23 先代の王
「なんで不可能なんだよ」
アレンはムッとした表情で長老に尋ねた。その時、アレンは長老の首にあるネックレスが目に入った。
「ん、これか、これは孫にもらったものだ」
お年寄りが身に着けるには少しハデだった。
「そんなことより若造よ、塔の話を聞く気はあるか」
「んなもん、あるわけ・・・ぐぅ」
サリヤはアレンの口を手で押さえた。
ギルは長老からアレンを隠すように前に立ち、
「もちろんお聞きします」
「・・・よかろう」
長老はアレン達にソファーに座るように勧めた。
アレンはサリヤにブツブツ文句を言ったがサリヤは無視していた。
長老は話し始めた。
先代のアブスト王が、ある時から領地内の住民に重い税をかけ金を集め始めた。
金だけでは飽き足らず、宝石や高く売れそうな絵画や彫刻、果ては古来の本など、あらゆる個人資産を住人から奪い取った。
当初それらを隠し部屋に入れていたが、財宝に憑りつかれたのか、いつしか王は側近を含めた城にいる者を信用出来なくなっていた。
先代の王は一考し、隠し部屋からある場所へ財宝を全て移した。
それがインドラの塔だ。
塔はアブストの国属軍が監視し、昼夜財宝目当ての侵入者を排除してきたが、先代の王はその国属軍も信用出来なくなった。そこで分厚い金属の扉を取り付け、鍵を持つ王以外誰も塔に入れないようにした。
そして扉の完成後、携わった職人を全て処刑した。
「酷い・・・」
「おい、なんで殺したんだ?」
「職人が鍵を複製することを恐れたんですよね」
「多分そんなとこだろう」
「狂ってやがるな」
そう、先代の王はもはや正常な判断が出来ない狂人になっていた。
唯一塔の鍵を持つ王は、自分が暗殺されるのではないかという恐れから、ここから南にある洞窟の奥に鍵を隠した。
そして、あろうことかそれを城や町の住人に振れ回った。
「え、言っちゃった?じゃ、みんな鍵を取りにいくんじゃないか?」
王はこう付け加えた。
洞窟には恐ろしい魔物が住み着いている、と。
もちろん、それは洞窟に近づけない為の嘘だった。王は自身の精鋭部隊を密かに洞窟へ派遣し、洞窟の中に入ってくる者を待ち伏せし次々と殺害した。
そして、洞窟から誰も戻って来ないことをいいことに、やはり魔物はいると言ってのけた。
それでも洞窟へ行く者は後を絶たなかった。町の住人の中には、財宝は自分達から奪い取ったものだから、取り返す権利があると言い洞窟へ行った者も多い。
しかし、そやつらは全員帰って来なかった。
やがて洞窟に近づく者は誰もいなくなった。
頃合いを見計らって、先代の王は精鋭部隊を洞窟から引き揚げようとしたが、なんとその精鋭部隊もいなくなっていた。
洞窟に誰もいなくなっていることを知った王は、精鋭部隊が裏切り塔の扉を開けたのではないかと考え、急いで塔に向かったが扉は鍵が掛けれらたままだった。
「えっ、どういうこと?」
「じゃ精鋭部隊はどこ行ったんだ?」
長老は上目遣いでアレンを見て言った。
「全滅したんだよ」
「全滅?誰にやられたんだ?」
長老は、指でパイプに葉を詰めだした。
「いつしか洞窟には本物の魔物が住み着いていた」
「なんだと・・・」
「それに気付かず、先代の王も洞窟へ入り、それっきりだそうだ」
「まじかよ・・・」
長老は回すように火をつけ、煙を口から吐き出した。
「今の王は洞窟へ行くことを禁じておるが、それでも欲に目が眩んだバカはいるがな・・・」
長老はパイプを手に持ち、アレン達を見た。
「どうだ、塔へ行く気は無くなっただろ」
アレンは長老に言った。
「悪いが今夜はここに泊めてくれないか?」
「いいとも、所詮年寄りの一人暮らしだ。部屋は空いておる」
「助かるぜ、夜が明けたら出発するよ。南の洞窟に向けてな」
「お前、人の話を聞いとらんかったのか」
「じいさんの長話はちゃんと聞いてたさ」
「じゃ、なぜ洞窟に行くんだ」
アレンは不敵な笑みを浮かべて言った。
「俺達は普通じゃないんだよ。それこそ、神に選ばれた3人だ。言わば神と同じさ」
長老はアレンのトンデモ発言にあっけに取られた。
「神が負けるわけないだろう?」
◇◇◇
アレンとギルは同じ部屋で寝ることになった。
「神と同じとは、大きくでましたね、アレンさん」
「テキトーな事を言わしたら、俺の右に出る者はいないぜ」
(それって自慢すること?)
「明日も早い、もう寝ようぜ」
「・・・ですね」
ギルはランプの灯を消そうとしたとき、テーブルの足元に一枚の紙きれが落ちているのに気付いた。
「ん、なんだろう」
「どうした、ギル」
紙を拾い見てみると、薄い色で絵のようなものが描かれてあった。
アレンはベッドを降りて、ギルの横に並んで紙を見た。
「何かの地図か?」
「あ、そうですよ、これは地図だ。これは・・・」
ギルを紙を回転させた。
「洞窟の場所を書いた地図じゃないでしょうか」




