川沿いにお風呂を作ってゆっくりまったりお風呂の時間
翌日、俺たちは5番の実家がある近隣の村までやって来た。
ここから無理をすれば夜にはつけるということだったが、もし廃村などになっていた場合も考えて手前の村で一泊することにした。
幸いにも、かなりボロボロだったが宿と食事処があった。
「すまない。一泊したいんだが」
「はい。ご主人様は素泊まりで一泊2000ロンです。奴隷の方は納屋で良ければ無料で泊まれます」
「いや、彼女たちにも部屋を与えたいんだが……」
「奴隷を……ですか? 少々お待ちください」
そういうと受付の女性が店の奥に消えていった。
「オーナー奴隷を部屋に泊めたいとかっていう変なの来てますけど、どうしましょう」
「はぁ? 奴隷を部屋に? なんでそんな無駄金使うんだ? まぁいいだろ。一人3000ロンもとっとけ。もちろん食事は別な」
奥での会話が丸聞こえだった。
せめて会話をもう少し小さな声でしてくれればいいのに……。
「ご主人様、私たちは外で十分ですよ。こんなところで無駄なお金を使う必要はありません」
「そうです。納屋でも屋根があるだけマシですから」
奴隷になってから、いったいどれだけ過酷な状況だったのだろう。
「お前たちの気持ちはよくわかったよ。ありがとうな」
そうは言われても、わざわざ外で寝かせるつもりはない。
もし外で寝るなら全員一緒だ。
「おまたせしました。ちょっと今お部屋がなくて、全員一緒で15000ロン、食事抜きなら泊まるころができるんですけど、いかがでしょうか?」
「全員分のベットはあるのか?」
「えっ? あっそれは大丈夫です」
「じゃあそれで頼む」
「ご主人様、私たちは……」
「俺の命令を聞け」
「はい」
やっぱりこういう時こそ奴隷商人としての力を使わないとな。
普段あまり命令することなども少ないので、ちょっと気分がいい。
自分が偉くなったような錯覚に陥るが、気をつけないといけない。
「それでは、お部屋はその奥の突き当りになります。お食事などされる場合には、横の建物が居酒屋になっておりますので」
「わかった。ありがとう。よし、とりあえず部屋に行こう」
言われた場所の部屋は意外と小奇麗にされていた。
ベット数は全部で六台あり、全員が眠ることができるようになっている。
「ご主人様、私たちのために申し訳ありません」
「気にするな。それよりも5番、明日両親に会うなら少しきれいにする必要があるな」
「いえいえ、ここまで連れて来てもらっただけで十分ですよ」
5番はなぜか顔を赤らめながら、両手を前にして拒否をしてくる。
「ちょっと手を貸せ」
彼女の手は黒く汚れており、爪は所々割れている。
「えっ?」
汚れはお風呂で落とせばいいとしても、女の子なのだから少しはきれいにしておいてやろう。
「ちょっと爪が伸びすぎてるからな。お風呂からでたら爪を切るぞ。みんなもな」
またすぐに汚れてしまうが、それでも先端が割れたままよりはいいだろう。
あとは……風呂屋などがあっても、奴隷をいれるのはすごく嫌がられる。
窓から外を眺めると、少し離れたところに川が流れているのが見えた。
あの辺りなら……洗濯するのにもちょうどいいかもしれない。
「よし、ちょっと川に行って洗濯と少し身体をキレイにしよう」
「えっ……それは……ついに今夜ご主人様と……」
「3番は留守番しているか?」
「いえ、喜んでお供します」
本当に子供がいるんだから冗談でも少し自粛をしてもらいたいものだ。
俺はついでに簡易のテントを持って行く。
「ご主人様、それなにに使うの?」
「ご主人様、ここで野営?」
「いや、違うよ。まぁ見てて」
俺はマジックテントに魔力を込めて川沿いに円柱のテントを建てる。
このテントのいいところは大人数で寝る場所をいっきに確保できることだ。
いずれ沢山の奴隷を手に入れた時に使おうと思っていた。
