24 旅の仲間
次に日、夜明けとともに3人は起床し身支度を整え、ソファーがある部屋に集合した。
「やはり行くのか」
長老が自分の部屋から出てきた。
「ああ、俺達は鍵を取って塔へ行くのが仕事だからな」
「そうか・・・だが、洞窟の場所を知らんのに、どうやって行くつもりだ」
「その事なら心配いらねえよ」
長老はアレン達の前に立った。
「まさか、町の者に聞けばいいと思ってないだろうな?」
「なぜだ?」
「昨日も言ったが、この町では洞窟へ行くことは禁じられておるが、洞窟の場所を教えることも禁じられておる。教えたことがバレると城の兵隊に捕まるでな」
老人は笑みを浮かべた。
「お前さんら、場所もわからずにアブストを彷徨うつもりかの」
アレンはソファーの間を抜け、玄関の扉を開けた。
「じゃな、じいさん、泊めてくれてありがとよ」
「おい、待て」
サリヤとギルは長老に感謝の言葉を伝え、アレンに続いた。
「死んでもしらんぞ」
長老は、最後の言葉をアレンにかけた。
「言ったろ、俺達は神に選ばれた者だって。じゃな、」
「バカ者めが・・・」
◇◇◇
「ねえ、長老が言ってたように、洞窟を探してこの辺りを彷徨うつもり?」
3人はアブストの城下町を出て、南へ続く道を歩いていた。
雲はあったが晴れていた。しかし、朝の空気はヒンヤリ冷たく、冬はそこまで来ていた。
「サリヤ、これを見ろよ」
アレンは一枚の紙を出した。そう、昨日ギルが偶然見つけた紙だ。
サリヤは紙を受け取ると、じっと見た。
「これって、まさか洞窟の地図?」
「そうさ」
「どうやって手に入れたの?」
「部屋に落ちてた」
「部屋に?」
地図を見る限り、町から洞窟まで歩いて半日もかからないくらいの距離だった。
「これが洞窟の地図だとすると、お昼前には着くはずです」
「え、洞窟の地図じゃないかも知れない?」
サリヤは急に不安になった。
「心配するなよ、サリヤ。俺は持ってる男だよ」
「持ってるって、何をよ」
先頭を歩いていたアレンは立ち止まって振り返った。
「お前達、かけがえのない仲間さ」
アレンはニッコリほほ笑んだ。
「バカじゃない」
(仲間・・・・・・初めて言われた・・・)
ギルは、ポワ~ンとして立ち止まったまま動かなくなった。
「ギル、なにボーっとしてんだ。行くぞ、ほら」
「あ、はい」
アレンは、いつも先頭を歩いていた。その背中をサリヤとギルは見ていた。
これから得体の知れない魔物と闘うというのに、後ろ姿は不思議と頼もしく見えた。
「アレン、怖くないのかな・・・」
「アレンさんは、きっと楽しいんですよ。僕が謎解きが楽しいように、アレンさんは強者との闘いが」
「それって、ただの戦闘バカよ」
「僕は知ってますよ」
「えっ?」
「アレンさんは無謀に戦っているわけじゃない。サリヤさんという信頼できるパートナーがいるからこそ、実力以上のものを発揮できる」
「そうかしら」
ギルはサリヤの方を見た。
「アレンさんを魔法で支援しているときのサリヤさんは、綺麗で輝いてます」
サリヤの顔が赤くなった。
「ギルったら、なっ、何言うのよ」
「あの自信に満ちた顔。きっと、サリヤさんの一番楽しい時はその時ですよ」
アレンは後ろを振り向いた。
「何を二人でゴチャゴチャ言ってるんだよ。さっさと行かないと日が暮れちまうぜ」
◇◇◇
「どうやら、ここらしいな」
「やっぱりあの地図あってましたね」
「よかったー」
3人は、アブストの城下町から南にある洞窟の入り口に到着した。
「ねえ、なにか変な匂いがするんだけど、気のせい?」
「ギル、もしかして俺かな?」
「えっ、アレンさん昨日お風呂入らなかったんですか?」
「入ったけど、俺って野宿ばっかしてきたからさ、染みついてるっていうか・・・」
「なに言ってるんですか、さあ、行きますよ」
3人は洞窟の中へ入った。
サリヤとギルは杖を光らせランプ代わりにした。薄暗かった洞窟の中は、一瞬でパッと明るくなった。
「その杖便利だよな」
アレンの声が洞窟の中でコダマになって響いた。丸い洞窟の中は広く、3人の影は壁に大きく伸びていた。中に進むにつれ、サリヤが言ってた変な匂いがキツくなってきた。
「やっぱり匂うよ、この洞窟。何かが腐ったような匂い」
「アレンさん、僕吐きそうになってきました」
