49 旅の吟遊詩人
「・・・」
アレンのノープランな衝撃発言に、3度目の沈黙が訪れた。
しばらくして、サリヤがフフフっと笑った。
「何がおかしいんだ、サリヤ」
「出たとこ勝負って、アレンらしい言葉ね」
サリヤは、立ち上がり腕を組んだ。
「でも、あたしはアレンについていく。前もそうだし、これからもそう。これはきっと変わらない。例え、」
ギルとアクロスは、サリヤを見上げた。
「死ぬことが前提でもね」
その言葉に、ギルも立ち上がった。
「行きましょう。死は覚悟していますが、それでも皆で生きて砂漠を超えましょう」
「やれやれ、」
アクロスは、首を横に振った。
「君達がどうして、そこまでアレンについて行くのか。俺は知りたくなったよ」
「アクロス、お前も行くのか?」
「ああ、イヤイヤだけどな」
アレンは、ニンマリした。
「あたしだけ砂漠に置いて逃げるのはやめてよね。死ぬときは4人いっしょに死ぬんだから」
「サリヤ、死ぬこと前提で話しするのやめろよ」
「だって、ギルが深刻な顔してたし、」
「要は砂漠を歩く時に、方角がわかればいいんだよ。魔物は、俺達4人いれば楽勝だろうし」
「目標となる物が何もないですからね」
「ガイドが行けるんだ、俺達だって行けるさ」
「そんな簡単な話しだと思うか?」
「案外サリヤが、その方法を見つけるかもよ」
「えっ、あたし?」
アレン達は気を取り直し、いつものレストランで食事を取った。
その後、それぞれの部屋に戻り、明日の砂漠への準備をした。
アクロスは、部屋の窓から輝く星を見ていた。
(アレン、不思議な男だ・・・だが、お前もこの旅には、何か別の目的があるような気がする・・・この俺と同じように・・・)
一夜明けた。
「え、もう行ってしまうのかい?」
「ああ、次に行く所が決まったんだよ」
ギルは、これまでの宿代を支払った。
「短い間でしたが、お世話になりました」
サリヤは宿屋の女将に近寄り、ウインクしながら囁いた。
「もう本のことは思い出さなくていいですよ」
「・・・」
宿屋を出てすぐ、ギルはアレンに言った。
「アレンさん、ちょっと船の事で桟橋に行ってきます」
「わかった、ここで待ってるぜ」
ギルは、港へ向けて走った。
桟橋には、船の停泊を管理しているあの男がいた。
「あのー、」
「この前アブストから来た、」
「はい、ちょっと船のことでご相談があります」
「もしかして、アブストへ帰るのか?」
「あ、いえ、私達はこれから南へ向かいます」
「南って、砂漠へか?」
「ええ、その先にあるテンプ村へ行きます」
「今、ガイドは誰もいないよ。砂漠を超えることは無理だ、やめときなよ」
「心配には及びません」
「及びませんって・・・」
「それで船のことなんですが、」
「ああ、停泊料のことか。それなら、要らないよ」
「えっ、要らない?」
「昨日、旅のメネストレルから聞いたよ。あんた達、旅の行く先々で魔物を退治してるらしいじゃないか」
(メネストレル、吟遊詩人か・・・)
「そのメネストレルは、どこに行きましたか?」
「どこだろ、そう言えばそれきり見かけないな」
ギルは、何か引っかかるものを感じた。
「魔物退治してくれる人から金を取るわけにはいかない。タダでいいよ、何日でも泊めていってくれ」
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて」
「ああ、気を付けてな」
ギルは男に手を振りながら、アレンが待つ所に戻った。
「お待たせしまた」
「話はついたのか?」
「ええ、船はずっと無料で停泊できます」
「え、ずっとタダ?お前どんな交渉したんだよ、すげえじゃねえか」
喜ぶアレンだが、少し曇っている表情のギルにアクロスは違和感を覚えた。
「アレンさん、」
「どうした、ギル」
「誰かに跡をつけられている、ってことはないですか?」
アレンの笑顔が止まった。
「何かあったのか?」
ギルは旅の吟遊詩人が、自分達が魔物を退治しているという噂を町で流していることを話した。
「それで、タダになったのか」
「僕達がいる町で噂を流しているところが、なにか釈然としないんですよ」
「ギル覚えてるか、アブストからレリッシュ村へ行く山脈越えのとき」
「川でアレンさんが水を飲んでた、」
「あのとき、確かに人の気配がしたんだよ」
「じゃ、あの3枚の毛布もやっぱり誰かが・・・」
アレンは、宿屋の屋根を見上げた。
「見えないところで、助けてくれる奴がいるのかもな」
アクロスは、アレンの前へ出た。
「つまり俺達の行動は、監視されてるってことか?」
「そういうことになるな」
「だとしたら、相当の使い手だぞ」
「どうしてですか?アクロスさん」
「俺もアレンも、近くにいる人や魔物の気配が分かる。おそらく、アレンはかなりの範囲でそれを感じられるはずだ」
アレンは手で顔に影を作りながら、屋根を見ていた。
「アレンのような鋭い探知能力でも発見されないということは、かなり高度なハイドスキルを持った奴だと言える」
「もしかして、今この状況もどこかで見られているってことですか?」
「おそらくな」
ギルは、ぞっとして思わず周りを見渡した。
アレンは、ギルの肩を叩いた。
「ま、気にすんな、ギル」
「えっ、いいんですか?」
「助けてくれてるんだ、いいことじゃねえか」
「でも、なんか気味が悪いですよ」
「いくら監視したところで、俺達のやることは何も変わらないぜ」
アレンは、宿屋の屋根に向かって叫んだ。
「おーい、聞いてるか、監視してる君だよ」
(ドキッ)
「これからも俺達を助けてくれよな、頼んだぜ」
皆一斉に、宿屋の屋根を見た。
「アレン、屋根の上に誰かいるの?」
「いやサリヤ、なんとなくそんな気がしただけさ。さっ、皆行こうぜ。その死の砂漠とやらに」
アレン達は、歩き出した。
ギルは振り返り、宿屋の屋根を見ていた。
(何のために僕達を監視するんだろ・・・僕達を助けて何かメリットがあるのか・・・)
「ギル、この世界には俺達の味方もいるってことだよ」
(・・・もしかして、僕達に古文書を集めさせるのが目的か!)
ギルは立ち止まり、急いで背中の荷物を降ろした。
「どうした、ギル」
「よかった、ちゃんと本物が2冊ある」
「まさか、古文書を狙ってるってのか?」
「一応確認しようと思いまして、」
ギルは、古文書を荷物の中へ戻そうとした。
それを見て、アレンは再び前を見て歩き始めた。
「アクロス、俺達マジで砂漠で死ぬかもな」
「こんなに早くクルルの元へいけるとは思ってなかったよ」
「クルルに会えたら、よろしく言っておいてくれ」
「ちょっとあんた達、何弱気なことを・・・」
「あー!」
後ろで、ギルが大声を出した。
アレンは、茫然と立っているギルに駆け寄った。
「どうしたんだ、」
「浮き出ています!本の最後のページに文字が!」
「なんだって!」




