樹海東部で〜ビオラの助言で拠点改良〜
「お兄さん、この近くの木は切ったほうがいいよ。見通しも良くなるから」
「なるほど、木材にしてなにか作ることもできるし、そうするか」
俺は今ビオラの助言を受けながら拠点周りの改良をしている。ビオラ…すなわち「バエル」は、知恵を授けてくれる悪魔だ。しかも頭が柔らかく、こいつの発想力には舌を巻いている。俺一人では気づかなかった事も思い付くようになった。例えば―
「開けてると狙われやすいし、木は加工して棘付きの柵にするか」
「いいと思うよ。僕も洞窟を掘って暗視が使えるようになったから」
「洞窟掘ったら鉱石とか手に入るよ」と言われて始めた採掘で、新しくスキル「暗視」の獲得に成功したのだ。ただ肝心の鉱石は見つからず、石材が手に入った事と、拠点が広がった以外は成果が出ておらず、代わりに拠点整備と改良に取りかかったのである。
「服まで作れるのはまじで助かる」
「進化したとき大慌てだったもんね…」
ビオラが進化した時、完全に裸だったからだ。
母さんが服飾本を荷物に入れてくれたおかげで助かった。まあ作れたのは、ビオラのスキル「糸の支配者」のおかげだ。(実は俺用の新しい服も作ってくれた。すごく着心地がいい)このスキルは糸からなら色々な物を作り出せるスキル。これは服などを作るだけではなく―
ーーーーーー
「そーれー!」
網にかかった魚が陸揚げされる。どこ製の網かは、きっと話の流れから分かるだろう。
「よし。―雷電弾!」
俺は雷魔法で仕留める。このピラニア、一人で戦ったら結構強かったから二人で戦ったのだが、二回目にこの方法を思いつき、以降こうやって狩りをしている。ピラニアだったら網ぐらい噛み切れるのでは?と思ったそこの人、この網、剛撃を使っても俺では壊せなかった。恐ろしや恐ろしや。だが―
「今日も大漁だね、シルマ兄さん!」
この笑顔を見れば、怖がる必要はないと思えてくる。(ちなみに、ビオラは俺をお兄さんかシルマ兄さんと呼んでいる。気分で変えているようだ)
「お兄さん、他にも仲間を増やすの?」
「まあな。あいつらに復讐するには、俺自身の力も十分ではないし、俺をサポートするのはお前だけでは限界があると思う。…いや、お前だけに全て任せるのは俺の気が引ける」
「なるほど。お兄さんの魅力をきちんと分かってくれる人じゃないとね!」
「…そうか」
俺は強くならなければならない。そのためには、他にも仲間を作らなくてはならない。もちろんこいつも必要だ。まあでも取り敢えず、ビオラに対抗できる程度の力、そしてゆくゆくは苦戦せずに勝てる程の力を手に入れるのが、当面の目標だ。
―そして、1ヶ月が過ぎた。
余談
シルマ「俺の魅力ってなんだ?」
ビオラ「圧倒的強さ、綺羅びやかで凛々しい姿、そして何より優しい事!」
シルマ「…おう、そうか(照)」