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激流の中で  作者: 清水京太郎
第4章 怪鳥ガルーダ
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26 ブレスレット

 もう何杯お茶を飲んだか、サリヤは分からなくなっていた。


 「遅いな・・・」


 窓から見える景色は、いつしか夕焼けになった。渡り鳥の声が、寂しげにサリヤの耳に聞こえていた。

 長老は、ため息をついているサリヤを遠くから見守るしかなかった。

 サリヤは空のカップを持ち上げては、気付いて置くという動作を繰り返していた。


 夕焼けが夕闇に変わろうとしていた。



 ガチャ


 「よお、サリヤ、待たせたな」


 「アレン!無事だったのね」


 サリヤは飛び上がった。


 「サリヤさん、僕も無事ですよ」


 「ギル!よかった」


 「俺達にかかれば、ロリコンダーも一撃さ、なあギル」


 「ははは、」


 ギルの態度が少し怪しかったのを、サリヤは鋭く見抜く。


 「本当にいたんでしょうね、そのロリコンダーって」


 「もちろん、なあギル」


 「えっ、ええ。当然です」


 サリヤはジト目でギルを見た。


 「ところで、鍵はあったの?」


 ギルは自身の荷物の中から、一本の鍵を取り出した。


 「これです」


 「これが?凄く錆てるけど・・・」


 「大層な箱に入れてあったので間違いないですよ」



 近くで会話を聞いていた長老は、アレン達に声をかけた。


 「本当に戻ってきよったか。信じられん・・・」


 「言ったろ、俺達は普通じゃないって」


 「このお嬢さんから聞いたが、まさか地図を持っておったとは知らなんだぞ」


 「昨日案内してくれた部屋に落ちてたのさ」


 長老はうつむいた。


 「あれは孫の部屋だ」


 「じゃ、お孫さんは洞窟へ・・・」


 長老は大きくため息をついた。


 「何度も止めたんだが・・・どうしても行くと言って、わしを振り切り仲間と出て行きおった。そして、それっきりだ・・・」


 アレンは懐から何かを取り出し、テーブルの上に置いた。


 「これは!」


 「じいさんの孫がつけてたものだろ?」


 それは長老と同じネックレスだった。

 

 長老はテーブルに置かれたネックレスを握りしめた。


 「分っていた・・・行けば生きて帰れない・・・分っていた・・・だが認めたくはなかった・・・うう・・・」


 長老はその場で泣き崩れた。


 アレンは長老に近づいた。


 「じいさん、あんたの孫の仇は俺達がきっちり取ったぜ。だから安心してくれ」


 ネックレスを握る長老の手は震えていた。


 「ありがとう・・・ありがとう・・・」


 

 その時、玄関の扉が乱暴に開けられた。


 「お前達か、南の洞窟に行ったのは」


 大きな声を出した男の後ろには、複数の槍を持った兵士がいた。


 「町の民から通報があった。貴様らを洞窟に侵入した罪で拘束する」


 長老は慌ててアレンの前に立ちはだかった。


 「お待ちください。この者達は旅の者で、洞窟の事を知らずに入ってしまったのです」


 男は鼻で笑った。


 「長老、そのような言い訳が通じるとでも思っているのか」


 「本当の事です!」


 「黙れ!つべこべ言うと、お前も牢屋に入れるぞ!」


 アレンは長老を後ろへ押した。


 「このじいさんは関係ねえ。俺達が自分の意志で洞窟に行ったんだよ」


 「自白したな!よし、この者達を捕らえろ!」


 「はっ!」


 アレン達はロープで縛られた。


 「おい、やめろ!」


 「じいさんは下がってなって。いろいろ世話になったな、俺達はこれで失礼するぜ」


 アレン達は城の兵士に連れていかれ、通り道に消えていった。

 長老はがっくりと膝を落とした。


 連行されている道端では、町の住人がひそひそ話ながらアレン達を横目で見ていた。

 それは犯罪者を見る目だった。


 「アレン、あんた抵抗しないの?」


 それを聞いたギルは、アレンの顔をチラリと見てクスっと笑った。


 「あ、なによ。あんた達、何か隠してるわね!」


 「おい、お前ら!喋るんじゃない!」


 3人は拘束されたまま、アブスト城へ入った。 



 

 「洞窟へ侵入した3名を捕らえて参りました」


 「ご苦労」


 そう答えたのは、女性の近衛師団長マーテル。


 「いかが致しましょうか」


 「まだ洞窟へ行く者がいるとは驚きだな。よし、私が直接取り調べしよう、ここへ連れてこい」


 「はは、」


 アレン達はマーテルの部屋に連れてこられた。背負っていた荷物に剣と杖は押収されていた。

 アレン達を連行してきた衛兵も部屋に入った。

 マーテルは部屋の奥にある大きな机に、両手に顎を乗せて座っていた。


 「ん?見かけない顔だな。お前達、町の者では無いな」


 「俺達は旅の者だよ」


 「ほお、お前の名は?」


 「そんなことより、さっさとロープを解いてくれ」


 「何故だ。貴様らは尋問され、牢屋に入れられるんだぞ。ロープを解く必要がどこにある」


 「俺達は王に会いたいんだよ。お前らの王にな」


 マーテルの部屋に、どっと笑いが起きた。 


 「我が王に会うだと?旅人風情が、なに寝言言っている。王に面会など出来る訳がなかろう」


 マーテルの言葉に再び笑いが起きた。


 「そうかい・・・」


 (お、これはアレンさんがブチ切れる5秒前だ・・・4・・・3・・・2・・・1・・・ゼロ)


 「はあ!」


 ブチン!


 アレンは腕のちからだけで、ロープをバラバラにした。


 「貴様!」


 マーテルの声に衛兵が一斉に剣を抜き、アレンを取り囲んだ。


 「慌てんな!」


 アレンは声だけで衛兵を制した。

 

 ゆっくりとした動作で、腰の皮袋からある物を取り出した。

 

 「これをよく見てみろよ」


 アレンは、ジャラっと金属の音がするものをマーテルに突き出した。


 マーテルは机から立ち上がり、アレンに近づいてそれを奪い取るとじっと見た。


 「これは王家のブレスレット・・・」


 「そうさ」


 ギルは、ロープに縛られたまま言った。


 「それは洞窟の奥深いところで、白骨化した死体の手首にあったものです」


 「きっ、貴様ら・・・まさか、洞窟の魔物を倒したというのか・・・」


 アレンに剣を向けていた衛兵が一斉にざわついた。剣先は震えだし、明らかに恐怖を感じていた。


 「どうした、さっきまでの威勢は」


 アレンは不敵な笑みを浮かべた。


 「信じられない・・・本当に洞窟の魔物を・・・」


 「そのブレスレットは先代の王が身に着けていたもの、ですよね?」


 アブスト王家では即位の儀式の際に、王冠と破魔のブレスレットを先代の王から譲り受け、その場で身に着けることを代々の習わしとしてきた。

 マーテルの手にあるブレスレットには、アブスト王家の紋章が刻まれていた。


 マーテルは深呼吸をして息を整えた。

 そして、アレンを睨んだまま左手を上げた。衛兵は剣を収めた。


 「で、王に会わせてくれるのか?」


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