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激流の中で  作者: 清水京太郎
第6章 炎の魔人
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48 砂漠の魔物

 アレン達は、レゼルの屋敷から宿屋に戻っていた。辺りは、薄暗くなっていた。

 

 「土の古文書は、レゼルさんの屋敷の中にあると信じましょう」

 

 「で、ギル、これからどうする?」

 

 「魔封印の部屋を開ける鍵がどこにあるかですが、それは正直な話し、賢者様に直接聞くしかありません」

 

 「結局、あの独眼の賢者を追うハメになりそうだな」

 

 アクロスは、ため息混じりに言った。

 

 「明日からは、独眼の賢者様がどこへ行ったのかを聞いて回りましょうか」

 

 「わかった、そうしよう」

 

 「アレンさん、ちょっとタイロンさんの家に行ってきます」

 

 「おう、気を付けてな」

 

 

 

 ギルは、タイロンの家を訪れた。

 

 「お、君か」

 

 「タイロンさん、絵の中の本は古文書に間違いありませんでした。本当にありがとうございました」

 

 ギルは、タイロンに頭を下げた。

 

 「それは良かった。立ち話もなんだ、ま、家に入って」

 

 「では少しお邪魔します」

 

 朝訪れた時と、同じ応接のソファーに座った。

 

 「あの絵は今でもあったのか」

 

 「ええ、大きくて立派な絵でした」

 

 「絵の眼帯の老人は、この町にとても長く住んでたらしいよ」

 

 「その話、レゼルさんから聞きました」

 

 「それで、実際の本はあったのか?」

 

 「いえ、家中を探させていただいたのですが、見つかりませんでした」

 

 「そうか、それは残念だったな」

 

 中年の女性が、お茶を2つテーブルの上に置いた。

 

 「これからどうするか、決めているのか?」

 

 「僕達は、眼帯の老人の行き先を聞いて回ろうと思っています」

 

 「あの人は、もう何十年も行方不明だよ」

 

 ギルは、出されたお茶を飲んだ。

 

 「タイロンさんは独眼の老人の行き先について、何かご存じなことはありませんか」

 

 「悪いが知らないな」

 

 中年の女性は、バスケットに入った焼き菓子を持ってきた。

 

 「これ美味しいわよ、召し上がれ」

 

 「ありがとうございます」

 

 「お前何か知らないか、独眼の老人の行き先について」

 

 「知ってるわよ」

 

 「えっ、本当ですか!」

 

 「まだ小さい頃に、私のおばあちゃんが『生き神様は南へ向かったまま帰って来ない』って、何度か言ってたのを覚えているわ」

 

 「南って、テンプ村でしょうか?」

 

 「そこまでは、わからないわ」

 

 「わかりました、ありがとうございます!これで次の目標が決まりました」

 

 ギルの喜びとは裏腹に、タイロンの顔は曇っていた。

 

 「だが、問題があるよ」

 

 「えっ、なにかありますか?」

 

 「南は広大な砂漠が広がっていて、とても危険なんだ」

 

 「砂漠・・・」

 

 ギルが記憶している世界地図では、ソリッドの南には砂漠は描かれてなかった。

 

 「かなり広いですか?」

 

 「そりゃもう広いよ。俺は行ったことないが、商人達の中では、砂の海って呼ばれているくらいだ」

 

 「そうなると、コンパスが必要になってくるな・・・」

 

 ギルのつぶやきに、タイロンは反応した。

 

 「そのコンパスも役に立たないそうだ」

 

 「えっ、もしかして磁性鉱物が地下にあるとかですか?」

 

 「詳しいことはわからないが、砂漠のガイドがよく言ってたよ。砂の海では、コンパスは使えないってね」

 

 「あ、砂漠のガイドがいるのですね」

 

 「そうだよ、砂漠はガイドなしでは渡れない。それこそ、死にに行くようなもんだ」

 

 「よかった、これでなんとかテンプ村まで行けそうだ」

 

 ギルは、ほっと大きく息をして安堵した。

 

 「安心したところ申し訳ないが、ガイドは今誰もいないんだ」

 

 「えっ、いない!?」

 

 「近隣に魔物が増えたせいで、商人達や出稼ぎの人が行き来しなくなってな。砂漠のガイドも、仕事が無くなったんだよ」

 

 「それでガイドを辞めてしまわれたのですか・・・」

 

