72話「何処までも真っすぐに!!」
「どうすりゃいいんだ……」
────夜。
カールは一人、首都の安いバーの酒に浸って泣いていた。
「マイカにレヴ、怒っただろうなぁ」
彼の今日のやらかしは、過去最大級であった。今までコツコツ積み上げてきた彼の信頼は、脆く崩れ去っただろう。
告白してきた女性の前で、別の女性に告白を見せつけるってどんな鬼畜だ。
「……うぅ」
今までの旅の中で手にした経験、友情、絆、そして何より信頼できるパーティーメンバー……。
それを今の彼が得ることは殆ど不可能と言ってよかった。
「……まさか、イリーネがあそこまで嫌がるなんて」
告白相手を間違えた時点で、大顰蹙。
そしてその告白した相手と言うのが、よりにもよってパーティー屈指の常識人イリーネだ。
……彼の告白を受けたあと。
イリーネは真顔になって「戦略的撤退ですわ!」と叫び何処かへ全力疾走してしまった。
その場に残ったのは、虚空を抱き締める勇者と、彼を凄まじい顔で睨み付ける2人の恋する乙女。
……と、頭が痛そうにその場を眺めるサクラ達であった。
「……あー。これは、その」
「ふん!」
告白した直後にわざわざ呼び止められ、別の女性への熱い告白を見せつけられたマイカは勇者の右頬を張り飛ばし。
「レヴ、違うんだ」
「……これは、無い」
てっきり幼馴染みに告白しにいくものと思い込んでいたレヴは、結局は貴族のおっぱいに転んだ勇者の左頬をビンタした。
「……行きましょ。レヴ」
「……うん、マイカ。付き合う」
顔の両側に大きな紅葉を咲かせた勇者を捨て置き、二人の乙女は夜の町に消えた。
今日はきっと、遅くまで帰ってこないに違いない。
「なぁ、サクラよ。……やはりカールは、頭がおかしいのではないのか?」
「そうねぇ。擁護する気も起きないわねぇ」
「カールの旦那……」
そんな仲間の罵倒を、カールは口をパクパクさせながら聞き流すことしか出来なかった。
「お客さん、ちょっと飲み過ぎじゃないですか?」
「うぅ、俺はダメなんだ。もはや酒に溺れないと、生きていけない」
「もー、ちゃんと帰れるんですか? もし酔い潰れたなら、外に放り出して責任持ちませんからね」
そしてカールは、居たたまれなくなって仲間の前から逃げ出した。
責めるようなサクラの視線に耐えられなかった。
ただでさえ告白する相手を間違えた上、あまつ告白した相手から思った以上に拒絶されたこと。
カールのメンタルは、ボロボロだった。
「宿に帰りたくない……。パーティの皆が待ってる部屋に行きたくない」
「はぁ。厄介な客が来たものですね」
帰ったらどんな目に遭うのだろうか。
マイカから、レヴから、イリーネから。どんな言葉を投げかけられるのだろう。
彼は一人、涙をテーブルに垂らし呻いていた。
「ヘイ、ママ。そんな馬鹿に構ってないで、俺に濃い蒸留酒のおススメを頼む」
「あ、了解です。ただいま」
「うぅ~、俺は駄目な奴だぁ」
カールは、1人バーのカウンターで酔い潰れる。
元々酒に弱い彼が、自分の限界を超えて飲んだのだ。耐えられるはずもない。
後のカールに出来るは、何もかもを酒に任せて眠るように意識を手放す事だけ────
「おらカール。飲め」
「おごごご!?」
そんな酔っ払いの口に、小さな瓶が突っ込まれた。
苦味、甘み、酸味などが混ざり合ったえげつない味のソレは、カールを飛び起きさせるのに十分な刺激だった。
「おげぇええ!! おげ、おげぇぇぇ!!」
「おお、流石サクラの薬。よく効くなぁ」
「な、なんっ……おげえええ!!」
それは、カール自身が手持ち袋に忍ばせていた秘薬。
酔い潰れたとき用にとサクラから手渡されていた、酔い覚ましの薬であった。
「ちょ、だ、誰だ!! いきなり他人の口にこんな不味いモノを────」
「俺だよ、このクソボケ」
いきなり何てモノを飲ませるんだ。俺に喧嘩でも売ってるのか。
飛び起きたカールは、その薬を飲ませた下手人を睨みつけ……
「……うわっ!! お前かよ、脅かすな」
「別に脅かしていないが」
目前に見覚えのある、猿の仮面を被った奇人と目が合ったのだった。
「で、だ。カール、何でこんなところで酔い潰れてやがる。仲間はどうした」
「……仲間」
カールはすわ敵襲かと慌てたが、隣に座ったのが気心の知れた正体不明の不審者であったので、落ち着きを取り戻した。
「……仲間、仲間。うぅ、俺は、俺はぁぁ!!!」
「いちいち泣くなうっとおしい。良いから早く、手短に状況を説明しろ」
「俺は、ダメなやつだぁぁ!!」
落ち着きを取り戻した彼は、猿の奇人の前で再び泣き出してしまった。
メンタルの弱いカールは、仲間全員から信用を失った(と思われる)状況に、酒抜きでは耐えられないのだ。
「どーでも良いから早く説明しろぉぉぉ!! 今日有ったことを詳細に!! 正確に!!」
「ちょ、揺らすな猿仮面、気持ち悪くなる!」
「結局、何だったんだよお前!」
そして何故か、猿仮面はいつもよりも興奮気味であった。
何やら、自分も当事者であるかのような口ぶりで、語気も荒くカールに状況の説明を促し続けた。
「わ、分かった。長くなるが良いか」
「おう」
そのあまりの剣幕に押され、カールは口を割る。
この日、彼がやらかした失敗の数々を────
……前々からそんな気がしていたが、この日俺は確信した。
「アホだろお前」
「返す言葉もねぇ……」
カールは、相当なアホである。
「何で後ろから抱きついて、顔も確認せずに告白すんの? 人と話す時は目と目を見て、って習わなかった?」
「……はい」
「挙げ句、失敗に気付いたら何ですぐ否定しないの? その場で間違えましたと、どうして言えないの?」
「頭が、真っ白になって」
俺はクドクドと、この無能勇者に説教を始めた。
酒の席での説教ほどたちの悪いものはないが、被害者である俺には言う権利があるはずだ。
こいつのせいで、俺まで命の危機に陥っただろうが!!
