14 巨大魔物現る
アレンは洞窟を進んだ。中は結構広く大人3人くらいは並んで歩けるくらいの空間が真っ直ぐ伸びていた。後ろを振り向くと、洞窟の入り口はもう小さくなっていた。進むに連れて暗くなってきた。
「そうか、洞窟に入るには明かりが必要だ・・・」
今頃それに気付くのもどうかしていたが、一旦戻って町で松明を買うか迷った。しかし、町に行って戻ってくる時間のロスが嫌だった。アレンは構わず進んだ。やがて日の光が届かなくなり、微かに見えていた洞窟の内部も完全に見えなくなった。前に何があるか全く見えない。アレンの足が止まった。
「くそ、やっぱ戻るしかないか・・・」
その時、洞窟の壁につけていた手がほんのり明るくなった。
「ん?」
その明かりは連鎖的に繋がり、洞窟の内部を微かに照らしだした。光が全く無かったので、その明かりでも洞窟内部が見えてきた。
目を近づけてよく見ると、苔のようなものが光っていた。
「人が来たことに反応したのか・・・」
苔は警戒信号を出すために発光していた。結果的にそれが灯りとなり、洞窟内部を照らすことになった。
「助かったぜ」
洞窟内部は、温度はそれほどではないが湿度が高かった。ジャリ、ジャリと石を踏む音が響いていた。アレンは壁に手をつけながら歩いていた。
やがて道が分かれるところに来た。
「右と左か・・・どっちなんだろ・・・」
アレンは石を何個か積み上げ、左に進んだという目印を残した。そこからは進む程に道は狭く低くなり、アレンがぎりぎり通れるくらいの大きさになってきた。
「くそ、さっきのところで間違えたか・・・」
もう立って進むことはできず、アレンは屈み込んで赤ちゃんのように這いながら進んだ。
「なんの鍛錬だよ、これは」
そのとき、微風がアレンの頬をかすめた。
「おっ、風だ、風が吹いてきた!」
顔を上げると、アレンの目線の先に日の光が洞窟内に差し込むのが見えてきた。
「おお!出口だ!」
洞窟はまた広がり始め、立って歩けるようになってきた。出口は入り口程ではないが、大人一人が入れるくらいの大きさがあった。
洞窟を出た瞬間、アレンの周りは真っ白になり景色が見えなくなった。
「目が痛てえ・・・」
アレンは腕で目を庇い光線を遮った。
しばらくして、目の痛みは治まった。太陽は眩しく強烈な日の光を放っていた。
「外ってこんなに明るかったんだな」
ようやく景色が見えてきた。アレンの立っているところは山の中腹くらいで、遥か遠くに集落が見えた。
「あれか、あれがピタの村だな」
アレンは、うーっと背伸びをした。
「結局魔物どころか、ねずみ一匹も出やしない。あの男、嘘つきか」
その時、後ろから微かに女の子の声が聞こえたような気がした。
アレンは振り返った。しかし、誰もいない。周りに人の気配を探したが何も感じなかった。
しばらく集中していたが、やはり何も聞こえない。
(気のせいか・・・)
アレンは気を取り直し、集落に向けて歩き出したが何かに引っ張られた。後ろを向くと、山の下から伸びてきている高い木の枝に、背中の剣の柄が引っかかっていた。
「もう、なんだよ」
アレンは剣帯のベルトを外し、引っかかっている木の枝を取り除いた。
(来ないで!)
微かだが、今度ははっきり聞こえた。
アレンは素早く剣を背負い、洞窟の中に入った。
「おい!誰かいるのか!」
返事はなかった。アレンはさっきの分かれ道のとこまで戻ってきた。
「キャー」
「こっちか!」
アレンは分かれ道の進んでいない方に入っていった。
「おーい、どこだ!返事をしてくれ!」
「あ、ここよ!助けて!」
岩壁の向こう側から声は聞こえた。アレンは岩を叩き、叫んだ。
「おい、大丈夫か!」
返事は無かった。
「くそ、この岩の壁さえ無かったら!」
ふと足元を見ると光が漏れていた。アレンは腹這いになり、光が漏れている岩の隙間から中を見た。
「でっ、でやがった!」
それは頭に二本の触覚を持つ巨大なナメクジのような魔物だった。その魔物の先には、後退りする女の子がいた。手には竹で編んだような籠をもっていた。
アレンは岩の隙間から中に入ろうとしたが、狭くて身体がつかえてしまい、なかなか通れない。
「キャ!」
女の子は石に躓き転んでしまった。籠が手から離れ、中に入れてあった花が咲いた草が落ちた。
巨大なナメクジの化物は大きな口を開けた。口からドロドロとした何かが垂れた。
その時、女の子はアレンが岩の隙間から上半身をだしているのに気がついた。
「たっ、助けて!」
「クソ!なんでこんなに狭いんだよー!」
アレンは力任せに身体を中に入れた。身体の周りの岩が砕け、転がりながらアレンは中に入れた。ナメクジの化物は大きな口を女の子に近づけた!人間をひと飲みできる大きな口。
「キャー」
女の子は両手で頭を抱えた。
(ダメだ、ここからじゃもう間に合わない!)




