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10/27

庭にペガサスとグリフォンがいた。

 翌日朝日と共に起きると0番が石化したかのように固まったまま動かなくなっていた。

 疲れているようなので、そのままベットに放置して起きる。


 背伸びをして、軽く体操をする。

 いつもは外を少し走ってくるが、今日はさすがにまだみんな寝ているだろう。


 昨日、全員と正式に奴隷契約を結び体調などを確認したところ、ひとまず俺の持っていた回復薬と治療薬ですぐに死ぬような奴隷はいなかった。


 これはある意味奴隷が使い捨てされているおかげだった。

 この国の奴隷商は奴隷を回復などさせて使うという考えがない。

 それは立地的にも大量の奴隷がこの国に集まってくるというのもある。

 使いつぶさずとも新しい代わりがいるのだ。


 わざわざ治療費を払って治るかどうかわからない治療をするよりも、そのまま廃棄にして次の奴隷を買った方が安上がりなのだ。


 俺は薬師の技術も知っていたのでまだ良かったが、普通の奴隷商であればまずこんなことはできないだろう。


 さて、もう少ししたら外の様子を見に行って……俺がそんなことを思いながら窓の外を見ると庭に見慣れない柵ができあがっているのが見えた。


 この辺りの土地はすべて俺のものなのに、俺が知らない柵が勝手にできるはずがない。

 いったいどういうことだろうか?


 外に出て見ると、そこの柵の中にはユニコーンとグリフォンが仲良く寄り添って寝ていた。

 夢でも見ているのだろうか?

 なんでこんなとに希少な幻獣が寝ているのだろう。


 この二匹を捕まえて売ることができれば、うちの経済状況は一変する。

 家も新しくなるし、奴隷たちにお腹いっぱいご飯を食べさせてやることができる。

 

 いいんだろうか。このチャンスをこの手に掴んでも。

 しかもなんだこの柵……ユニコーンもグリフォンも空を飛べるので柵がある意味がない。


 不思議に思い、俺が近づいて行くと、いきなりユニコーンとグリフォンの間から小さな女の子が顔をだし、目があう。

「ご主人様おはようございます」

「お……はよう。君は……7……」


「72番です。昨日は危ないところを助けてくれてありがとうございました」


「この2匹は72番の従魔なのか?」

「そうです。私はテイマーなんです。でも、この子たちを連れていない時にさらわれてしまって……喉を潰されてしまったんです」


「この柵は?」

「少し小さかったですかね?」


「いや、そういう問題じゃない。えっとどうやって作ったの?」

「あっ……彼が作ってくれました」

 そこには、王冠をかぶったゴブリンが斬り倒された木から上手に杭と柵を作っている。

 あきらかに普通のゴブリンとは大きさが違う。

 テイムすると大きさも変わったりするのだろうか。


「このゴブリン大きくない? なんでゴブリンが柵を作ってるの?」

「この子はゴブオって言うんです。小さい時に拾って育てたらこうなちゃって。工作が得意でご主人様の家の横に家を建てようかと思ってお願いしたんです」


 微妙に会話が成り立っていない。

「俺の家の横に家を建てるの?」

「ダメですか?」


「いいよ。ただし自分の家だけじゃなくて他のみんなの家も建ててやること」

「わかりました。素敵な家を建てますね。それと、必ずお役に立ちますのでこの子たち飼ってもいいですか?」


 別にペットくらいはいいが……ペガサスとグリフォンは幻獣種という珍しい魔物だ。もし他の商人などに見つかったら間違いなく盗まれる。まともな奴隷数十人に命をかけて奪いにこさせてもお釣りがくるくらい高値で取引がされている。


「いいけど、食事や自分たちの身を自分たちで守れるか? あと全員のために働いてくれるならいいけど72番専用ってなるとここでは飼えないよ」


 別に守ってやれないことはない。

 でも、俺たちがいつも側にいるとは限らないのだから、自分たちの身はできる限り守ってもらいたい。

「もちろんです。私がご主人様に従うってことは、この子たちはご主人様に従うってことですから」


「本当か?」

「もちろんです。ぜひこのペガの頭をなでてあげてください」

 ペガサスのウルウルした瞳がすごく可愛い。

 毛並みも光沢があり、絶対に触り心地がいい。


「よしよし」

『ガブッ!』

 ペガサスは俺が頭をなでようとすると勢いよく俺の手に噛みついてきた。

 とっさに手を引くが、めちゃくちゃ痛い。


「売ってきなさい。うちでは飼えません」

「ペガ! ご主人様になんてことするの!」

 ペガサスはぷいっと顔をそむけてしまい、言うことを聞かない。

 

 まぁしばらく主人と離れていたわけだし、そう簡単に命令に従うとは限らない。

 だけど危害を加える魔物を従魔とはいえ、置いておくことはできない。


「危険な魔物は置いておくことはできないよ。せめて他の人が触れたりしないような場所で隔離してくれないと」

「わかりました。でもグリの方は大丈夫ですよ。この子は大人しくて可愛い子なんで」


「本当か?」

「任せてください。ねぇグリ」

「キュルルル」


 グリフォンは楽しそうに鳴くと、自分から俺の方によってきた。

 今度こそは大丈夫だろう。


 グリフォンの身体に手を伸ばそうとすると、顔に悪臭のする冷たいものが顔に当たる。

 わざわざ、俺の近くまできて唾をかけやがった。


「売ってきなさい、即刻今すぐ」

「ごめんなさい。普段はこんな子たちじゃないんです。あっゴブオなら頭なでなで触らせてくれますよ」


 柵を作っていたゴブリンが不気味な笑みを浮かべながら近寄ってきて、自分の頭を俺の方に向けてきた。触ってもいいよとアピールしているようだが……正直触りたくない。


「いや、ゴブリンはいいや」

 ゴブリンはショックを受けたような顔で俺を見てくるが、ツルツルの頭をなでても何も楽しくない。


 ゴブオはトボトボと元いた位置に戻ると、また柵を作り始めた。


「ご主人様、一人で起きていかないでくださいよ」

 少し寝ぼけているのか0番が子供のような言い方をして、俺たちの元へ走ってきた。

 起きて一人だったのが寂しかったのだろう。


「悪いな、気持ちよさそうに寝ていたから」

「いや、寝不足ですよ」

「まぁあんな時間まで起きてるからだな。今日は早く寝るんだぞ」


「誰のせいだと……すごい! ペガサスにグリフォンじゃないですか。それにゴブリンの上位種ですか?」

「そうなんです。私テイマーの72番です。よろしくお願いします」


「私は0番よ。よろしくね。触ってもいい?」

「もちろんです。でも気を付けてください」


「ペガサスは凶暴だから噛まれるぞ。グリフォンは性格が悪い」

「ご主人様、そんなこと言ったら可哀想ですよ」

 0番がペガサスに触れると、ペガサスはくすぐったそうな表情をみせ、0番にすり寄って行った。


「ご主人様、この子めっちゃ可愛いですよ! もう凶暴だなんて全然違うじゃないですか。脅かさないでくださいよ」

「なんなんだ……この対応の違いは……」


 グリフォンも0番には自分からすり寄っていき、0番の顔をにキスをしたり、積極的なスキンシップをしていた。

 納得がいかない。


 俺が悶々としていると、ゴブオがいつの間に俺の横へ来て肩に手を置き、うんうんと頷きだした。こいつのわかってますみたいな態度にも腹が立つ。

0番「ご主人様いない……」

意外と朝は寂しがり屋だった。


★★★★★

応援よろしくお願いします。

挿絵(By みてみん)

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