「ギル、この程度で音を上げるとは情けないぞ」
匂いに加えて、少しずつ洞窟内部が暑くなってきた。
サリヤとギルは鼻を手で押さえながら歩いていた。
「待て、」
「どうしたんですか?」
前を行くアレンは急に立ち止まり、手を伸ばしてサリヤとギルの歩みを止めた。
そして、顔を前に向けたまま言った。
「サリヤ、お前は町へ戻れ」
「えっ、なんでよ」
「この先に魔物がいる」
「だったら、余計にあたしが必要なんじゃない?」
アレンは後ろを向き、サリヤを見た。
「この先にいる魔物を俺は知ってる」
「どんな魔物?」
「ロリコンダーだ」
「なにそれ、聞いたことない」
ギルは黙っていた。
「サリヤ、お前は知らないだろうけど、こいつは女子しか襲わない魔物だ」
「えっ、嘘でしょ」
「俺は被害にあった女子を何人も知ってる。それはもう酷いやられようで・・・余りの酷さに・・・言葉に出来ない・・・うう、」
アレンの苦悩に歪む顔を見て、凄い想像がサリヤの頭を駆け巡った。
「あ、あたし、どうしよう・・・」
「長老の家で待ってろ。鍵を取ったら、俺達もすぐ行くから」
サリヤの顔が青褪めてきた。アレンと同じ意見だと言わんばかりにギルは頷いた。
「わかった、じゃ先に行って待ってる」
「帰り道分かりますか」
「多分、大丈夫よ」
サリヤは踵を返した。
「アレン、気を付けてね」
そう言い残して、サリヤは洞窟の出口へ向かった。
やがて、その背中は見えなくなった。
「さて、アレンさん。なんですか、ロリコンダーって」
「ギル、あれを見てみろよ」
アレンが指さす方をギルは杖で照らした。
そこは洞窟内部が広場のように開けた場所に、無数に広がる白骨化した死体が山のように積み上がっていた。
「こっ、これは・・・」
ギルは思わず手で口を覆い、顔をしかめた。
「今までここに入った連中の死体だろうぜ」
「匂いの原因はこれか・・・」
中には腕や足などが食いちぎられたまま放置されており、虫が湧き腐って物凄い悪臭を放っていた。
「この光景にサリヤさんは耐えられないと思ったんですね」
「こんな酷いもの見せられたら、俺でも漏らしそうだぜ」
「そうか、この暑さは地熱か。そりゃ死体が腐るわけだ」
「ギル、お前は外には行かせないぞ。何があっても耐えるんだ、いいな」
「はいはい、分かってますよ。明かりが無くなるからでしょ」
「その通り」
アレンとギルは悪臭に耐えつつ、洞窟の奥へとバリバリと人骨を踏みながら歩いた。
「これって死者への冒涜ですよね」
「仕方ないだろ、骨だらけで他に歩くとこ無いんだから」
歩きながら、アレンは死体に特徴があることに気が付いた。
「ギル、こいつらって、みんな鋭い槍みたいなもので貫かれてるよな」
それは頭部だったり胸部だったり、多くの死体に穴が空いていた。アレンが手に取った頭蓋骨は、額に2つの丸い穴が空いていた。
「ギル、見てみろよ」
アレンは、その頭蓋骨をギルに渡した。
「なんですか」
「なにか思い出さないか、その2つの穴」
ギルは、頭蓋骨に空いた2つの穴を見た。
「思い出すって言われても・・・」
「お前が一撃で倒したあの虎みたいな魔物だよ」
「あ、2本の牙!」
ギルは、改めて自分の周りにある骨と化した死体を見た。
「つまり、ここに住み着いた魔物というのは・・・」
「そうさ、お前が倒したティーグサーバーだよ」
「そうだったのか」
その時、アレンは思った。
ティーグサーバーはアブストの精鋭部隊をも全滅させる程の魔物だ。
それを、ギルは魔法の一撃で倒している。しかも軽く撃っただけの魔法・・・
(ギル、お前はどんだけ強いんだよ)
「ギル、」
「はい?」
「お前、その気になったら世界征服出来るんじゃないか?」
「アレンさん、なにを急に。僕は世界征服なんて1ミリも興味ないですよ」
ギルは苦笑いしたが、その時、ふとある疑念が浮かんだ。
「アレンさん、もしかして、」
「なんだよ」
「僕と戦うつもりですか?」
アレンはギルを見て苦笑した。
「まさか。お前とやりあったら、命がいくつあっても足りねえよ」
アレンはギルが手に持った頭蓋骨を奪い取り、それを放り投げた。
「ギル、お前は俺の仲間だ。俺はお前を守る」
アレンはそう言って、ギルの肩をポンと叩いた。
(僕とアレンさんが戦ったら、サリヤさんはどっちの味方をするかな・・・)




