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激流の中で  作者: 清水京太郎
第1章 武闘大会
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03 眠れる1000年の美少女

 「へえー、武闘大会ねえ・・・」


その夜、アレンは宿屋の食事の際に前に座った宿泊客の男と話していた。


 「てーことは、兄さんはドラゴンの年ドラゴンの月の生まれだね」


 「えっ、そうだけど、なんか関係ある?」


 「なんだ、何にも知らないんだな。いいか、あの大会は3年毎の開催。

 そんでもって、ドラゴンの年のドラゴンの月の生まれでないと出場できないんだよ。」


 「へぇー、そうなんだ」


 「理由は俺も知らないんだけどね」


 「でもそんなのバレなきゃ問題ないんじゃないの」


 「やめとけよ。もし後でバレたら、王族に嘘をついたことで、首を落とされるらしい」


男は右手で、シュっと自分の首を切る仕草をした。


 「こわっ・・・」


 「お城の王子さまもドラゴンの年ドラゴンの月の生まれらしく、前回の大会に出場したみたいだけど、

  なんか負けちゃったみたいで。噂じゃ、もう武術はやってないみたいだ」


 「王子さまねぇ・・・」


アレンは、食後のグリーンティーを一口飲んだ。


 「でさ、大会にでる連中ってやっぱ強い?」


 「それが、わかんねぇんだよ」


 「わからない?」


 「ああ。大会の様子は誰も見ちゃいねえんだ。俺も見たいんだけどな」


 「えっ、どういうこと?」


宿泊客の男は、アレンの耳に手を添えて、小さな声で言った。


 「コロセウムの武闘大会は、誰にも公開してないらしい」


武闘大会の会場は、コロセウムと呼ばれる丸い建築物で、広大な城の中庭にあった。

城は城壁で守られていて、出入りできる門には、両側に衛兵が昼夜問わず、

長い槍を垂直に持って、険しい表情で立っていた。


 「コロセウムって城下の人間は入れないのか?」


 「聞いたところによると、武闘大会以外の催し物であれば、城に入れて見ることができるらしいが、何故か武闘大会だけは誰も入れないって話だ」


 「貴族だったら見れるとか?」


 「貴族でもダメみたいだ」


 「じゃ誰も見てないところで俺試合すんの?」


 「おそらく大会の関係者以外は誰も入れないんじゃないの」


 「なんだよ、それ・・・」


ギャラリーの熱気と興奮、その場の雰囲気で強さを発揮する誰かみたいなタイプにとっては、

観客が一人もいないという状況は、落胆以外の何者でもなかった。


 「なんかサイアクだな・・・」


 「でも、俺の感じゃ、兄さんは相当強いとみたねー」


何故か興奮気味に、宿泊客の男はアレンをジロジロ見ながら語った。


 「まあね・・・でさ、優勝したら王から何か頼み事をされるって聞いたけど、なんか知ってる?」


宿泊客の男は、腕組みしながら少し考えこんで、


 「うーん、そのことか解らないけど、こんな噂も聞いたね・・・」


 「噂?」


 「なんでも、あのお城には呪いで1000年間も眠り続けているお姫さまがいるそうで、

 武闘大会に優勝した者だけが、その呪いを解けるって言い伝えがあるらしい」


 「ええっ、眠り姫の呪いを解くー?」


アレンは、自分の想像をはるかに超えた、あまりにも予想外の話に仰天した。


(じっ、じっちゃん・・・いくらなんでもこんな話、俺には無理だってば!)


 「おいおい、なに焦ってんだよ。もう優勝したような顔だね、がっはっはっ」


宿泊客の男は、大きな声で笑った。


 「ちょっと、おっさん、声でかいよ!」


 「おっと、すまんかった」


周りには誰もいなかったが、アレンは恥ずかしい気分になった。

  

 (しかし、1000年も寝たまま?本当かよ・・・確かに魔法や呪いはあるけど、いくらなんでも、1000年もあったら誰かなんとかしろよ・・・)


 「あ、でも姫って・・・1000年も経ってたら・・・」


アレンは、ちょっと想像しただけだが、ゾンビ姫が頭の中を走り回っていた。


 (ブルブル、ダメだ!想像するんじゃない!)


宿泊客の男は、アレンの様子を見てニヤリと笑った。


 「超絶美しいらしい」


 「えっ?」


 「絶世の美少女って話だ」


 「えっ、少女?」


 「白く透き通るような美しい肌で、目を閉じたまま息をしてないそうだ」


 (絶世の美少女って・・・1000年経ってるのに?)


 「兄さん・・・」


 「えっ、なっ、なに?」


 「食いついてきたな」


 「なっ、何言ってんだよ・・・揶揄うなって」


アレンは、グリーンティーのコップを持って飲もうとしたが、かなり前に空になっていたことに気付いて、テーブルに戻した。

その様子を見ていた宿泊客の男は、失笑した。


 「つ、つまり今までの大会の優勝者は、誰一人呪いを解けなかった、ってことだよな」


 「まあ、そういうことになるね」


 (じっちゃん! やっぱこんなの絶対に無理だって!)



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