30 全滅
アレンは剣を下方に構えたまま、ガルーダに向かって飛び込んだ!
(む、こやつ!)
アレンの移動速度は猛烈に速かった。それはもう瞬間移動と言っていい速さだった。しかし、ガルーダも素早く反応した。瞬間的に光の盾を自身の前に展開した。
バキーーン!
剣と盾が衝突した。
アレンの剣はガルーダの盾を粉砕し、ガルーダの右胸に斬りつけた。
(バカな、我の盾を砕いただと!)
ガルーダは斬られながらも、羽で風を起こし、アレンを吹き飛ばした。
「ぐわーっ」
空中にいたアレンは踏ん張るものがなく、元いた壁側まで簡単に吹き飛ばされ、財宝の山に叩きつけられた。
ガルーダは右胸から血が流れていたが、盾と硬い羽毛に阻まれ斬撃の威力は落ちていた。
(あの剣、まさか・・・)
「くっ、くそ・・・魔法の盾で剣の威力が落ちたか」
アレンは財宝の中から這い出てきた。
風の刃のようなもので服は切り裂かれ、吹き飛ばされたときの風圧であばらが折れた。
サリヤは即座に治癒魔法をアレンに施した。
「サンキュー、サリヤ」
しかし、歩いた時痛みが走った。
サリヤの治癒力が、いつもより落ちている?
アレンはサリヤを見た。
サリヤは悲しい顔になっていた。
サリヤは神話の神獣に圧倒されていた。そして、アレンが吹き飛ばされるのを初めて見た。
アレンは、サリヤの肩を抱いて言った。
「そんな心配すんなって。俺がさっさと鳥野郎を倒してやるから。安心しろ」
「アレン・・・」
(あれは回復魔法、聖女もいたのか・・・とすると、あやつは魔導士か・・・)
アレンは再び剣を構えた。
「さあ鳥野郎、第二ラウンドだ」
「貴様ら全員生かしておくわけには、いかなくなったぞ」
「元から殺すつものくせに、今更何言ってやがる」
「ひ弱な人間よ。相変わらず口だけは達者だな」
「そのひ弱な人間に斬られたのは、お前だろ?」
「斬られた?笑止。剣がかすった程度。しかし、人間の中にもマシな者はいる。この前殺したやつは魔導士であったが、なかなかの使い手であった」
「なに!」
ギルは素早く反応した。
「まさか、マーラー様を・・・」
「名など知らぬ。そやつは塔を破壊し、我が財宝に手をつけよったので成敗した」
「よくも・・・よくもマーラー様を!」
ギルは唇を噛みしめ、杖を強く握りしめた。
(ギルの奴、スイッチ入ったな)
「氷雪の魔人ゼレイロよ!我が声に答えよ!」
(魔人召喚か。こやつめ・・・)
「アンヴォカシオン!」
ギルの頭上に氷の魔人が現れた!ギルの周囲の温度は急激に下がった!
「ぐわあ、おいギル!俺達まで殺す気か!」
アレンは真っ白な息でギルに訴えたが、もはやギルには何も聞こえていない。
「これでもくらえ!グラスヴォンネージュ!」
ガルーダの周りに、一瞬で尖った無数の氷の刃が出現した!
ガルーダは炎の闘気を強めたが、氷の刃はガルーダに突き刺さった。
「ぐおぉー」
(今だ!)
アレンは悶絶するガルーダに向けて突進し、そして跳躍した。しかし、飛び上がった瞬間、胸と腕に痛みが走った。
(くそ!上手く飛べてねえ・・・だが、今しかない、今が唯一のチャンス!)
「死ねえー!鳥野郎」
アレンは剣を両手で持ち、ガルーダの眉間を目掛けて突き出した!
「舐めるなよ、人間めが!」
ガルーダは鋭く伸びた爪の手で、剣が突き刺さる直前でアレンを鷲掴みにした。
氷が突き刺さった腕を無理に動かしたために、大きく裂け血が噴き出した。
「くそったれめ、放しやがれ・・・」
強い握力にアレンは身動き出来ない。
「このまま・・・握り潰してもよいが・・・仲間に貴様の無様なところを・・・見せてやろう」
「死ね!」
ガルーダは、アレンを背後にある壁に投げつけた!
「がはあっ」
アレンは壁に張り付いた。
そして、血の線を壁に残しながらゆっくり落ちた。
ドサッ
「アレン!」
「回復魔法は使わせんぞ!ふん!」
ガルーダの掛け声とともに、塔に空いた穴から複数の隕石が落ちてきた!隕石は穴を破壊しながら、サリヤとギル目掛けて落下する!
「くそっ!」
ギルは瞬間的に光の盾を出したが、隕石のあまりの数に盾がひび割れてきた。
「くそー、持ちこたえられない・・・」
ついに隕石は光の盾を破壊し、砕けた隕石の複数の破片がサリヤに命中した。
「キャー」
「サリヤさん!」
サリヤは破片の衝突で吹き飛ばされた。
「サリヤさーーーん!!」
「これで残るは・・・お前だけだな・・・」
ガルーダは、ゆっくりとギルに近づいた。
「ここまで人間などに・・・やられるとは・・・思っていなかったぞ」
(くっ、くそー、化物め!)
しかしガルーダは、かなりダメージを受けていた。右側の羽が半分ちぎれ、身体の至る所から血が流れていた。
(今なら倒せるかも知れない・・・だけど、僕の魔力だけでは奴を倒しきれない・・・何か別のちからが必要だ・・・別の何かが・・・)
「まだ魔力を残しているようだが・・・我は倒せぬ」
ガルーダは天井に穴が空いているところまで来た。外は更に荒れた天気になり、雨と風が凄い勢いで塔に吹き込んでいた。雷鳴は数秒間隔で鳴り続けている。
その時、ギルは閃いた。
(もしかしたら、いけるかもしれない・・・)
ギルは杖を身体の前に縦て、目を閉じ精神を集中させた。
「悪足掻きも甚だしい・・・」
(まだだ、もう少し・・・)
「どうした・・・何もせぬのか・・・」
(まだだ・・・)
ガルーダは穴が空いたところの、ちょうど真ん中まできた。
(今だ!!)
ギルは、カッと目を見開いた!
「くらえ、最強のいかずちを!トネールフードゥル!」
ギルは、雷撃の魔法を空に向けて放った!
「なに!」
嵐の雷とギルの雷撃魔法が合わさり、ガルーダに直撃した!
バチバチバチ、ドカーーン
「ぐああああぁーーー」
塔を揺らす物凄い爆発が起きた!衝撃波でギルは財宝ごと壁まで吹き飛ばされた。
ギルが目を開けると、ガルーダはうつ伏せに倒れていた。全身から白い煙が立ち上っていた。
「やっ、やった・・・」
ギルは急速に意識が薄れ始めた。
フラフラになりながら、ギルはサリヤの元へたどり着いた。
「サっ、サリヤさん・・・」
ギルはサリヤを抱き起した。
サリヤはかろうじて呼吸していたが、その呼吸は弱かった。額が切れ血で顔が真っ赤だった。
「ダメだ、早く止血しないと・・・くそ、なんで僕は・・・回復魔法が使えないんだー!」
サリヤを抱くギルの手に涙が落ちた。ギルは薄れゆく意識の中、腰の革袋にある止血の薬草に手を伸ばそうとした。
(いっ、意識が遠くなる・・・・・・サリヤさん・・・死なない・・・で・・・)
サリヤを抱えたまま、ギルは倒れた。
「我に・・・ここまで傷を負わせるとは・・・小賢しい人間どもめ・・・」
ガルーダは、ゆっくり立ち上がった。




