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激流の中で  作者: 清水京太郎
第5章 孤独の賢者
40/94

39 カース城炎上

 3か月が過ぎた。

 長かった冬も終わり、季節は春を迎えた。

 アレン達は、稼いだ金を宿泊と食事の代金としてアクロスに全額渡していた。

 

 ギルは賢者の元へ毎日通っていたが、もう古文書のことは言わず、もっぱら雑談をしていた。賢者からは学ぶことが多いので、ギルはセイジとの会話を楽しんでいた。

 

 その日アレンとギルは近隣の村に肥料の配達をし、レリッシュ村への帰路についていた。

 

 「ギル、じいさんは古文書を渡しくれそうなのか」

 

 「僕達のことは理解いただけたし、逆に応援してくれてる感じに今はなってます」

 

 「でも渡してくれないんだろ?」

 

 「何か最後の一線で迷われている気がします」

 

 「最後の一線?」

 

 「ええ、そこが分からないんですよねー。何に躊躇されているのか・・・」

 

 アレンとギルが山を降りた辺りで、遠くに煙が立ち上っているのが見えた。

 

 「あ、あれは・・・」

 

 「村の方じゃないのか」

 

 「村が燃えている?」

 

 「ギル、急ぐぜ!」

 

 「アレンさん、僕を背負ってください!アレンさんの速さについて行けません」

 

 「わかった!」

 

 アレンは、ギルを背負って全速でレリッシュ村へ向かった。

 

 

 

 アレンとギルはレリッシュ村に戻った。村は燃えていなかったが、村からも煙が見えている。住人達が外で騒いでいた。

 アレンは住人の一人に食って掛かった。

 

 「おい、何があった!あれはどこが燃えてるんだ!」

 

 「あの方向は、カース城だよ」

 

 「城か!」

 

 周りにいた住人がアレンに言った。

 

 「羽が生えた魔物がたくさん飛んできて、この村が襲われたんだよ」

 

 「えっ!?」

 

 「何人か殺されたみたいだ」

 

 「その魔物は村を襲った後、カース城の方へ飛んでった」

 

 その時、一人の年配の女性が、アレン達の輪に泣きながら飛び込んできた。

 

 「クルルちゃんが、空を飛んでいる魔物に連れていかれたのが見えたよ」

 

 「なんだと!」

 

 ギルは、違和感を覚えていた。

 

 (村の被害は、ここから見ても無いに等しい

  魔物が来襲したのなら、もっと徹底的に破壊されているはずだ

  でも、魔物が来て襲われたという証言がある・・・

  

  ・・・もしかして、クルルが狙いだったのか!)

 

 「アレンさん、これはマズイですよ!」

 

 「ギル、サリヤを呼んできてくれ。俺はアクロスの家で待ってる」

 

 「わかりました」

 

 ギルは村長の家に走った。

 アレンはアクロスの家に戻り、アクロスを探した。

 

 「アクロス!どこだ、いないのかー」

 

 アクロスの部屋のドアを開けると、部屋の床が破壊されていた。

 しかし、他は荒らされた様子はない。

 

 アレンは外へ飛び出し、近くにいた村の住人に飛びかかった。

 

 「おい、アクロスを見なかったか!」

 

 「アクロスなら、だいぶ前に城の方へ馬に乗って行ったよ」

 

 「くそっ、行っちまったか!」

 

 「鎧を着て、手に武器を持ってたな。凄い形相だった」

 

 「悪いが城までの道を教えてくれ」

 

 アレンは村の住人から、カース城までの道を聞いた。

 

 「アレンさん!」

 

 ギルとサリヤが戻ってきた。

 

 「お前ら、旅の服に着替えろ。カース城へ行くぞ!」

 

 「わかりました!」

 

 アレン達は服を着替え、それぞれ武器を持った。

 アレンは、ギルにカース城までの道を教えた。

 

 「俺はサリヤを背負って先に行く」

 

 「わかりました。僕も全力で追いかけます」

 

 その時、村長が現れた。

 

 「君達は馬に乗れるか」

 

 「乗ったことはねえが、あるなら貸してくれ」

 

 「心得た。誰か馬舎から馬を引いてくれ」

 

 村の大きな男が、手早く3頭の馬を引いてきた。

 

 「この村で一番早い馬でさ」

 

 「2頭借りるぜ」

 

 「アッ、アレンさん、僕は馬になんて乗ったことありませんよ」

 

 「ギル!今そんなこと言ってる場合か!気合だ、気合で乗れ!」

 

 アレンは器用に馬に乗り、サリヤに向けて手を出した。

 

