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激流の中で  作者: 清水京太郎
第6章 炎の魔人
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45 新天地へ

 アブスト王は、立ち上がった。

 

 「アレン、落ち着けよ。アブストが、カースへ侵攻することはない」

 

 アレンはアブスト王の表情から、その言葉の真偽を見定めようとじっと見つめた。

 

 「本当だな」

 

 「本当だ。むしろ、カースの復興を出助けしてもいいぞ」

 

 アレンは椅子に座った。

 

 「そうか、じゃその言葉、信じることにしよう」

 

 アレンが座ったことで、サリヤ達は席に戻った。近衛騎士団も、それぞれ自分の椅子へ座った。

 

 「君の言う通り、トンネルのことはカース王の死で不問にしよう」

 

 「そうしてもらえると助かるぜ」

 

 「さっきも言ったが、我々はカース復興の手伝をする。友好の使者をトンネルを使って派遣しようじゃないか」

 

 「そういう使い方なら、俺は大歓迎だぜ」

 

 「よし、皆の者、飲み直しだ!」

 

 アブスト王は、グラスを掲げて叫んだ。おおー!という声が大広間に響いた。

 宴会は、再び楽しい雰囲気に戻った。

 

 「ところでアレン、わたしが君達のために用意した船は立派なものだぞ」

 

 「本当に感謝しかないよ」

 

 「船の操縦は誰がするんだ?」

 

 「はい、アブスト王、わたしです」

 

 話しを聞いていたギルは、立ち上がって手を上げた。

 

 「ギルか。君は帆船を扱ったことがあるのか?」

 

 「全くありません。ですが、帆船操縦に関する知識は誰よりもあります」

 

 「そうか、それは素晴らしい」

 

 アブスト王は、小声でアレンに尋ねた。

 

 (大丈夫なのか?)

 

 「って言うか、ギル以外誰も船を操縦する気がないんだよ。あいつが100で、その他の連中はゼロだ」

 

 「わかりやすいな」

 

 アブスト王は苦笑した。

 

 「で、行き先は決まっているのか?」

 

 「ああ、港町ソリッドだよ」

 

 「なるほど、気をつけて行けよ。と言っても、君達の行く先々は、いつも波乱しか無いみたいだが」

 

 「そうだな、カース城で俺は死にかけたし」

 

 「なんと、大丈夫かアレン」

 

 「ここにいるのは、幽霊じゃないことは確かだよ」

 

 「いつも死と隣合わせということか。もう英雄王と話すのは、これが最後かも知れないな」

 

 「おいおい、縁起でもないこと言うな」

 

 サリヤ達は、まだ見ぬ新しい町の話で盛り上がっていた。

 こうして、宴会は夜遅くまで続いた。

 

 

 

 「我が王」

 

 「入れ、ファリド」

 

 ファリドは部屋に入り、ドアを閉めた。宴会が終わり皆が解散した後、アブスト王は自室で考え事をしていた。

 

 「よろしいのですか、トンネルの件」

 

 「カースの連中は、土地も広く鉱物資源も豊富な我が領土を狙っていたのだろう」

 

 「しかし、ペルディド山脈に穴を空けるとは、思い切った事を考えついたものです」

 

 「陸路でカース領から来るには、どうしてもあそこを通らないとダメだからな。我らにとっては東の自然の要塞だったが、まさかトンネルを掘るとは」

 

 アブスト王は、机の椅子から立ち上がった。

 

 「カースが魔物に襲撃された今なら、我が軍で攻め落とすことは出来るだろう。もちろん、トンネルを使っての話しだが」

 

 「では、」

 

 「無理だよ。アレンがカースの味方をするとなれば、我らに勝ち目はない」

 

 「あれから我が軍は、王の命に従い増強されております。王立の常駐軍だけでも、かなりの人数でございます」

 

 「お前に言われなくても、軍の兵力は把握している。だが、それでもアレンには勝てない」

 

 ファリドは、納得がいかない様子だ。

 

 「あの男は我々とは違う次元なんだよ」

 

 「と申されますと、」

 

 「あいつが戦う相手は、人間じゃないってことさ」

 

 「・・・」

 

 「神とか悪魔を相手に戦っているんだ。我々人間がいくら束になったところで、かなう相手じゃない」

 

 「しかし、一度に大量の人海戦術でいけば、或いは・・・」

 

 「ファリド、」

 

 王は、ファリド睨んだ。

 

 「もし本当にあいつを殺してしまうようなことになれば、我がアブストは、未来永劫天上の神の怒りを受けることになるだろう」


 それを聞いたファリドは、もうそれ以上王に尋ねることは無かった。

 

 「だが、」

 

 「なんでございましょうか」

 

 「友好の使者には、トンネルに関して細部までよく調べて報告するように伝えておけ」

 

 「・・・かしこまりました。もしかして、王は最初からその狙いで、友好の使者を提案されたのですか」

 

 「ファリド、勘ぐるのはよせ」

 

 アブスト王は机の椅子に座り、窓の外の暗闇を見た。

 

 「念のためだよ」

 

 


 ◇◇◇

 

 


 「これが、私達の船ね」

 

 夕日に映えるその帆船は、2本マストの美しい船だった。

 

 宴会の次の日、アレン達は朝方にアブスト城を出発し、夕日が海に沈みそうな頃にアブストの港へ到着した。

 潮の香とカモメの鳴き声が、海に来たことを告げている。

 

 「あなたがアレン様ですか」

 

 「そうだが、」

 

 「わたしは、この船の管理人のバトーです」

 

 バトーはアレンに手を伸ばし、握手を交わした。

 

 「アレン様、この船には名前がありませんので、船名を決めていただけませんか」

 

 「えっ、また名付けか」

 

 アレンはサリヤをチラッと見たが、サリヤはご愁傷様という表情だった。

 

 「名前付けなきゃダメなのか?」

 

 「ダメです。船名がないと、船としての管理登録が出来ません」

 

 「まじか・・・」

 

 「アレン、観念して名付けをしたらどうだ」

 

 「そう言うんなら、アクロスが考えてくれよ」

 

 「ダメだ。これはお前の船だ。お前が考えろ」

 

 「はいはい、わかりましたよ」

 

 アレンは、ため息混じりに船を見ていた。

 船体は白だが、夕日でオレンジ色に染まっていた。波が寄せる音に合わせて、ゆっくり上下に揺れていた。

 海は沈む夕日で、キラキラと輝いている。

 

 「ギル、ダイヤモンドの意味で、カッコイイ表現ないか?」

 

 「それなら古代の言葉で、『ディアマンテ』っていうのはどうですか?」

 

 「ディアマンテか、よし、それにしよう」

 

 「かしこまりました。ディアマンテ号ですね」

 

 バトーは、これで船の引き渡しは終わったとアレンに告げた。

 アレン達は船に乗り込み、船を係留していたロープを解いた。

 

 「さあ、俺達の新しい旅の始まりだ!お前ら、覚悟は出来てるか、サリヤ、」

 

 「もちろんよ。どこにだって行くわ」

 

 「ギル、」

 

 「任せてください。僕に出来ない事なんてありませんから」

 

 「アクロス、」

 

 「俺は新参だが、戦いに関してはエキスパートだ。頼りにしてくれ」

 

 「よし、じゃ行こう。港町ソリッドに向けて」

 

 「了解!」

 

 夕日を浴びて、ディアマンテ号は出航した。

 一路東に向かい、新天地へ向けて。


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