を残した。

 

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