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激流の中で  作者: 清水京太郎
第6章 炎の魔人
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47 魔封印の部屋

 「もう、絶対嘘ついてるし」

 

 それぞれの部屋で荷物を降ろした後、アレンの部屋に集まっていた。

 

 「嘘ってなんだよ、サリヤ」

 

 「あの女将さん、本のこと知らないよ、絶対」

 

 「俺達を引き留めて、長く宿泊させる作戦か」

 

 「きっとそうだよ。あたしが頭痛の魔法で問い詰めてくる!」

 

 「サリヤ、待てって。そうかも知れないが、俺達は知らない町に着いたばかりだ」

 

 「だから何よ」

 

 「まず、情報収集が先だろ」

 

 「さすがアレンさん。まさにその通りだと僕も思いますよ」

 

 「ギル、俺は持ってる男だろ?」

 

 「まず、この町で古文書についてリサーチしましょう」

 

 サリヤは、唇を尖らせていた。

 

 「本は2冊しかないので、二手に分かれましょうか」

 

 アレンとサリヤ、ギルとアクロスの二手に分かれ、アレン達はソリッドの町の住人に古文書のことを聞いて回ることにした。

 

 

 「すみません、こんな本どこかで見たことありませんか?」

 

 「見たことあるぜ。お姉ちゃんが俺とデートしてくれるのなら、教えてやってもいいぜ。ヘヘヘ」

 

 アレンは、男の喉元に剣を突き出した。

 

 「今すぐ教えてくれるよな?」

 

 「あ、やっぱり知らないです。気のせいでした、ハハハ」

 

 

 「こんな本なんですが、見たことないですか?」

 

 「うーん、それより何か買ってかない?掘り出し物が一杯あるよ」

 

 「教えてくれるのなら、この店にあるもの全部買いますよ」

 

 「え、本当か!」

 

 「はい、でもまず教えてくれるのが先です。さ、どうなんですか?知ってるのですか、知らないのですか?」

 

 「えっと・・・はい、知りません・・・」

 

 

 

 三日が過ぎた。

 アレン達は、町のレストランで夕食を食べに集まっていた。

 

 「どうだ?」

 

 「今日も収穫ありませんでした。アレンさん達は?」

 

 「同じよ。あたしを見て変なこと言う人ばっかり。もううんざりだわ」

 

 アレンは、水の入ったグラスを持った。

 

 「まあ、乾杯しようぜ。皆、今日もお疲れさん」

 

 キーン、

 

 グラスの音は軽やかだったが、その場の空気は重かった。

 

 「乾杯というより、完敗って感じになってきたな」

 

 「心配すんな、アクロス。必ず手掛かりは見つかるよ」

 

 「だと、いいがな」

 

 アレン達は、出された料理を食べ始めた。

 

 「もし、この町でダメなら南へ行くしかないですね」

 

 「南には別の町があるのか?」

 

 「テンプという村があります」

 

 「村か・・・なんか人が少なそうだな」

 

 「ここで何も得られなけば、行くしかないですね」

 

 アレンは、ペスカトーレにフォークを突き刺し、グルグル巻いていた。

 

 「あ、そういや、昼間のなんとかっていう親父。変なこと言ってたな、なあサリヤ」

 

 「えーっと、タイロンさんだっけ」

 

 「あ、そうそう」

 

 「アレンさん、変なことって何です?」

 

 「たしか、古文書と似たような本の絵を見たことがあるって言ってたっけ・・・」

 

 「ええーっ!」

 

 ギルは思わず立ち上がり、大声を出した。ガチャンっと、テーブルの上の食器がぶつかり大きな音が鳴った。

 店の他の客が、一斉にアレン達を見ている。

 

 「おい、どうしたんだよ、ギル」

 

 「アレンさん、それってメチャクチャ重要な手掛かりですよ」

 

 「えっ、そなの?」

 

 

 ◇◇◇


 

