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激流の中で  作者: 清水京太郎
第2章 北へ
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11 黒い影

 「あいつは俺の召喚魔法を見て、棒立ちになってたよ」


 開けた窓から、少し湿った風が吹いてきた。


 「戦いの最中に呑気な奴ですじゃ。それでは命がいくつあっても足りませんぞ」


 「その姿を見て思ったよ。こいつは強いが、今まで鍛錬しかしてこなかったんだろうってね、」


 「それで実戦経験がない、と」


 「無いというのは極端かも知れないが、全然足りてないことは確かだろうな」


 「戦場で棒立ちなんぞ、あり得ないことじゃ」


 「剣を使う奴が魔法も使う、ということが奴の頭にはきっと無かったんだよ」


 「どのようなことも想定しておく、これは戦場の基本です」


 夜空を見上げてたハザードの顔に、ポツポツと雨が降ってきた。


 「じい、やばいぞ」


 「どうされましたかな」


 「明日は嵐かも」


 「なんと!」


 ハザードは窓を閉め、カーテンを閉じた。

 

 「じゃ、みんなでメシ食いにいこう」



 ハザード達は宿屋の一階にあるテーブルへ向かった。

 いくつかあるテーブルで、明日の船に乗るであろう宿泊客が食事していた。

 その中で、商人らしき男が二人テーブル越しに会話していた。

 商人達はこういう場での情報交換を怠らないものだ。


 「武闘大会で優勝した奴が、ついに城下町に現れたらしい、」


 「うへー、本当か。そりゃ何か悪いことの前ぶれじゃないのか?」


 「そういや、最近各地で魔物の数が増えてるって話だ」


 「あ、それでか。北へ行く道が通れなくなったのは」


 「ああ、きっとそうだ。そうなると北へ行くには船しかないぞ」


 「船賃も急に値上げされたし、踏んだり蹴ったりだな」


 ハザード達は二人から少し離れた場所で食事していたが、聞きたくなくても聞こえるくらい商人の声は大きかった。


 「ただで情報教えてくれてるよ、ありがたいことだ」


 「それは皮肉ですかな?」


 「本心だよ、じい。俺達も魔物には気を付けないとね、」


 ハザードは、楽しそうだった。


 「逆に出てきてほしいのではないですかな?若」


 「何言ってる、魔物って見た目怖いじゃん。だから僕、怖気づいちゃう」


 (お茶目な若も素敵です・・・)


 ハザードは急に悪寒が走った。


 (なにか、今とても嫌な感じがしたが、気のせいか・・・)



 3人は食事を終え部屋戻り、明日も早いので寝ることにした。

 灯りを消した後、ハザードはアレンの背後に現れた黒い影のことを考えていた。


 (そうは言ったものの、あの気配は本当に黒龍なんだろうか・・・

  邪悪な気配だったが・・・しかし、何故あのタイミングで現れた?

  あれじゃ、まるであいつを守っているようじゃないか・・・)


 ハザードはため息をついた。


 「若、眠れないのですか?」


 「ヤンブル、」


 「は、」


 「俺が心配か?」


 「いえ・・・ただ若がため息をつかれるなど、珍しいことでしたので」


 「俺を心配するなど、俺を信じていない証拠だぞ」


 「大変申し訳ございませんでした」


 「お前は俺を守るのが仕事だ、ヤンブル。なにがあっても俺を守れ、いいな」


 「は、この命に代えてもお守り致します」


 「よし、じゃもう寝ろ。これは命令だ」


 「かしこまりました!このヤンブル、命に代えて眠ります!」


 「・・・」


 ハザードは、またため息が出そうになったが我慢した。


 (アレン・・・君は黒龍と何か関係があるのか・・・

  ま、それも調べていけば分かることだがな)


 ハザードそっと目を閉じた。


 (まさか、あいつが黒龍ってことは・・・ないよな・・・)


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