プロローグ
預言者は言った・・・
~竜宝を求めし者現われたとき、我が一族の立つときなり。
光りの聖剣を携えし者は、全ての封印を解き、
おおいなる安息をもたらすであろう~
◇◇◇
嵐の夜だった・・・
見上げた窓には雷鳴が轟き、青白い光線が眩い光を放ったのち、轟音が城全体を揺らすように響き渡った。
王は玉座に長い時間座っていた。
落ち着いているように見えるが、かなり苛立っていた。
数えきれない程のため息をついたとき、足早に向かってくる足音が聞こえてきた。
「も、申し上げます」
「生まれたか!」
「はっ、お、王子にございます・・・」
「なに、王子!でかしたぞ、アディア!」
「そっ、それが・・・」
「む? それが? それがどうした、大臣」
大臣は厳しい顔をしたまま、言葉を出さなかった。
王は玉座から立ち上がり、跪く大臣の前に立った。
「どうしたのだ!」
厳しい王の声が暗い城内を抑え込んだ。
しばらくの沈黙のあと、急に大臣は土下座した。そして、そのまま動こうとはしなかった。
「もうよい!世がじきじきに見てくれるわ!」
「お、お待ちください!」
大臣は、王の足を掴んだ。
「じゃまだ!」
王は、掴まれた足で大臣の背中を踏みつけた。
「があはぁ」
踏みつけられた勢いで、大臣は顔を床に叩きつけた。
王は踏みつけたままで、大臣を睨みつけた。
「貴様、この王たる世の足を掴むとは。覚悟は出来ておるのだろうな」
王は、近衛兵に目で合図を送った。
「お・・・お待ちください・・・」
大臣の言葉を聞きもせず、王は玉座の間を出て行った。
直後、大臣の絶命の悲鳴が、雷鳴の中に消えた・・・
◇◇◇
王妃の出産のために用意された部屋の扉を、王は乱暴に開けた。
扉の前には護衛がいたが、現れた王の姿を見てあわてた様子を見せた。
王妃を囲んでいた医者と思われる者達も、侵入者が王だと分かると、すぐに王妃のベットから離れた。
部屋には大きな声で泣いている生まれたばかりの赤子がいた。
王は近寄った。
「なるほど、こういうことであったか」
王妃は横になっていたが、王の声を聴き起き上がろうとした。
それを見て、後ろに控えていた侍女が走り寄り、王妃の背中を急いで支えた。
出産直後で体力を消耗した様子で、顔は青白く髪が乱れていた。
「お、お願いでございます、ウォルタ王。どうか、どうかご慈悲を・・・」
うつむいた白い頬に涙が流れた。
王は、赤子を睨んだまま口を開けた。
「ならぬ」
その答えは、王妃にはわかっていた。
しかし、実際に聞いてしまうと、まるで刃物を喉元に突き付けられたようで、
狼狽えずにはいられなかった。
「そこを・・・なんとか・・・お願いでございます・・・」
「ならぬ!くどいぞ、アディア!」
王は王妃のベッドに近寄り、うつむき力の抜けた覇気のない顔を怪訝そうに見た。
「そなたもこの国の王妃。まさか知らぬ分けでもあるまい」
「ぞ、存じております・・・しかし、王のお力で!」
「ばかを申せ!」
王は自分の顔を、王妃の目の前に突き出した。
そして、小さく囁いた。
「こうなってしまった以上、覚悟を決めるのだ」
その目、冷酷な眼差し・・・
何を言っても無駄だと思った瞬間、王妃は力なくうなだれた。
自分ではどうすることも出来ないという絶望感、そして泣くことしか出来ない自分が腹立たしかった。
「わたしは・・・私はどうなっても構いません・・・どうかご慈悲を・・・」
消え入るような小さな声のつぶやきにも反応せず、王はくるりと王妃に背を向けた。
「明朝決行する」
「お願いでございます! 王さまーーーーー!!」
そして、16年の時が流れた・・・