 「サリヤ、手を出せ」

 

 サリヤが手を出すと、アレンはサリヤを掴んでグイっと引っ張り、アレンの後ろに乗せた。馬を引いてきた村の大きな男は、ギルを抱えてポンと馬の鞍に置いた。

 

 「この手綱をしっかり持てば大丈夫でさ」

 

 「よし、行くぞ!ギル、俺についてこい」

 

 「あ、ちょっと待って!」

 

 「はぁ!」

 

 アレンは足で馬の腹を蹴った。馬は猛スピードで走り出した。

 それと同時に、村の大きな男はギルが乗っている馬の尻を手でパンっと叩いた。

 

 「うわー、」

 

 ギルの馬はアレンの馬を追いかけた。馬の凄い速さで、ギルは空中に浮いていた。

 

 「誰か助けてー、」

 

 サリヤはアレンにしがみついていた。アレンは器用に馬をカース城へ導いていた。

 

 「アレン、あなた馬に乗ったことないって嘘だったのー?」

 

 「いや、嘘じゃない。今が初めてだよ」

 

 「乗れてるじゃない」

 

 「自分でも不思議だよ、自然と身体が動くんだ。まるで知ってたみたいにさ」

 

 「ちょっと、こっち見ないで!前見て、前!」

 

 「なんだ、馬の速さにびびってんのか、サリヤ」

 

 「なっ、何言ってんの。へっ、平気に決まってるでしょ!いいから前を見なさいってば!」

 

 

 馬は、あっという間に森を抜け、カース城が目の前に現れた。

 アレン達は、馬を止め降りた。

 

 「ギル、平気か?」

 

 「あ、はい・・・なんとか」

 

 城では、至る所で火の手が上がってた。上空には羽が生えた黒い魔物が数多く飛んでいる。

 

 「こいつら、どこから湧いてきやがったんだ」

 

 カース城の兵士は魔物に応戦していたが、敵が空を飛ぶというのは完全に想定外だった。城の中では多くの兵士が倒れていた。

 

 「僕に任せてください」

 

 ギルはスッと前に出て、闘杖サージュ・グロークをカツンと両足の真ん中に立てた。

 精神集中を瞬時に行った。ギルの髪の毛はバッと逆立つ。

 

 「くらえ魔物ども!雷撃魔法、トネールフードゥル!」

 

 青空に突如、いくつもの白閃光の稲妻が走った!

 

 バチバチ、ドカーーン!

 

 轟音を響かせ、雷に貫かれた魔物は次々と落下した。

 

 サリヤを目を閉じ、集中した。

 次の瞬間、上空に緑色の巨大な魔法陣がカース城を包むように広がった。そこから緑の雨粒が落ちてきて、傷ついたカース城の兵士に降り注いだ。兵士の傷に雨粒が落ちると、白い煙になって消えた。

 

 「おお、傷口が塞がったぞ!」

 

 「ちっ、血が止まって治ってる」

 

 「動ける、動けるぞ!」

 

 「こっ、これは奇跡か・・・」

 

 倒れていた兵士は、次々に起き上がった。

 

 (超広域全体回復魔法・・・しかも無詠唱で・・・)

 

 サリヤは、フラっとなった。

 

 「サリヤさん、大丈夫ですか!」

 

 「平気よ、これくらいすぐ戻るわ」

 

 「サリヤ、お前いつのまにこんな凄いことが出来るようになったんだ」

 

 「自分でもよくわからないの。癒しの神ローシェルとは、心でいつも繋がっている気がする。だから願いさえすれば、それが魔法になって出現するような感じかな」

 

 「それって、ある意味サリヤさんが神と同じってことですよね」

 

 「サリヤ、お前神か!」

 

 「でも、死んじゃった人は生き返らせることは出来ないみたい」

 

 よく見ると緑の雨が落ちた兵士の中でも、起き上がってこない者もいた。

 

 「蘇生は天上界では禁忌の魔法ですから。神でも無理ですよ」

 

 そのとき、サリヤは城の上部の窓に走る人が見えた。

 

 「アレン、あれアクロスじゃない!」

 

 「あいつ、あんなとこにいやがったのか。よし、皆行くぞ!」

 

 アレン達は、城の内部へ入って行った。

 

 

 

 「くそ、もうここしかないはずだ」

 

 「アクロス!」

 

 「アレン!どうしてここへ」

 

 「配達帰りの山から煙が見えたんだよ。それよりクルルはいたのか!」

 

 「まだ見つかってない。城は殆ど調べたが、どこにもいない。後はこの王の間だけだ」

 

