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激流の中で  作者: 清水京太郎
第4章 怪鳥ガルーダ
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23 先代の王

 「なんで不可能なんだよ」


 アレンはムッとした表情で長老に尋ねた。その時、アレンは長老の首にあるネックレスが目に入った。


 「ん、これか、これは孫にもらったものだ」


 お年寄りが身に着けるには少しハデだった。


 「そんなことより若造よ、塔の話を聞く気はあるか」


 「んなもん、あるわけ・・・ぐぅ」


 サリヤはアレンの口を手で押さえた。


 ギルは長老からアレンを隠すように前に立ち、


 「もちろんお聞きします」



 「・・・よかろう」


 長老はアレン達にソファーに座るように勧めた。

 アレンはサリヤにブツブツ文句を言ったがサリヤは無視していた。


 長老は話し始めた。


 先代のアブスト王が、ある時から領地内の住民に重い税をかけ金を集め始めた。

 金だけでは飽き足らず、宝石や高く売れそうな絵画や彫刻、果ては古来の本など、あらゆる個人資産を住人から奪い取った。

 当初それらを隠し部屋に入れていたが、財宝に憑りつかれたのか、いつしか王は側近を含めた城にいる者を信用出来なくなっていた。

 

 先代の王は一考し、隠し部屋からある場所へ財宝を全て移した。

 それがインドラの塔だ。

 塔はアブストの国属軍が監視し、昼夜財宝目当ての侵入者を排除してきたが、先代の王はその国属軍も信用出来なくなった。そこで分厚い金属の扉を取り付け、鍵を持つ王以外誰も塔に入れないようにした。

 そして扉の完成後、携わった職人を全て処刑した。


 「酷い・・・」


 「おい、なんで殺したんだ?」


 「職人が鍵を複製することを恐れたんですよね」


 「多分そんなとこだろう」


 「狂ってやがるな」


 そう、先代の王はもはや正常な判断が出来ない狂人になっていた。

 唯一塔の鍵を持つ王は、自分が暗殺されるのではないかという恐れから、ここから南にある洞窟の奥に鍵を隠した。

 そして、あろうことかそれを城や町の住人に振れ回った。


 「え、言っちゃった?じゃ、みんな鍵を取りにいくんじゃないか?」


 王はこう付け加えた。

 洞窟には恐ろしい魔物が住み着いている、と。


 もちろん、それは洞窟に近づけない為の嘘だった。王は自身の精鋭部隊を密かに洞窟へ派遣し、洞窟の中に入ってくる者を待ち伏せし次々と殺害した。

 そして、洞窟から誰も戻って来ないことをいいことに、やはり魔物はいると言ってのけた。

 

 それでも洞窟へ行く者は後を絶たなかった。町の住人の中には、財宝は自分達から奪い取ったものだから、取り返す権利があると言い洞窟へ行った者も多い。

 しかし、そやつらは全員帰って来なかった。

 やがて洞窟に近づく者は誰もいなくなった。

 頃合いを見計らって、先代の王は精鋭部隊を洞窟から引き揚げようとしたが、なんとその精鋭部隊もいなくなっていた。

 洞窟に誰もいなくなっていることを知った王は、精鋭部隊が裏切り塔の扉を開けたのではないかと考え、急いで塔に向かったが扉は鍵が掛けれらたままだった。


 「えっ、どういうこと?」


 「じゃ精鋭部隊はどこ行ったんだ?」


 長老は上目遣いでアレンを見て言った。


 「全滅したんだよ」


 「全滅?誰にやられたんだ?」



 長老は、指でパイプに葉を詰めだした。


 「いつしか洞窟には本物の魔物が住み着いていた」


 「なんだと・・・」


 「それに気付かず、先代の王も洞窟へ入り、それっきりだそうだ」


 「まじかよ・・・」


 長老は回すように火をつけ、煙を口から吐き出した。


 「今の王は洞窟へ行くことを禁じておるが、それでも欲に目が眩んだバカはいるがな・・・」



 長老はパイプを手に持ち、アレン達を見た。


 「どうだ、塔へ行く気は無くなっただろ」


 アレンは長老に言った。


 「悪いが今夜はここに泊めてくれないか?」


 「いいとも、所詮年寄りの一人暮らしだ。部屋は空いておる」


 「助かるぜ、夜が明けたら出発するよ。南の洞窟に向けてな」


 「お前、人の話を聞いとらんかったのか」


 「じいさんの長話はちゃんと聞いてたさ」


 「じゃ、なぜ洞窟に行くんだ」


 アレンは不敵な笑みを浮かべて言った。


 「俺達は普通じゃないんだよ。それこそ、神に選ばれた3人だ。言わば神と同じさ」


 長老はアレンのトンデモ発言にあっけに取られた。


 「神が負けるわけないだろう?」




  ◇◇◇




 アレンとギルは同じ部屋で寝ることになった。


 「神と同じとは、大きくでましたね、アレンさん」


 「テキトーな事を言わしたら、俺の右に出る者はいないぜ」


 (それって自慢すること?)


 「明日も早い、もう寝ようぜ」


 「・・・ですね」


 ギルはランプの灯を消そうとしたとき、テーブルの足元に一枚の紙きれが落ちているのに気付いた。


 「ん、なんだろう」


 「どうした、ギル」


 紙を拾い見てみると、薄い色で絵のようなものが描かれてあった。

 アレンはベッドを降りて、ギルの横に並んで紙を見た。


 「何かの地図か?」


 「あ、そうですよ、これは地図だ。これは・・・」


 ギルを紙を回転させた。


 「洞窟の場所を書いた地図じゃないでしょうか」


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