さすがに、今回は人数が多すぎたせいで、不公平がでるので使わなかったが。
ただ、強風には弱いため、風の強い日には使えない難点がある。
高さ的には俺の2.5倍くらいあり、天井が高いのも気に入っている。
何よりすごいのはこのテントを二つに仕切ることができるのだ。
「ご主人様、こんなテントがあるんですね」
「あぁ、このマジックテントは便利だぞ。大きさも色々選べるしな。さて、ちょっと待ってろ」
俺はテントの中で河原の部分の石をどかし、地面に魔法で穴をあける。
この時、上手く川から穴に水が流れて川に戻るように設計するのがみそだ。
そこに温石をぼとぼとと投げ込む。
あっという間に温泉が完成だ。
あとは、テントの真ん中に敷居をつければ男女別々のお風呂が完成する。
「ご主人様……ずいぶん手馴れてますね」
「こう見えても奴隷商になる前に温泉づくりのバイトしていたからな。俺も色々やったんだよ」
「温泉づくりのバイト……いろんな仕事があるんですね」
「あぁ……まぁ俺の話はいいから、そっち側で女性陣は入ってくれ。あと、着替えてついでに服も洗っておけよ」
「お風呂なんていいんですか?」
「もちろん。ついでにこれ使え。使い方はわかるだろ?」
ついでに石鹸とタオルを渡してやる。
石鹸があるかどうかで、さっぱり感が全然違う。
「こんなの使ってもいいんですか?」
「きちんと身体きれいにしてこい」
さて、俺は一人で温泉を楽しむことにする。
最近はゆっくりお風呂を入るなんてことがなかったので、手足を伸ばして入る温泉は最高だった。
「ご主人様、お風呂どうですか?」
「気持ちいぞ。そっちはどうだ?」
「ご主人様大変です! 3番の胸が大きく腫れてます」
「ご主人様! 大きなメロンがぷかぷか浮いてます」
「これは反則だわ!」
「ちょっと!」
女性陣は仲良くはしゃいでいるようでいいことだ。
身体から汗と共に疲れが抜けていく。
気持ちいい。
ずっとキャレッジでの移動だったので、どうしても身体が凝り固まってしまう。
一枚布を挟んで女性陣が盛り上がっているのが聞こえてくるが、楽しそうでなによりだ。
「餅です」
「やわ餅です」
気持ちよすぎて、眠くなってくる。
風呂はほどほどにして、情報収集をかねて食事をしにいかなければいけない。
「俺はそろそろ上がるから、ゆっくりしていていいからな」
「私たちも上がります」
「たまにはゆっくりしていていいぞ」
俺がさっさと服を着て外に出ると、髪の毛がびしょびしょのままで服を着た3番と5番がいた。
「髪の毛を乾かしてないのか?」
「ご主人様を待たせるわけにはいきませんから」
「はぁ、二人ともそこに座れ」
二人を少し大きめの石の上に正座をし始めた。
「普通に座っていいよ」
石の上に正座とか拷問じゃないか。
「二人とも川の方へ向け」
「はい」
「わかりました」
二人の髪の毛を同時に風魔法で乾かしてやる。
3番の髪の毛はサラサラロングで、栗色でとても艶々している。
5番の方は雪色のショートだが、こちらもとても手触りがいい。
「ご主人様! 何をするんですか」
「ダメですよ!」
「奴隷商にとって奴隷は商品だからな。言うことを聞け。気持ちいいか?」
「とても気持ちいいです」
「ご主人様にこんなことをしてもらうなんて申し訳ないです」
「気にするな。風邪をひくよりはいい。それよりもリリとララは?」
「もうでると思いますが……」
しっかりと汚れが落ちると二人とも、今まで以上にかなり可愛くなった。
やっぱり身だしなみに気を付けるだけでも全然変わる。
「リリとララにそろそろでるように言ってくれ。全員の爪を整えたら、テントを片付けて食事しに行くから」
「わかりました」
3番がテントの中に入るといきなり大声をあげた。
「ご主人様、お風呂の中にドラゴンがいます!」
俺はもう聞かなかったことにした。
多分幻聴だろう。のんびりお風呂に入りすぎたようだ。