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ドラゴンたちとの酒盛り

「いやーそれにしてもこの酒は上手いな」

「本当だよ。人間はこんな美味い物ばかり飲んでいるのか」

 ドラゴンたちはすっかりできあがってしまっていた。

 まさかドラゴンがワイン二本でここまで酔わすことができるとは思わなかった。


「雷帝の一族もこういうのをくれてもいいと思うんだよ」

「風帝の一族もくれてもいいと思う」


「というか前から思っていたんだけど、お互いの一族で酒でも飲んだらいいと思わないか」

「全くその通りだ。酒でも飲んで過去の遺恨も飲み干してしまえばいいんだよな」

 ドラゴンたちはおおいに盛り上がっているが、まだ肝心のリリとララがどうして奴隷になったのか、両親は今どうしているのかを聞けてはいない。


「なんで、二人が奴隷落ちしたんですか?」

「二人が奴隷落ちしたのは、生きていると困る連中がいたからさ」

 なぜ困るというのだろう。

 雷帝の一族も風帝の一族も協力すればさらに大きな力を手に入れられると思うのだが。

 むしろ世界を手に入れることだってできる。


「リリとララが生きていたら困る? むしろ平和になっていいんじゃないんですか?」

「ご主人、逆なんだよ。生きていることでお互いの一族の懸け橋になられたら困る人間が両一族にいたのさ。その結果……二人には呪印をされ一生表にはでてこない奴隷として生きていくことになったのさ。奴隷の呪印を外すなんて奴がいるとは誰も思っていないからな」

 それは……あまりにひどすぎる話だった。

 そんなのが許されるわけはない。


「リリとララの両親は?」

「生きてはいるが、私たちでさえ近づけないどこか深い場所に幽閉されている。俺たちだってなんとか探そうとしたんだ。だけど、残念ながらあの二人の手がかりすら見つけられなかった」


 そう話した雷竜が泣きだすと、それにつられて風竜も泣き出してしまった。

 二人とも抱き合ってお互いの背中を励ますように撫でている。


 きっと本当は仲がいいのだろう。

 ただ、ちょっと素直になれないだけだ。


「お二人は本当にリリとララの両親のことが好きだったんですね」

「あぁ、めちゃくちゃ好きだぞ」


「俺も大好きだった。あの二人は俺たちのことを差別せずに普通に扱ってくれたんだ。それにいい笑顔をしていたんだ」

「本当にいい笑顔だった」


 ほぼ同時に、何かを思い出すように遠くを見つめている。

「お二人は奴隷になってからもリリとララを守り続けてくれていたんですね」

「あぁ、俺たちが二人を守るのは当たり前だからな。だけど俺らでもできないことがあった。雷帝の一族も、風帝の一族も俺らの弱点を知り尽くしていたからな。リリとララにあっという間に呪印を刻まれてしまったんだ」

「助けるのは両親の願いでもあったわけだし。なにより俺たちは二人の可愛さにメロメロだったんだ」


 いつの間にか、リリとララはうつらうつらと眠り始めてしまっていた。

 一度二人を抱え、焚火の近くに寝かせる。


 昼間は暖かいが夜はまだ少し肌寒い。

 

 俺は戻ると三本目のワインをあけ、二人に勧める。


「お二人が彼女たちを守ってくれてありがとうございました」

「いや、俺たちは彼女たちにだいぶ辛い選択をさせてしまった。本来なら今頃は家族団欒をしながら幸せになっていたはずなのに。俺たちがつまらない意地をはって人間たちを巻き込んだがために……」


「そんなことはありませんよ。二人はとてもいい子に育っています。それは両親と離れてもお二人がしっかりサポートしてきたからだと思いますよ」


「ご主人、お前いい奴だな」

「なんか心が救われた気分だよ」


 ドラゴンたちはもっと怖いかと思ったが、そうでもなかった。

 なんて言えばいいのだろうか。

 面倒見のいい祖父母って感じだ。


「ご主人、あの子たちは本当に苦労をしてきている。もちろん人間のルールがあるのは知っているが幸せにしてやってくれ」

「俺からも頼む。彼女たちを幸せにできるならなんでもするからな」


 段々と朝日があがってくる。

「そろそろ、俺たちは消えなきゃいけない時間になってきた」

「俺たちも最大限あの子たちをサポートするつもりだが、よろしく頼むぞ」

「あぁもちろんだ」


「また様子を見に来るから、その時にはワインをまた頼むぞ」

「わかった。準備しておく」

「あと……これは俺たちからのお礼だ……」


 朝日に照らされる中で、ドラゴンたちが消えていくと、そこには2枚の大きな鱗が残されていた。前衛のタンクが使う盾くらいの大きさはあるだろう。

 持ってみるとものすごく軽い。


 これなら、リリとララの装備にはちょうどいい。

 俺はそれを持って馬車の中にいれておく。


 あとで加工技術を持った人間がいれば二人用の装備にしてもらってもいい。

 きっと二人なら使いこなせるはずだ。


 あの二人をやっぱり幸せにしてやりたい。

 奴隷商人として本来ならもっと利益を追いかけなければいけないのかもしれないけど、それだけではないはずだ。


 朝日が洞窟内に差し込み、3番と5番が起きて来た。

 本来は途中で変わるはずだったが、ぐっすり眠れただろう。


 俺は二人に朝食と見張りをお願いして少し眠りにつく。

 それにしても、0番にドラゴンと話をしたと言ったら信じてくれるだろうか。

 多分、信じてくれないだろう。


 それにしても……5番位は本当に申し訳ないと思うが、リリとララの問題の方が大変だ。

 これじゃあ5番の妹を探しにいくのがおまけのように感じてしまうじゃないか。

雷竜「もう一度酒が飲みたい」

風竜「本当に……って別にお前と飲みたいわけじゃないから」

雷竜「俺だってそうだ。別にお前と飲みたいわけじゃない」


二人とも実は飲みにケーションじゃないと素直に話せないタイプだった。

★★★★★

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挿絵(By みてみん)

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