 次の日、ギルはアレンから聞いた家の扉をノックした。

 中年の男が出てきた。

 

 「昨日、この本のことで尋ねてきた者ですが、」

 

 ギルは、古文書を男に見せた。

 

 「少し詳しい話しを聞かせていただけませんか?」

 

 「ああ、いいとも。中へ入って」

 

 ギルは、応接の部屋に案内された。男は、サリヤが言ってたタイロンだった。

 

 「その本は、絵の中で見たことがあるよ」

 

 「その絵はどこにありますか」

 

 「この町の高台にある、レゼルという人の屋敷の中にある絵だ。昔そこで下働きをしててね、何度も見て良く覚えているよ」

 

 中年の女性が、ギルにお茶を出してきた。ギルは軽く会釈をした。

 

 「その絵は眼帯をした老人の絵で、絵の中にその本と似たような本が描かれてあった」

 

 「そうですか、分かりました。お話しありがとうございました」

 

 「ところで、君達は、どこから来たんだ?」

 

 「アブストからです」

 

 「それは、また遠いところから。わざわざその本を探しに来たのか?」

 

 「ええ、この本は私達にとって大切な本なのです」

 

 「そうか。遠くから来た君達の手伝いが出来て良かったよ」

 

 ギルは出されたお茶を飲み、タイロンにレゼルの屋敷の場所を聞いた。


 


 ギルは、アレンの部屋をノックした。

 

 「どうだった?」

 

 「とにかく絵を見たいです。絵がある屋敷はそんなに遠くないので、これから皆で行きましょう」

 

 「よし、わかった。行こう」

 

 アレン達は、ソリッドの高台にあるレゼルの屋敷を訪ねた。

 キィーと、錆びた金属音のする門を開け、中庭を少し歩いた奥に屋敷はあった。

 庭には噴水もあったが、錆びて長く使われていないようだ。

 

 「大きなお屋敷ね」

 

 ギルは、木の扉をノックした。

 

 「誰じゃ」

 

 シワ枯れた声が、屋敷の奥から聞こえた。

 

 「わたしギルと言います。タイロンさんの紹介で来ました。この屋敷にある絵のことでお尋ねしたいことがあります」

 

 ギルがそう言うと、しばらくして扉がゆっくり開いた。扉を開けた老人は、レゼルだった。

 

 「誰じゃ、おまえさんらは」

 

 「俺達はアブストから来た者だ。じいさん、この本が描かれた絵がここにあるって聞いて来たんだが、その絵を見せてほしい」

 

 アレンは古文書をレゼルに見せた。

 レゼルは、しばらく考え、

 

 「確かに、これと似た本が描かれた絵がある」

 

 「俺達にその絵を見せてくれないか」

 

 「いいとも、」

 

 アレンが中へ入ろうとしたが、老人がアレンの腕を掴んだ。

 

 「なんだよ、見せてくれるんだろ?」

 

 「拝観料を出せ」

 

 「えっ?」

 

 「お前、タダで絵を見れると思っとるのか?」

 

 アレンは、思ってもみない話しに戸惑った。

 

 「俺達から金をとる気か」

 

 「嫌なら帰れ」

 

 ギルは、間髪入れずに前へ出てきた。

 

 「お支払いしますよ。おいくらですか?」

 

 「おい、ギル、」

 

 「アレンさん、先に進めるかも知れないんですよ。お金くらいどってことないです」

 

 ギルは、銀貨8枚をレゼルに支払った。

 通された客間にその絵はあった。右目に眼帯をした独眼の老人が、椅子に座っている絵だ。古文書らしき本が、その絵のテーブルの上に描かれてある。

 ギルは、目を絵に近づけた。絵の中の本には、表紙の文字があった。

 

 「古文書に間違いない」

 

 「おお、やったな!」

 

 「これは、地の古文書ですね」

 

 「じいさん、この絵の老人はどこにいるか知ってるか?」

 

