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激流の中で  作者: 清水京太郎
第4章 怪鳥ガルーダ
31/94

30 全滅

 アレンは剣を下方に構えたまま、ガルーダに向かって飛び込んだ!


 (む、こやつ!)


 アレンの移動速度は猛烈に速かった。それはもう瞬間移動と言っていい速さだった。しかし、ガルーダも素早く反応した。瞬間的に光の盾を自身の前に展開した。


 バキーーン!


 剣と盾が衝突した。 

 アレンの剣はガルーダの盾を粉砕し、ガルーダの右胸に斬りつけた。


 (バカな、我の盾を砕いただと!)


 ガルーダは斬られながらも、羽で風を起こし、アレンを吹き飛ばした。


 「ぐわーっ」


 空中にいたアレンは踏ん張るものがなく、元いた壁側まで簡単に吹き飛ばされ、財宝の山に叩きつけられた。

 ガルーダは右胸から血が流れていたが、盾と硬い羽毛に阻まれ斬撃の威力は落ちていた。


 (あの剣、まさか・・・)



 「くっ、くそ・・・魔法の盾で剣の威力が落ちたか」


 アレンは財宝の中から這い出てきた。

 風の刃のようなもので服は切り裂かれ、吹き飛ばされたときの風圧であばらが折れた。

 サリヤは即座に治癒魔法をアレンに施した。


 「サンキュー、サリヤ」


 しかし、歩いた時痛みが走った。

 サリヤの治癒力が、いつもより落ちている?

 アレンはサリヤを見た。


 サリヤは悲しい顔になっていた。

 サリヤは神話の神獣に圧倒されていた。そして、アレンが吹き飛ばされるのを初めて見た。

 アレンは、サリヤの肩を抱いて言った。


 「そんな心配すんなって。俺がさっさと鳥野郎を倒してやるから。安心しろ」


 「アレン・・・」


 (あれは回復魔法、聖女もいたのか・・・とすると、あやつは魔導士か・・・)


 アレンは再び剣を構えた。


 「さあ鳥野郎、第二ラウンドだ」


 「貴様ら全員生かしておくわけには、いかなくなったぞ」


 「元から殺すつものくせに、今更何言ってやがる」


 「ひ弱な人間よ。相変わらず口だけは達者だな」


 「そのひ弱な人間に斬られたのは、お前だろ?」


 「斬られた?笑止。剣がかすった程度。しかし、人間の中にもマシな者はいる。この前殺したやつは魔導士であったが、なかなかの使い手であった」


 「なに!」


 ギルは素早く反応した。


 「まさか、マーラー様を・・・」


 「名など知らぬ。そやつは塔を破壊し、我が財宝に手をつけよったので成敗した」


 「よくも・・・よくもマーラー様を!」


 ギルは唇を噛みしめ、杖を強く握りしめた。


 (ギルの奴、スイッチ入ったな)


 「氷雪の魔人ゼレイロよ!我が声に答えよ!」


 (魔人召喚か。こやつめ・・・)


 「アンヴォカシオン!」


 ギルの頭上に氷の魔人が現れた!ギルの周囲の温度は急激に下がった!


 「ぐわあ、おいギル!俺達まで殺す気か!」


 アレンは真っ白な息でギルに訴えたが、もはやギルには何も聞こえていない。


 「これでもくらえ!グラスヴォンネージュ!」

 

 ガルーダの周りに、一瞬で尖った無数の氷の刃が出現した!

 ガルーダは炎の闘気を強めたが、氷の刃はガルーダに突き刺さった。


 「ぐおぉー」


 (今だ!)


 アレンは悶絶するガルーダに向けて突進し、そして跳躍した。しかし、飛び上がった瞬間、胸と腕に痛みが走った。

 

 (くそ!上手く飛べてねえ・・・だが、今しかない、今が唯一のチャンス!)


 「死ねえー!鳥野郎」


 アレンは剣を両手で持ち、ガルーダの眉間を目掛けて突き出した!


