ドラゴンに酒をふるまったら性格が180度変わってしまった。
「これが妖精だっていうのか?」
どう見たって妖精ではなくドラゴンだった。
「まぁあわてんなって」
「あわてんなよ」
なんか、リリとララと同じような会話の仕方をしている。
「お前、今俺が話しかけているのに邪魔なんだよ風竜」
「あっ? 俺が今話しかけてるだろ。雷竜しばくぞ」
目の前でドラゴンたちが喧嘩をし始めた。
「喧嘩ダメ」
「仲良くして」
リリとララが注意すると2匹のドラゴンは態度を豹変させた。
「もちろんです」
「喧嘩なんかするわけないじゃないですか」
いきなり肩を組みだす二匹のドラゴンたち。
これだけのドラゴンを従えるリリとララって……今すぐ首輪を外してあげた方がいいのだろうか。とりあえず話を聞いてみるしかない。
「俺と話をしたいと聞いたんだけど、なんのようだ?」
「まぁ人間よ座れ」
「そこに座れ」
俺は言われた通りドラゴンたちの前に座る。
なにか出した方がいいだろうか。
「お前今俺が話してるだろうが」
「うるせぇやんのか?」
また同じやり取りをしているので、一度洞窟に戻って酒を持ってくる。
どうやら少しバカっぽいので怒らせなければ大丈夫だろう。
これは、俺が交流用に持ってきたワインだ。
かなりワインとしては強いが飲みやすく、相手を油断させるにはこれが一番だ。
ドラゴンように作られたわけではないで、かなり小さい。
それでもこういう相手は酔わせてしまった方が早い。
とりあえず、3本くらいずつ飲ませておけばいいだろう。
「良ければ、酒でも飲みながらやりましょう」
「なんだ、意外と気が利くじゃないか」
「どれどれ、飲んでやるか」
とりあえず一本蓋を開けてやると、ドラゴンたちは一気に飲み干した。
かなり強い酒ではあるけど、ドラゴンくらい身体が大きければ酔うことはないだろう……3本では足らないか……と思った俺が間違いだった。
ワイン一本で、ドラゴンたちはグデングデンになってしまい、横になってしまった。
「リリ、ララ妖精ってお酒弱いんだね」
「妖精さんにお酒初めて飲ませました」
「私も初めて見ました」
リリもララもビックリしているが、きっと俺のせいではない。
「ご主人、リリを頼むよ~」
「ご主人、うちのララも頼むよ~」
先ほどのまでの刺々しい感じがなくなり、非常に対応が柔らかくなった。
とりあえず、喧嘩をしなくなったので話を聞いてみようと思う。
「風竜さんと雷竜さんは、妖精ってことでいいんですか?」
「あぁ」
「あぁ」
またしても二人して返事をしてくる。
同じように揉められる面倒だなと思ったが……。
「風竜、お前が説明してやってくれ」
「いやいや、雷竜から説明してやってくれ。お前の方が説明が上手い」
「何を言ってるんだよ。風竜の方がいつもオシャレじゃないか」
「バカ言うなよ。お前みたいに素敵な鱗をしている奴はいないぞ」
今度は二人でお互いのことを褒め始めてしまった。
酔っぱらっていなければいないでめんどくさいが、酔っぱらっていてもめんどくさい。
「それじゃあ、交互に会話していくのはどうでしょうか?」
「おぉそれはいいな」
「ご主人、ナイスアイデアじゃないか」
二人はいきなりお起き上がると肩を組みあいだした。
今度は見ているだけでかなり楽しそうだ。
「それで、妖精なんですか?」
「おう、妖精だぞ。外見がドラゴンに見えるのは元々ドラゴンだったからだ。俺たちはドラゴンから妖精王に好かれたおかげで妖精へとジョブチェンジしたんだ」
まさかのドラゴンから妖精へ仕事を変えることができるらしい。
妖精最強説がでてくるんじゃないだろうか。
とは言っても……今まで妖精を見たことがないことを考えると、妖精の数自体は結構少ないのかもしれない。
「どうして、リリとララを助けているんですか?」
「俺たちは元々、こいつらの一族の守り神みたいなものだったんだ」
「雷帝と風帝の一族ってことですか?」
「ほぉー良く知ってるじゃないか。その二つの一族というか、俺たちが非常に仲が悪くて、その結果、一族も仲が悪かったんだ」
まさかの雷帝と風帝の一族の因縁の原因がここにいるなんて聞きたくなかった。
やっぱりこの子たちはあの一族たちの関係者だったのか。
どうしよう。不安でしかない。
「もしかして、リリとララの両親が結婚したおかげでお二人も仲良くなったとかですか?」
「おぉよくわかったな。俺たちはリリとララの両親には感謝しきれないほどの恩があるんだ。もし、あのままいがみあっていたら、今頃は世界を巻き込んで戦争になっていたかもしれん」
だんだんと話が物騒な方向になってきた。
でも、それならなぜ両親を助けてやれずに、二人は奴隷落ちなどしてしまったのだろう。
「リリとララの両親にあわせてあげたいと思っているんですが、二人の両親はどこにいるんですか?」
「主人よ、そんなことを考えていてくれたのか。本当にいい主人に巡り合えて……でも、残念ながらそれはできん」
「なぜ? 二人の両親はどうなったんですか?」
「二人の両親は風帝の一族と雷帝の一族にそれぞれ、引き離されてしまったんだ」
「なんで? あなたたちが仲直りしたことで一族も仲良くなったんじゃないんですか?」
ドラゴンたちは、ほぼ同時に首を横に振る。
「彼女たちの両親は一族の中でも一番力を受け継いでいたんだ。一族の中では、その両親の血を受け継いだ子供ができることを期待した人間たちがいたのも事実だった」
「現に、この二人は一族の力を受け継いでいるじゃないですか」
「あぁだけど、生まれたことで血族の力が相手に流れることを恐れてしまったんだ」
「生まれた子供をどちらが引き取るかってこと?」
「そうだ。リリとララは上手くその力を分けたように見えるが、リリには雷の力が強いというだけで、風の特性も持っている。ララはその逆で風の特性が強く雷の特性も持っているんだ」
それなのに……なぜ二人が奴隷落ちしなければいけなかったのだろうか。
俺は次のワインをあけ、ドラゴンたちに渡す。
ドラゴンたちの会話はまだまだ続く。