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激流の中で  作者: 清水京太郎
第2章 北へ
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09 消えたエルダー

 「で、どこにあるんだ、そのドラゴンオーブとやらは」


 「それを探すのが貴様の仕事だ」


 (大体の見当もねえのかよ)


 「もういいか、私は忙しいのでね」


 そう言って、オッドはソファーから立ち上がった。


 「お前ら、ドラゴンオーブで何をしようってんだ」


 「妙な詮索はしない方が身のためだぞ、小僧」


 それ以上聞くなというオッドの威圧的な目に、はい、はい、わかりましたよ、という感じになった。オッドは扉から出て行こうとしたが、


 「そうそう、ひとつ言い忘れた。ドラゴンオーブの探索は期限は今より三年だ」


 「三年?次の武闘大会までってことか」


 「そうだ」


 「三年で見つけられなかったらどうなる」


 「別にどうもならんよ」


 オッドはそう言い残して、部屋から出て行った。


 (表向きにはな・・・フフフ、)




 アレンは金の箱をどうにか、荷物の中に押し込んだ。


 「別にどうもならない?嘘こきやがって。お前ら首洗って待っとけよ。次俺がここに来るときは、お前らの最後だ」


 アレンは捨て台詞を残して部屋を出た。




 城を出てアレンは宿泊していた宿屋を訪ねた。宿屋の扉を開けると、主が従業員と掃除をしている最中だった。


 「おや、あんた無事戻ってこれたのか」


 「おやっさん世話になったな。俺は村に帰るよ」


 「そうかい、またいつでも泊りにこいよ」


 「今度はちっとばかし長い旅に出ることになるから、来れるとしてもだいぶ先だな」


 「へー、旅か。いいね、俺もどこかへ行きたいよ」


 宿屋の主は訪ねてきたアレンにゆっくり話しでもと、お茶をだした。長居する気は無かったが、折角なのでアレンは荷物を降ろして椅子に座った。


 「ん?なんか角ばったものでも入っているのか?」


 アレンの荷物は木の箱を無理やり入れたので、変な形になっていた。


 「ああ、これは武闘大会でもらったんだよ」


 「へー、優勝でもないのに何かくれるってのかー。豪気だねー、だから毎回参加者がいるんだ」


 「えっ、優勝したけど、」


 宿屋の主はキョトンとした。優勝した?本当かと何度も聞いてきた。


 「そんなに優勝が珍しいのか?」


 「珍しいっていうか、この町で大会の優勝者を見た人は今まで誰もいないよ」


 おかしいとアレンは思った。城は城壁に囲まれて、城の背後は大きな山になっていた。城への出入はあの門ひとつしかない。ということは、街道に出るにはこの城下町を通るしかなかった。これだけの人がいる中で目につかない訳がない。もちろん優勝者が黙っていれば分からないが、大会で優勝し賞品ももらって気分が高揚している中で、誰も何も言わないというのは不自然だと思えた。


 (まさか依頼を受けても殺してたってことか?・・・)


 宿の主はアレンの耳に手をあて、小声で囁いた。


 (なので武闘大会は「死の大会」ともっぱらの噂だ)


 (・・・)


 「あんたが俺の知る限り初めてだよ、優勝して戻ってきたのは」


 (依頼を受けても殺すなんて、それじゃ大会って何なんだよ・・・まさか腕の立つ奴を見つけて片っ端から殺すための大会か?・・・じゃ、どうして俺は生かされたんだ?)


 アレンはいろいろ考えてみたが、どれもしっくりこないものばかりだった。


 (ま、いっか。考えても分からんものはしょうがない)


 「どころでさ、ドラゴンオーブって知ってる?」


 「ドラゴンオーブ?聞いたことないなー。お前しってるか?」


 宿屋の主は掃除をしている従業員に尋ねた。従業員は首を横に振った。だろうなー、という顔で宿屋の主はお茶を飲んだ。


 「そのドラゴンオーブってはどんなものなんだ?町の連中にも聞いてみようか?」


 「いや、知らないならいいんだ。忘れてくれ」




 アレンは宿屋を後にしてフィニス村へ向かった。このまま一人でドラゴンオーブを探すより、村に戻ってエルダーと一緒に探索の旅に出る、それがアレンの思い描いたシナリオだった。


 「じっちゃん喜ぶかな金の剣。売ればきっといい金になること間違いないぜ」


 帰り道というのは行く時よりも早く感じるというのは世の常だった。アレンは大きな樫の木が立つ丘に立っていた。


 「ふー、やっと帰ってきたぜ。ちょっとの間だったけど、なんか久しぶりに感じるなー」


 「ああ、アレンだ!みんな、アレンが帰ってきた!」


 樫の木の丘から家に行くまでの道で村の子供達に取り囲まれた。


 「アレン!」


 「なんだよ」


 「帰って来なくてよかったのに!」


 「なんかヒドイぞ」 


 「おまえ、城で死んだんじゃなかったのか?」


 「勝手に殺すな」


 「ちがう!こいつは幽霊だ!みんな逃げろ!」


 わーっ、という声とともに子供らはどこかへ走って行った。


 「ったく、元気しかない奴らだ」



 アレンは家の中に入った。だが、そこにエルダーの姿は無かった。


 「また、どこか散歩中ですか」


 アレンはエルダーが行きそうな場所をいろいろと探してみた。しかし、エルダーはいなかった。


 「おかしいなー、いつもこの辺にいるはずなんだけど・・・」


 「おっ、アレン帰ってきたのか」


 アレンは偶然村長に出会った。


 「あっ村長、ちょうどいいところで。じっちゃん知らない?」


 「エルダーなら、おそらく旅に出たよ」




 「えっ?」


 

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