15 召命の二人
アレンは両手を組んで目を閉じた!
(頼む!上手くいってくれ!)
「フラム!」
突如ナメクジの化物の周囲に炎が現れ、ナメクジの化物は一瞬で炎に包まれた!
「グエー」
その一瞬の隙きを見て、女の子は立ち上がり籠と落ちた草を拾った。
アレンは素早く移動し、ナメクジの化物に近づいた。
「危ないから下がってろ」
女の子は洞窟の壁際まで下がった。
ナメクジの化物は炎の仕業がアレンだと分かると、狙いをアレンに変えた。詠唱なしで精霊魔法を唱えたせいか、炎の威力は弱かった。
「一か八かだったが、炎が出てよかったぜ」
ナメクジの化物はゆっくりアレンの方に巨体を向けた。
アレンは剣を抜いた。
「俺はこっちの方が専門なんだ。覚悟しやがれ!」
アレンはジャンプし、大きく剣を振り下ろそうとした。その時、ナメクジの化物の口から緑色の液体が飛び出しアレンに命中した。
「がはぁ!」
アレンはそのまま地面に落下した。全身が痺れて動けなくなっていた。
(こっ、これは・・・毒か・・・)
かろうじて目だけは動かせた。ナメクジの化物は勝利を確信したようにゆっくりと近づき、大きな太いしっぽを持ち上げた!
(くそー!ダメだ、身体が動かない)
(あれは毒)
女の子は、目を閉じ両手を広げて呪文を唱えた。
「癒しの神ローシェルよ、その清き涙のしずくを我の手に」
広げた両手から白い煙のようなものが現れ、アレンに向かって流れていった。
ナメクジの化物が大きなしっぽを振り下ろし、アレンに激突するその瞬間、
(はっ、動ける!)
ドシーーン!
地面が揺れ、砂埃が舞った。間一髪、アレンはナメクジの化物の攻撃を避けた。
その時アレンは、化物の攻撃直後の間を見逃さなかった。今度は後ろ側に回り込み、ジャンプしてナメクジの化物の背後をついた。
「これで決まりだー!」
大上段に剣を構えた。しかし、ナメクジの化物は首を180度回転させ真後ろを向いた。
「なんだと!」
今度は口から炎を吐いた!
「キャーー!」
アレンはまともに炎をくらった、かに見えたが、
「残念、前だよ」
アレンはナメクジの化物の攻撃を読んでいた。ナメクジの化物はその声で首を前に戻したが、既にアレンの剣は振り下ろされていた。
「グエエーー」
斬られたナメクジの化物の身体から黄色い液体が飛び散った。
ドシーーーン
ナメクジの化物は倒れ、絶命した。
アレンは剣を収め、壁際にいる女の子に近づいた。
「俺を魔法で助けてくれたんだろ」
「あなたの場合、強いのか弱いのか、よくわからないわね」
「えっ?」
そう言うと女の子は歩き出した。
「おい、どこへ行くんだよ」
「どこって、ここを出るに決まってるじゃない」
「ちょっと待ってくれよ」
「着いてこないでよ」
「俺もここを出でて、ピタの村に行かなきゃなんねえんだ」
女の子は足を止めた。
「ピタの村に何の用?」
「話せば長くなるから、とにかく出口に案内してくれよ」
女の子はしばらく考えた。
「ま、いいわ。一応命の恩人だし。わたしはサリヤよ。ピタの村のサリヤ」
「えっ、ピタの村?」
アレンとサリヤは洞窟を抜け、山を降りてピタの村へ向かった。
アレンはウォルタ王の依頼でドラゴンオーブを探していることをサリヤに話した。
「ピタの村でドラゴンオーブのことを聞きたいんだ」
サリヤは無言だった。
(なんか気が強くて、無愛想な子だな・・・)
二人は会話しないまま歩き続け、程なくピタの村に到着した。
村ではサリヤがいなくなったということで、ちょっとした騒ぎになっていた。
「あっ、帰ってきた!ステラ、サリヤが帰ってきたよ」
その声を聞き、ある家から中年の女性が飛び出してきた。
「サリヤ!どこに行ってたんだい!」
ステラと呼ばれていた中年の女性は、サリヤを見るなり怒っている様子だったが、サリヤを強く抱きしめていた。
「ごめんなさい、おばあちゃん」
「ゴホ、ゴホ」
ステラは咳き込んだ。
「おばあちゃん!」
「大丈夫、ちょっと無理して咳が出ただけだよ」
ステラは、サリヤが持っている花が咲いた草が入っている籠を見た。
「お前、薬草を取りに山へ行ったね」
「今逃すと、また一年先になるって教えられて・・・」
「最近は魔物が出るようになったからダメだって、あれほど言ったのに・・・」
サリヤは返す言葉がなかった。ステラは、ふとサリヤの横にいる少年に気がついた。
「ん、この子は?」
「名前はアレン、あたしが洞窟で魔物に襲われている時に助けられたの」
「魔物に襲われた!」
アレンはサリヤの家に呼ばれていた。サリヤはステラにこってり絞られたのは言うまでもない。
「わたしが最近病気がちでね。あの子はそのための薬草を取りに行ったんだよ」
アレンの前に湯気が上がったお茶が出された。
「でも、あんたはどうして洞窟にいたんだい?」
「ウォルタの城下町から、ここに来るためにあの洞窟を通ったんだよ」
「そうかい、街道は今通れないらしいからね」
アレンはこれまで殆ど女性と接したことがなかったからか、年配の女性と面と向かって会話することに緊張していた。
「で、この村には何をしに来たんだい?」
ステラは自分のカップにお茶を注いだ。
「探しているんだよ、ドラゴンオーブってやつを」
ガシャーン
ステラの手からカップが落ちた。カップは床に衝突し砕けた。
「おい、大丈夫か」
カップが割れた音を聞きつけて、サリヤが部屋に飛び込んできた。
「どうしたの!」
ステラはアレンを見つめたまま硬直していた。サリヤは床で砕けているカップを見て、すぐに水につけた布を用意してステラの足にあてた。その冷たさでステラは我に返った。
「大丈夫?おばあちゃん」
「いっ、今、なんて言った・・・」
「えっ、俺?」
ステラは立ち上がり、アレンの目の前まで来た。ステラは目を見開いたまま、何かに驚いた顔だった。
「ドラゴンオーブを探している、って言ったけど、何かまずかった?」
「ドラゴンオーブ・・・」