 「行方不明じゃよ」

 

 レゼルは、アレン達をソファーに座らせた。

 

 「この老人は、この家の元の持ち主じゃ。わしの祖父は、この老人からこの屋敷を譲り受けた」

 

 「行方不明はいつからですか?」

 

 「わしの祖父に、この屋敷を譲ったときからじゃ」

 

 「だったら100年は経過してるんじゃないか?」

 

 「そうじゃの、それくらいは経っているかの」

 

 ギルは、レゼルに改めて聞いた。

 

 「この独眼の老人について、何かご存じな事はありませんか?」

 

 「ふむ・・・親父から聞いた話しによると、この町にずっと長いこと住んで、町では『生き神様』と呼ばれていたそうじゃ」

 

 ギルは、アレンの方を向いた。

 

 「5人の賢者様の一人で間違いないですね」

 

 「ということは、この屋敷のどこかに古文書があるということか」

 

 「その可能性は高いです」

 

 「ちょっと待てよ。本を持ったまま行方をくらませた、とも考えられないか」

 

 「アクロスさん、古文書はこの屋敷にありますよ」

 

 「なぜそう言える?」

 

 「あの絵です」

 

 アレン達はソファーから立ち上がり、絵の周りに集まった。

 

 「この絵は、独眼の賢者様から僕達への挑戦状です」

 

 「どういうことだ、ギル」

 

 「自画像の中に、わざわざ古文書を描いた。しかも、ご丁寧に表紙の文字まで。これは、この屋敷にあるから、探せるものなら探してみろという、賢者様からのメッセージとしか思えません」

 

 「そう読むと知って、裏をかいて俺達を騙してるかもよ」

 

 「そうかも知れません。ですが、この賢者の目・・・試しているんですよ、僕達の力量を。この目は、そういう目です」

 

 アレンは、振り向きレゼルに言った。

 

 「じいさん、悪いがこの屋敷の中を調べさせてくれ」

 

 「いいとも、但し金は取るぞ」

 

 ギルは、銀貨10枚を支払った。

 アレン達は、手分けして屋敷中を探し回った。しかし、どこを探しても古文書は見つからなかった。ある部屋を除いて。

 

 「後は、ここだけですね」

 

 その部屋は、ギルから調べるなと指示が出ていた部屋だ。

 

 「ギル、なんでこの部屋は調べないんだ」

 

 「アレンさん、この部屋は魔法で封印されている、魔封印の部屋だからです」

 

 「やはりそうか!」

 

 後ろにいたレゼルが叫んだ。

 

 「やはりって、なに?」

 

 「親父から、この部屋に近づかないように言われておったが、ある日わしは部屋のドアを開けようとして、ドアノブに触った途端気を失ったんじゃ」

 

 「それは、きっと魔封印の防御機能が働いたためですね」

 

 アレンは、小さくため息をついて、

 

 「ギル、めんどくさいから、お前の魔法で部屋ごと吹き飛ばしてしまえよ」

 

 「バカなことを言うな!家が壊れるだろうが」

 

 「アレンさん、僕の感ですが、おそらく爆発の魔法を使っても、この部屋だけは無傷で残ると思います」

 

 「無傷?そんなわけないだろう」

 

 「この部屋全体に魔封印が施されている。魔封印は言わば、アンチマジックエリアと同じ」

 

 「魔法が効かないのね」

 

 「そうです」

 

 「物理破壊は効くんじゃないか?」

 

 「この部屋に振れた途端に防御機能が働くので、物理も無理です」

 

 「じゃ、どうしたらいいんだよ」

 

 「魔封印を解く鍵があるはずです。それは魔封印を施した術者でしか作れない鍵です」

 

 「そんな鍵なんて無かったぞ。サリヤとアクロスはどうだ?」

 

 二人とも首を横に振った。

 

 

 「アレンさん、一度宿屋に戻って方針を立て直しましょう」

 

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