 アクロスが扉を開けると、そこは段差の奥に玉座があるだけの部屋だった。

 中には誰もいない。

 

 「誰もいないぜ」

 

 「ここには、隠し部屋へ通じる階段への扉があるはずだ」

 

 「そいつは、どこにある?」

 

 「俺も知らないんだ。ただ、そういうのがあることは聞いていた」

 

 「アレンさん、扉は壁に仕組まれていることが多いです。壁を叩いて、変わった音がするところを調べましょう」

 

 「よし、やろう」

 

 アレン達は、壁を叩いた。

 早くクルルを見つけなければという焦りを抑え、慎重に4人は音を聞き分けた。

 

 叩けばコンコンと固い音がする中で、ポンポンと軽い音がする壁をギルが見つけた。

 

 「あった!アレンさん、ここですよ!」

 

 「よし、ギル、でかした!」

 

 「下がっていろ、俺が壁を破壊する」

 

 アクロスは、持っていた黒い斧を振り上げた。

 その斧を見たギルは、一瞬時間が止まったように思えた。

 

 (あっ、あれは戦斧アッシュ・ノワール・・・やはり、アクロスさんが4つ目の神器を・・・

  揃ってしまった・・・ついに4つの神器が、今ここに・・・)

 

 ギルの予感は的中した。サージュ・グロークを持つ手が震えた。

 

 「ふん!」

 

 アクロスは、力任せに壁を叩き砕いた。

 壊された壁から中を覗き込むと、割と広めの階段が上へと続いているように見える。

 

 「ギル、中を照らしてくれ」

 

 ギルは動かない。

 

 「おいギル、どうした」

 

 アレンの声に、はっとギルは現実の世界へ戻った。

 

 「どうしたんだ、ギル」

 

 「あたしが照らすわ」

 

 サリヤは、杖を光らせ壁の内部を照らした。

 階段は、その先にある扉らしきものに続いている。

 

 「あれが隠し扉に間違いなさそうだ。よし、行くぞ」

 

 その時、アレンは胸の違和感を覚えた。

 

 「どうしたアレン、」

 

 アクロスは、急に不安な顔をしたアレンに尋ねた。

 

 (なんだ、この胸の鈍い痛みは・・・)

 

 「アレン、どうしたの?」

 

 「上手く言えねえが、なんかこう嫌な予感がする」

 

 「まさかアレン、怖気づいたんじゃないだろうな」

 

 (違う、そんなことじゃない・・・だが、足が前に出ない)

 

 「お前が行かないのなら、俺が先に行こう」

 

 「待て、アクロス。わかった、行くよ」

 

 アレンを先頭に、サリヤ、ギルと続き、最後にアクロスが壊した壁の中へと入った。

 アレン達は、ゆっくり階段を登り始めた。

 バリ、バリと階段の上に散らばった壁の残骸を踏む音が、閉ざされた空間に響いた。

 

 階段は長くない。すぐ上に木の扉が見えていた。

 あと2,3段で扉という時に、アレンの足が止まった。

 

 「どうしたの?」

  

 アレンは、階段の下が空洞になっているような、浮いた感触を足から感じた。

 

 「戻れ!これは罠だ!」

 

 アレンの叫び声と共に、なんと階段が音を起てて崩れ始めた!

 

 「飛べ!」

 

 壊した壁の入り口に向かって、全員ジャンプした!しかし、サリヤの跳躍力が、わずかに不足して壁まで届かない!

 

 「キャー」

 

 「サリヤ!」

 

 アレンは、着地と同時に後ろを振り向き、落ちていくサリヤの手を掴んだ!

 

 ガラ、ガラ、ガラ・・・

 

 階段は崩れ落ちた。その下には、槍のようなものが無数に突き立っているのが見えた。

 アクロスは、アレンが掴んでいるサリヤの腕を掴むと、簡単に引き上げた。

 

 「危なかったな」

 

 「くそ、罠だったのかよ」

 

 「アレンさん、よく気が付きましたね」

 

 「階段を踏んだ時に、変な感触があった」

 

 「君は凄いな。危険を察知したり、罠を見抜いたり、まるで野生動物のようだ」

 

 「アクロス、それ誉め言葉だよな」

 

 アレンは、ふと杖を握りしめているギルを見た。

 

 「ギル、さっき何かボーっとしてたけど、大丈夫か?」

 

 「あ、いえ、もう大丈夫です」

 

 「そうか」

 

 

 「でも、これで隠し扉は、また振り出しですね」

 

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