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激流の中で  作者: 清水京太郎
第2章 北へ
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15 召命の二人

 アレンは両手を組んで目を閉じた!


 (頼む!上手くいってくれ!)


 「フラム!」


 突如ナメクジの化物の周囲に炎が現れ、ナメクジの化物は一瞬で炎に包まれた!


 「グエー」


 その一瞬の隙きを見て、女の子は立ち上がり籠と落ちた草を拾った。

 アレンは素早く移動し、ナメクジの化物に近づいた。


 「危ないから下がってろ」


 女の子は洞窟の壁際まで下がった。

 ナメクジの化物は炎の仕業がアレンだと分かると、狙いをアレンに変えた。詠唱なしで精霊魔法を唱えたせいか、炎の威力は弱かった。


 「一か八かだったが、炎が出てよかったぜ」


 ナメクジの化物はゆっくりアレンの方に巨体を向けた。

 アレンは剣を抜いた。


 「俺はこっちの方が専門なんだ。覚悟しやがれ!」


 アレンはジャンプし、大きく剣を振り下ろそうとした。その時、ナメクジの化物の口から緑色の液体が飛び出しアレンに命中した。


 「がはぁ!」


 アレンはそのまま地面に落下した。全身が痺れて動けなくなっていた。


 (こっ、これは・・・毒か・・・)


 かろうじて目だけは動かせた。ナメクジの化物は勝利を確信したようにゆっくりと近づき、大きな太いしっぽを持ち上げた!


 (くそー!ダメだ、身体が動かない)


 (あれは毒)


 女の子は、目を閉じ両手を広げて呪文を唱えた。


 「癒しの神ローシェルよ、その清き涙のしずくを我の手に」


 広げた両手から白い煙のようなものが現れ、アレンに向かって流れていった。

 ナメクジの化物が大きなしっぽを振り下ろし、アレンに激突するその瞬間、


 (はっ、動ける!)


 ドシーーン!


 地面が揺れ、砂埃が舞った。間一髪、アレンはナメクジの化物の攻撃を避けた。

 その時アレンは、化物の攻撃直後の間を見逃さなかった。今度は後ろ側に回り込み、ジャンプしてナメクジの化物の背後をついた。


 「これで決まりだー!」


 大上段に剣を構えた。しかし、ナメクジの化物は首を180度回転させ真後ろを向いた。


 「なんだと!」


 今度は口から炎を吐いた!


 「キャーー!」


 アレンはまともに炎をくらった、かに見えたが、


 「残念、前だよ」


 アレンはナメクジの化物の攻撃を読んでいた。ナメクジの化物はその声で首を前に戻したが、既にアレンの剣は振り下ろされていた。


 「グエエーー」


 斬られたナメクジの化物の身体から黄色い液体が飛び散った。 


 ドシーーーン


 ナメクジの化物は倒れ、絶命した。



 アレンは剣を収め、壁際にいる女の子に近づいた。


 「俺を魔法で助けてくれたんだろ」


 「あなたの場合、強いのか弱いのか、よくわからないわね」


 「えっ?」


 そう言うと女の子は歩き出した。


 「おい、どこへ行くんだよ」


 「どこって、ここを出るに決まってるじゃない」


 「ちょっと待ってくれよ」


 「着いてこないでよ」


 「俺もここを出でて、ピタの村に行かなきゃなんねえんだ」


 女の子は足を止めた。


 「ピタの村に何の用?」


 「話せば長くなるから、とにかく出口に案内してくれよ」


 女の子はしばらく考えた。


 「ま、いいわ。一応命の恩人だし。わたしはサリヤよ。ピタの村のサリヤ」


 「えっ、ピタの村?」




 アレンとサリヤは洞窟を抜け、山を降りてピタの村へ向かった。

 アレンはウォルタ王の依頼でドラゴンオーブを探していることをサリヤに話した。

 

 「ピタの村でドラゴンオーブのことを聞きたいんだ」


 サリヤは無言だった。


(なんか気が強くて、無愛想な子だな・・・)


 二人は会話しないまま歩き続け、程なくピタの村に到着した。

 村ではサリヤがいなくなったということで、ちょっとした騒ぎになっていた。


 「あっ、帰ってきた!ステラ、サリヤが帰ってきたよ」


 その声を聞き、ある家から中年の女性が飛び出してきた。


 「サリヤ!どこに行ってたんだい!」


 ステラと呼ばれていた中年の女性は、サリヤを見るなり怒っている様子だったが、サリヤを強く抱きしめていた。


 「ごめんなさい、おばあちゃん」


 「ゴホ、ゴホ」


 ステラは咳き込んだ。


 「おばあちゃん!」


 「大丈夫、ちょっと無理して咳が出ただけだよ」


 ステラは、サリヤが持っている花が咲いた草が入っている籠を見た。


 「お前、薬草を取りに山へ行ったね」


 「今逃すと、また一年先になるって教えられて・・・」


 「最近は魔物が出るようになったからダメだって、あれほど言ったのに・・・」


 サリヤは返す言葉がなかった。ステラは、ふとサリヤの横にいる少年に気がついた。


 「ん、この子は?」


 「名前はアレン、あたしが洞窟で魔物に襲われている時に助けられたの」


 「魔物に襲われた!」




 アレンはサリヤの家に呼ばれていた。サリヤはステラにこってり絞られたのは言うまでもない。


 「わたしが最近病気がちでね。あの子はそのための薬草を取りに行ったんだよ」


 アレンの前に湯気が上がったお茶が出された。


 「でも、あんたはどうして洞窟にいたんだい?」


 「ウォルタの城下町から、ここに来るためにあの洞窟を通ったんだよ」


 「そうかい、街道は今通れないらしいからね」

 

 アレンはこれまで殆ど女性と接したことがなかったからか、年配の女性と面と向かって会話することに緊張していた。


 「で、この村には何をしに来たんだい?」


 ステラは自分のカップにお茶を注いだ。


 「探しているんだよ、ドラゴンオーブってやつを」


 ガシャーン


 ステラの手からカップが落ちた。カップは床に衝突し砕けた。


 「おい、大丈夫か」


 カップが割れた音を聞きつけて、サリヤが部屋に飛び込んできた。


 「どうしたの!」


 ステラはアレンを見つめたまま硬直していた。サリヤは床で砕けているカップを見て、すぐに水につけた布を用意してステラの足にあてた。その冷たさでステラは我に返った。


 「大丈夫?おばあちゃん」


 「いっ、今、なんて言った・・・」


 「えっ、俺?」


 ステラは立ち上がり、アレンの目の前まで来た。ステラは目を見開いたまま、何かに驚いた顔だった。


 「ドラゴンオーブを探している、って言ったけど、何かまずかった?」


 「ドラゴンオーブ・・・」


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