02 ウォルタ城の城下町
一体何日歩いたのだろうか。
よく晴れた日も風が強い嵐の日も、重い荷物を背負い、道標に従ってひたすら歩き続けた。
日々の食事は、野の獣であったり、川を泳ぐ魚だった。
エルダーが言ってた魔物とは、全く遭遇しなかった。
「ふぅ、しかし遠いなあ」
アレンは石の上に腰を掛け、手で顔に風を送っていた。
まだ朝も早かったが、太陽は容赦なく照り付けた。
しばらくすると、遠くから馬車の音が聞こえてきた。旅芸人らしき一行が前からやってきたのだった。
「おお、これはもしかして、やっと近くまで来たか」
その馬車の後ろには、行商人らしき男も歩いていた。
アレンは、前を通り過ぎようとするその男に声をかけた。
「ねえ」
「ん?」
「あんた、ウォルタ城の方から来たんでしょ?」
「ああ、そうだけど」
「ここから城まで、何日くらいかわかる?」
「そうだな、普通に歩いて3日ってところか」
「3日か・・・で、今年はさ、城で武闘大会があるんだろ」
「そうだよ」
「それっていつ開催されるの?」
「武闘大会は、確か・・・明日だったかな」
「明日!」
「あんた、もしかして大会に出るの? ここからじゃもう間に合わないよ」
アレンは男の言葉も聞かず、荷物を背負い猛然と走り出した!
あっという間に、アレンの姿は見えなくなった。
「早っ」
◇◇◇
日も落ちてきた夕方、辺りはオレンジ色に染まっていた。
アレンは両肩で息をしながら、ウォルタ城の城下町の入り口に立っていた。
「はあ、はあ、着いた。まじ焦ったぜ・・・」
背負っていた荷物を投げるように降ろし、その場に大の字になって倒れこんだ。
通行人は怪訝そうな顔をして、アレンを避けるように道の端を歩いていた。
しばらくして、息も落ち着いてきた。
起き上がると、目の前には多くの人が行き交う、夕暮れの賑やかな街並みがあった。
「よし、行くか」
荷物を背負い、城下町へと入っていった。
「うへー、さすがだね。どこかの村とは大違いだ」
アレンは今夜の宿を探すべく、露店が並ぶ中心街へ入っていった。
「うひゃー、凄い人」
ドン!
「痛てっ!」
「おっと、ごめんよ。なにせ前が見えなかったもんでな。じゃな」
ぶつかってきた男は、そそくさと通りへ消えて行った。
「くそー、あんなに荷物を持ってたら前が見えないのも当り前だろが」
「よー、そこのかっこいいあんちゃん。これを買っていかねえか?」
「えっ、俺?」
「そうだよ。こっちこっち」
アレンは、手招きされた露天商の男の方へ近寄っていった。
「これは、俺っちの家に先祖代々伝わる秘伝中の秘伝、名付けてルエカオイルだ」
「ルエカ・・・」
「そうとも。これを傷口に塗ると、あーら不思議!どんな傷でもあっという間に・・・」
「さて、どんな宿屋にすっかなー。今夜は、屋根の下で眠れる!」
「あ、ちょっと、あんちゃんってばー、」
しばらく歩くと、こじんまりとしているが、清潔そうな宿屋があった。
「お、ここは良さそうだな」
「坊主・・・」
「えっ、俺?」
(またかよ・・・ったく、なんなんだよここは・・・)
声を発した人物は、ボロボロの服というか、
破れまくったマントと、大きな雑巾のような頭巾で身をおおい正体不明だった。
顔は深く被った頭巾で見え難いが、声からして老婆ということはわかった。
「城へ行くのか?」
「そうだけど、今日じゃないよ」
「武闘大会じゃな」
「あんた誰?」
老婆は、アレンに首にかかっている首飾りに目線を移した。
「おぬし、その首飾りをどこで手に入れた?」
「これ? これは俺のじっちゃんからもらったもんだ」
「おぬしのじいさんの名は?」
「エルダー」
「エルダー・・・」
その一言をつぶやいただけで、老婆は人込みの中に消えて行った。
「あっ、おい・・・.」
(何だよ一体、あの婆さん・・・まっ、いっか。ここは変な奴が多いってことで・・・)
アレンは、宿屋の扉を開けた。
「いらっしゃーい! お一人様ご案内ー!」
宿屋の主と交渉し、前金を支払った。
2階へ上がり、案内された部屋にはベッドが置かれてあった。
「おー! これがベッドというやつか!」
アレンは身体ごとベットに向かってダイブした。
そのとき、ゴツンと何か固いものがアレンの後頭部に当たった。
「痛てっ。なんだよ、なんか荷物に入ってる?」
起き上がり、背中の荷物を降ろして中を調べた。
エルダーに大会まで開けるなと言われていたが、ここまで来たら、今開けても同じだろと思った。
「あーっ、なんだこれは!」
そこには、大会で着る服にまぎれて、大きな石が2個入っていた。
「俺はこんな重たい石を入れた荷物を背負って走ってたのか・・・」
(アレン、これは大会で必要になる荷物じゃ、城に着くまで開けるでないぞ・・・)
「じっちゃん!まさか、こんなとこまで俺を鍛えるために!」
アレンは窓を開け、外に向けて全力で石を放り投げた。
「くそじじい!酷過ぎだあーー!」
アレンの叫び声が、城下町の夜に響き渡った。