 「舐めるなよ、人間めが!」


 ガルーダは鋭く伸びた爪の手で、剣が突き刺さる直前でアレンを鷲掴みにした。

 氷が突き刺さった腕を無理に動かしたために、大きく裂け血が噴き出した。


 「くそったれめ、放しやがれ・・・」


 強い握力にアレンは身動き出来ない。


 「このまま・・・握り潰してもよいが・・・仲間に貴様の無様なところを・・・見せてやろう」


 「死ね!」


 ガルーダは、アレンを背後にある壁に投げつけた!

 

 「がはあっ」


 アレンは壁に張り付いた。

 そして、血の線を壁に残しながらゆっくり落ちた。


 ドサッ


 「アレン!」


 「回復魔法は使わせんぞ!ふん!」


 ガルーダの掛け声とともに、塔に空いた穴から複数の隕石が落ちてきた!隕石は穴を破壊しながら、サリヤとギル目掛けて落下する!


 「くそっ!」


 ギルは瞬間的に光の盾を出したが、隕石のあまりの数に盾がひび割れてきた。


 「くそー、持ちこたえられない・・・」


 ついに隕石は光の盾を破壊し、砕けた隕石の複数の破片がサリヤに命中した。


 「キャー」


 「サリヤさん!」


 サリヤは破片の衝突で吹き飛ばされた。

 

 「サリヤさーーーん!!」



 

 「これで残るは・・・お前だけだな・・・」


 ガルーダは、ゆっくりとギルに近づいた。


 「ここまで人間などに・・・やられるとは・・・思っていなかったぞ」


 (くっ、くそー、化物め!)


 しかしガルーダは、かなりダメージを受けていた。右側の羽が半分ちぎれ、身体の至る所から血が流れていた。


 (今なら倒せるかも知れない・・・だけど、僕の魔力だけでは奴を倒しきれない・・・何か別のちからが必要だ・・・別の何かが・・・)


 「まだ魔力を残しているようだが・・・我は倒せぬ」


 ガルーダは天井に穴が空いているところまで来た。外は更に荒れた天気になり、雨と風が凄い勢いで塔に吹き込んでいた。雷鳴は数秒間隔で鳴り続けている。

 その時、ギルは閃いた。


 (もしかしたら、いけるかもしれない・・・)


 ギルは杖を身体の前に縦て、目を閉じ精神を集中させた。


 「悪足掻きも甚だしい・・・」


 (まだだ、もう少し・・・)


 「どうした・・・何もせぬのか・・・」


 (まだだ・・・)


 ガルーダは穴が空いたところの、ちょうど真ん中まできた。


 (今だ!!)


 ギルは、カッと目を見開いた!


 「くらえ、最強のいかずちを!トネールフードゥル!」


 ギルは、雷撃の魔法を空に向けて放った!


 「なに!」


 嵐の雷とギルの雷撃魔法が合わさり、ガルーダに直撃した!


 バチバチバチ、ドカーーン


 「ぐああああぁーーー」


 塔を揺らす物凄い爆発が起きた!衝撃波でギルは財宝ごと壁まで吹き飛ばされた。




 ギルが目を開けると、ガルーダはうつ伏せに倒れていた。全身から白い煙が立ち上っていた。


 「やっ、やった・・・」


 ギルは急速に意識が薄れ始めた。


 フラフラになりながら、ギルはサリヤの元へたどり着いた。


 「サっ、サリヤさん・・・」


 ギルはサリヤを抱き起した。

 サリヤはかろうじて呼吸していたが、その呼吸は弱かった。額が切れ血で顔が真っ赤だった。


 「ダメだ、早く止血しないと・・・くそ、なんで僕は・・・回復魔法が使えないんだー!」


 サリヤを抱くギルの手に涙が落ちた。ギルは薄れゆく意識の中、腰の革袋にある止血の薬草に手を伸ばそうとした。


 (いっ、意識が遠くなる・・・・・・サリヤさん・・・死なない・・・で・・・)


 サリヤを抱えたまま、ギルは倒れた。





 「我に・・・ここまで傷を負わせるとは・・・小賢しい人間どもめ・・・」


 ガルーダは、ゆっくり立ち上がった。

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