 「ああ、全員辞めたみたいだ。砂漠のガイドでは、もう生活出来ないんだよ」

 

 ギルは、がっくりと肩を落とした。

 

 「さらに砂漠には、別の問題もあるんだ」

 

 

 

 ギルは、タイロンの家を出た。

 複雑な心境だった。賢者の行方についての証言を得たのは嬉しいが、砂漠の問題が重くギルの心にのしかかった。

 

 アレンの部屋のドアを開けた。

 部屋では、皆がギルの帰りを待っていた。

 

 「お、帰ってきたな。じゃ、メシ食いに行こうか」

 

 「アレンさん、その前にタイロンさんの家で聞いた話しをします」

 

 「メシ食いながらでも、いいんじゃないか?」

 

 「凄く重要な話しなので、今ここで」

 

 「・・・あ、そう」

 

 アレン達は、ギルを囲んで床に座った。深刻な顔をしているギルが、その場の空気を重くした。

 サリヤは水の入ったコップを、それぞれの前に置いた。

 

 「で、どんな話しだ?」

 

 「まず、嬉しいお知らせから。独眼の賢者様が、向かった方向が分かりました」

 

 「お、凄いじゃないか。もう掴んだのか、さすがギル」

 

 「南へ向かったそうです」

 

 「お前が言ってた、テンプ村ってとこだな」

 

 「確証はないですが、南ということはテンプ村で間違いないかと」

 

 「で、嬉しくない話しもあるわけだ」

 

 ギルは、サリヤが置いてくれたコップの水を飲んだ。

 

 「その南には、広大な砂漠が広がっていて、ガイドなしでは渡れないそうです」

 

 「砂漠!南は砂漠か」

 

 「じゃ、ガイドを雇えばいんじゃね?」

 

 「そのガイドは、今誰もいないそうです」

 

 「いない?」

 

 「魔物が増えて、商人や出稼ぎの人が行き来をやめ、ガイドの仕事が無くなって全員辞めちゃったそうです」

 

 「まじか・・・」

 

 「ガイドがいなくても、コンパスがあれば方角はわかるぞ」

 

 「アクロスさん、そのコンパスも南の砂漠では使えないそうです」

 

 「使えない?なぜだ」

 

 「おそらく磁性鉱物が地下にあって、コンパスを狂わすんだと思います」

 

 「・・・」


 

 話し合いでの、最初の沈黙が訪れた。


 「じゃ、腹をくくってガイドなしで砂漠に挑むか?」

 

 「アクロスさん、南の砂漠はコンパスが使えない、歩いている方角が全く分からない死の砂漠ですよ」

 

 「おまけに、」

 

 「まだ、なにかあるのか」

 

 「ヴェールドゥテールという魔物が、砂の中に住んでいるそうです」

 

 「・・・」

 


 2度目の沈黙が訪れた。アレン達は、すでに食事に行く気分では無くなっていた。

 

 しばらくして、ようやくギルが言葉を発した。

 

 「周りは砂だらけの中で、方向もわからず、おまけに魔物まで出るとなっては、これは砂漠を渡るのは不可・・・」

 

 「待てよ、」

 

 ギルは、アレンに言葉を止められた。

 

 「不可能と思っても、俺達は進むんじゃなかったっけ?」

 

 「アレンさん、これまでは誰かが死にかけても、他の誰かがカバーすることで乗り切ってきました。しかし、今回は全員同時に死ぬ危険性があります」

 

 ギルの青ざめた顔と衝撃的な言葉に、サリヤとアクロスは動揺を隠せない。

 


 「じゃ、聞くが、ガイドはなぜ砂漠を越えられるんだ?」

 

 「それは・・・ガイドだけが知る何かがあるんだと思いますが、」

 

 「そう、つまり砂漠を渡る方法があるってことだろ」

 

 「アレン、辞めたガイドをとっ捕まえて白状させるか」

 

 「アクロス、そんな野蛮なことはやめろ」

 

 「お前が言うか」

 

 「それに、ガイドは自分達の商売ネタを、そう簡単に喋らねえよ」

 

 「まあ、確かにそうか」

 

 アレンは、立ち上がった。そして、宿屋の窓から夜のソリッドの港を見た。


 「俺達は、もっとスマートに行くぞ」

 

 「スマートってアレンさん、具体的にどうするんですか?」

 

 アレンは、満天の星空に向かってこう言った。

 


 「出たとこ勝負さ」

 

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