5番の村へ行くための会議。なんでこいつ会議に参加してるんだ?
その日の夜、無事に脇腹の治療を終え主要メンバーで話し合いを行うことにした。
今回の議題は5番の村への奴隷の買い付けだった。
ただ、5番が売られてからすでに2年が立っているとのことだった。
もしかしたら、村がなくなっている可能性もある。
「急に集まってもらって悪いが、今度5番の出身の村に奴隷の買い付けに行こうと思う。メンバーとしては3番、5番、それにリリとララと俺で行こうと思う。その間に0番には村の方を任せたい」
「えぇー私もご主人様と旅行に行きたい。絶対楽しいやつじゃん」
「5番の村は魅惑の香りという薬物が蔓延してしまった村らしい。大抵薬物が入り込むと村の治安は悪くなって、その後は生きていける人間がいなくなるか、全員が奴隷落ちになるかだろうな」
「うん。その予想だけで全然楽しそうじゃないのがわかるわ。大人しくここで待ってます」
0番はあっさりとひいてくれたが、本当に行きたかったわけではないだろう。
意外と気を使ってくれる子だ。
「ご主人様、大変申し訳ありません。一つお聞かせ頂きたいのですが今回の遠征の目的はなんでしょうか? そんな村に奴隷を買いに行くくらいなら、普通に奴隷を買った方が時間も経費も安くなると思います」
そう切り出してきたのは、元商人の57番だった。
年齢よりもだいぶ老け込んだおっさんで、奴隷になる前には世界中を旅して取引をしていたらしいが、持っていた船が難破し大損害をくらい奴隷落ちしたらしい。
「話せば長くなるが、簡単に言えば5番の妹を探しにだな」
「ご主人様、本音と建て前を使い分けてください」
0番がそう言ってくるが、わざわざ自分の奴隷の前で使い分ける必要がない。
「ご主人様、このようなことを言うのは大変心苦しいのですが、奴隷の家族を一人、一人探していくなんてことをしていては、いくらお金があっても足りませんよ。それに今回の遠征も徒労に終わる可能性があります。まずはこの場所の整備に力を入れる必要があるのではないでしょうか?」
57番は自分の言っていることが、さも正しいと言わんばかりの言い方だった。
こういう奴は下手にでると必ずつけあがるし、そもそも自分の立場をわかっていない場合が多い。
「57番の言いたいことはわかるよ。さすがに他の奴隷に買われていたりしたら、もう探すことはできない。だけど、もしまだ村にいるなら手に入れてきてもいい。5番にはそれだけの価値がある」
「こんなこと言うのは失礼ですけど、本当にそんな価値があるんですか? 狩人なんてそこら辺に沢山いる職業の一つですよ。別に5番じゃなきゃいけない理由もないですし……それに昼間の森での爆発も……」
あぁ……めんどくせぇな。
そもそもなんでこんなのを会議にいれたんだろうか。
誰だいれやがったの。
「57番いったい何が言いたいんだ?」
「だから、ご主人様には他にやることがあるんじゃないですかってことです」
「お前いつから俺にそんなこと言える立場になったんだ? お前が失敗した理由がわかったよ。お前が失敗したのは船が沈没したからじゃない。繋がりを金でしか思えてなかったからだよ。もうでていっていいぞ。あと、明日からは誰でもできるっていうならお前は狩人をやれ。大物期待しているからな」
「なっ! なんで僕がそんな低俗な仕事をしなければいけないって言うんだ。僕はこの世界の海を制覇した大商人なんだぞ」
「今はただの俺の奴隷だ。元がどれだけすごかろうが、最初から仲間を助けようとしない奴を俺は信用しない。それにこの世界に低俗な仕事なんていう名前の仕事はない」
「そんな……ご主人様いいすぎました。もう二度と歯向かいませんから」
57番は懇願するような目で俺を見てくるが、相手にしているだけ時間の無駄だ。
必要か必要じゃないかは俺が判断する。
「3番、会議の邪魔だから追い出せ」
「わかりました」
3番は剣を抜くと57番の首筋に剣を突き付け、家の中から追い出した。
きっと仕事はできたのかもしれないが、失敗から何も学んでいない奴はやがて同じ失敗を繰り返す。
「ご主人様、大丈夫ですか? あぁいう奴って絶対に後で裏切ったり問題を起こしたりしますよ」
「本当は処分をしてしまいたいけどな。でも、人は変われるんじゃないかって信じている自分もいるんだ。まぁ裏切られたらその時考えればいいよ。起こっていない出来事に気をもんでも仕方がない。彼が狩人の仕事の大変さを知ってくれるのを祈るばかりだよ。さて、本題に戻ろう。5番がいた元までは竜騎で2-3日ってことだ。その間の食料とかはどれくらいで準備が終わる?」
「食料の準備だけなら、明日には終わります。ただメンバーがご主人様を除いて女性だけなのと、リリとララを一緒に連れて行って大丈夫ですか?」
3番がそう聞いてきたが……リリとララは今の段階で相当強い。男ももちろん連れていきたいが……少なくとも目を引くような強い男はいなかった。
「3番は誰か推薦したい男はいるのか?」
「私ほどではないですが、動きがいい奴は何人かいますね」
「それなら、余計にこっちに置いておくべきだな。今回は5番の願いを聞いて探しにいくが、一番重要なのは自分たちの生活を自立させてもらうことだからな。それに……リリとララなら家族のように偽装ができるだろ」
「私とご主人様が家族ですか。ということは私が奥さん、夜ということは夜もやっぱり一緒の布団に寝るってことですね。わかりました。そういう意図があるとも知らず申し訳ありませんでした」
「いや、リリとララがいるのに一緒には寝ないだろ。子供の教育上よくないぞ。それに5番もいる」
3番が勝手に喜び、勝手に落ち込んでいた。
それからあっという間に準備が進み、出発の日の朝を迎えた。
この時はまだ簡単に終わると思っていたが、まさかあんな問題になるとは予想もしていなかった。