大きなメロンがすごかった。個人の感想です。
「3番、ちょっとでてこい。そんな冗談はいいから、リリとララに早くでるように言え」
3番はテントから、慌てて飛び出し剣を握りすぐに戻ろうとするので、手を握り急いで止める。
「ご主人様! 急いでリリとララを助けないと!」
「そんな物騒な物をしまえ、5番ちょっと見てこい」
「私ですか? は……はいっ」
5番が恐るおそるテントの中に入ると、すぐに顔をだした。
「ドラゴンなんていませんよ。リリとララが今着替えてますので、少しお待ちください」
「そんなわけない!」
5番の手を離すと、急いでテントの中に戻るが、不思議そうな顔をして戻ってきた。
「どうした? ドラゴンいたか?」
「いえ、いませんでした。でもたしかに大きなドラゴンが……」
「悪かったな。色々3番は頼れるから仕事を任せすぎたようだ。少し休め」
「疲れてはいないと……疲れているんですかね?」
「疲れは目に見えないからな」
次会ったら、あの二匹お説教だ。
できる限り、リリとララの力がバレないようにしているのに。
巻き込むとしたら0番だけだ。
それ以外にはできる限り言わない方がいいだろう。
「ご主人様、お風呂気持ちよかった。メロンが二つもありました」
「ご主人様、お風呂楽しかった。大きなメロンすごかった」
「それは良かったな。髪の毛乾かすから二人とも座って」
俺はリリとララの髪の毛も乾かしたあと、二人の爪も切ってやり、磨いてからテントを片付ける。
「ご主人様! これドラゴンの足跡じゃないですか? ほら、これ!」
5番が3番の肩を優しく叩く。良くやった5番。
そのまま3番に夢だと思わせてやってくれ。
「3番はなんでもできると思っていたけど、怖いものもあるんですね。今日は早めに休みましょう」
「5番まで、リリ、ララお風呂にドラゴンが……いや、もしドラゴンがいたら二人が何も言わないわけがないな」
俺がテントを片付け、食事をするため戻ったが、3番は何度も河原を確認していた。
本当に3番には申し訳ないことをした。
いつか本当のことを伝えられるといいけど。
俺たちはそのまま夕食を食べるため、食事処へ行くことにした。
席に案内され、俺が席につくが、みんなは立ったまま待っている。
「お前ら、ほら席について好きな物食べていいぞ」
「ご主人様、店で奴隷と一緒に食事をとるのは……」
すっかりルールを忘れていたが、奴隷商は普通奴隷と一緒に食事をとらない。
奴隷は物と一緒なので、基本的には外で食事や寝かせるのが普通なのだ。
こんなルール俺にしたら、めんどくさいだけだ。
「いいよ。座れ。命令だ」
彼女たちも席へとつくがメニュー表は俺のところだけにしか持ってこなかった。
「悪い、彼女たちにもメニュー表を」
「申し訳ありません。奴隷の方はお客様ではありませんので」
「そうか、わかった。じゃあ奴隷から解放すればいいんだな」
「ご主人様、それは絶対にやめてください」
「なんで?」
「ご主人様のお気持ちはわかりますが、私たちはこの首輪があることで守られてもいます。特にリリとララはこの首輪があることで、ご主人様の庇護にいる証になります」
この国で奴隷の価値が低いのは、隙あれば奴隷として狩っていく人間がいるからだ。
「わかった。俺がいつか安心して生活できるようにする」
「楽しみにしています」
3番は嬉しそうに俺に微笑みかけてきてくれた。
「店主、俺が頼む分にはいいんだろ?」
「もちろんです。お客様は神様ですから」
「それじゃあ、柔らか肉のシチュー5人分とバケット5人分、それにとれたてグリーンサラダも。あとオレンジュースも5人分を」
「ありがとうございます。少々お待ちください」
食事を待っている間に周りの雑談に耳を傾ける。
店内では俺たちのやり取りを気にしていた奴もいたが、別にわざわざ絡んできたりはしない。
「マリュス公爵の一人娘が逃げたらしいな」
「マリュス公爵領地で火山が噴火したり散々だな」
「聞いたか、剣聖が死んだらしいぞ。次の剣聖は誰がなるんだろうな」
「巨大な狼が東の森で目撃されたらしいぞ」
「今度デートしようよ」
「顔が無理」
「あの上司の飲み物に…てん入れてやるんだ」
「おい、今度戦争始まるらしいぞ」
「また奴隷商たちが儲かるな」
酒場で聞いていると面白そうな情報から、どうでもいい情報まで色々なものがある。
一見無駄に聞こえる情報でも、知っておくことで変わることがある。
「ご主人様……ご主人様……」
「悪い、少しボケッーとしてた」
「あのできましたら、私の出身のブラーシュ村の情報が何かあるか店主に聞いてもらってもいいでしょうか?」
「そうだな。料理を食べ終わったら聞いてみよう。でも、まずはお腹を満たしてからだな」
料理はあっという間に運ばれてきた。
しかもご丁寧に全部俺の目の前に。
今さらこんなことでは怒ったりはしない。
全員に食事を配り、みんなで食事をする。
お店で食事をするのが緊張しているのか、会話は全然盛り上がらなかった。
店員の接客態度は良くないが……味はまぁまぁだった。
「店主」
「はい、なんでしょう」
「明日、この近くにあるブラージュの村に行きたいんだけど」
「ブラージュの村ですか。あそこは……ここだけの話ですが結構危ない人間が出入りしているって話ですよ」
「危ない人間?」
「ガラの悪い人間が出入りしているってことです。前までは極貧の慎ましい村でしたが最近は羽振りが良くなって怪しい噂も多いです。あとあそこは……奴隷商を嫌っているって話ですので、お客様はあまりおススメできないですね」
「奴隷商はどこでも嫌われているだろ?」
「あそこの村に泊まった奴隷商が戻ってこないって噂があったんですよ。まぁ奴隷商なんてどこでも嫌われていますから正確にはわかりませんが」
「ありがとう。助かったよ。会計してくれ」
「ご主人様……危ないならやっぱりやめておきましょうか」
5番はここまで来て、怖気づいてしまったのか急に弱気なことをいいだした。
自分がでていってから変わってしまった故郷を目にするのは怖い物もあるだろう。
「大丈夫だよ。こんなところで俺たちは死にはしないから。それよりも妹に会ったらちゃんとなんていうか考えておけよ」
「本当にありがとうございます」
俺たちはその夜久しぶりにゆっくりとベットで眠った。
明日5番の村に行くことに不安もあるが、考えても仕方がないことは考えないのが一番だ。