「たはー、そんな事があったのですね。はいどうぞ、ご注文の火酒です」
「おお、ありがとうママ」
「どうりで悪い酔い方をしていると思いました。それは……、自業自得ですねぇ」
バーのママから火酒を受け取り、俺はグイと喉に流し込む。
焼けるような濃いアルコール分が、鼻の奥にツンと染みる。
「で、何でこんなところで飲んでんだよカールは」
「え? だって、宿に帰りたくなくて」
「誤解を解くなら早い方がいいだろ、今すぐ帰って関わった全員に頭下げてこい。ちゃんと、酔いを覚ましてからな」
しかし、カールの話を聞いて俺は少し安心した。
あの突然の告白が、勘違いだと分かったからだ。
マジでカールが俺に告白してきたならパーティー崩壊どころではない。
受けようが受けまいが俺は、マイカやレヴから怨まれるだろう。
「そうですよ。貴方が間違えて告白した娘も、今頃『どう返事しようか』と悶々としているかもしれませんよ」
「……そうか、そうだよなぁ」
バーのママも呆れ顔で、カールに帰宅を促す。このアホの相手が面倒だからか、早く帰ってもらいたそうだ。
まぁ、間違えて告白された娘は今此処に居るけどな。
「まず最初に土下座すべきは、間違えたその娘でしょう。他の二人には、その後で頭を下げましょう」
「……はい」
「例えばその娘もお客さんを好きで、貴方からの告白に好意的な返事を考えていたらどうします?」
「そ、それは」
考えてません。
「好きだと言われたから想いを返そうとしたのに、『ごめんなさい、実は告白相手を間違えました』と言われたら……。私なら一生のトラウマになりますね」
「……」
「だから、一刻も早くそのイリーネさんとやらに謝罪しにいきなさい。こんなところで飲んだくれている事自体、相当なグズ行為ですよ」
ひどく真っ当な説教を受けて、カールは頭を抱え突っ伏した。
まぁ誤解を解く暇がなかったのは、全力でその場から逃げ出した俺も悪いけど。
……あの時は、路地裏から死の気配を感じたんだ。
「……イリーネが、俺を好きだったら。本当のクズだな俺」
「そうそう。なので、お代払ってさっさと帰ってください」
さて、此処まで言われたら流石のカールも立ち上がるだろう。
このまま、俺達の借りた聖堂の大部屋に戻ってくるはずだ。
後は何食わぬ顔でカールを許し、マイカやレヴに事情を説明すれば全て解決────
「待て。イリーネが好いてくれてたら、死ぬほど嬉しいぞ俺……」
「……は?」
カールはそんな有り得ない仮定を呟くと、頬を真っ赤に染め上げて硬直した。
……は?
「え、イヤ待て。俺はマイカが好きだった、筈」
「……はい? お客さーん?」
「……。…………。あれ、あれ!? 俺、かなりイリーネも好きだぞ!?」
…………。
おい、お前はマイカ一筋じゃなかったのか。
「おいカール。お前、何言ってんの?」
「いや。……いや、あり得ないけど、もしイリーネが俺を好いてくれてたら……。何だこれ、幸せがヤバい」
「おやおや、お客さーん。二股っすか?」
安心しろ馬鹿、好いてない。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。自分の気持ちを整理させてくれ」
「……」
そんな世迷い言をほざき始めたカールは、そのまま目をぐるぐるさせて考え込み始めた。
「イリーネは、旅の仲間で、優しくて、気高くて……。身一つで、こんな危険な旅についてきてくれて」
「……」
「マイカは、幼馴染みで、冷たくて非常識で……。でも、いつだって俺の一番の味方で」
何故か俺がカールの事を好きな前提で、自分の気持ちを比べ始めるアホカール。
何でお前が選ぶ側になってんだ、自惚れてんじゃねーぞこの野郎。
そんな素振り今まで見せた事ないだろ。
「……私から仮定しといて何ですが、告白が受け入れられる可能性はあるんですか? アプローチとかありました?」
「……。イリーネは昨日も、自分から胸を触らせて来て……」
「貴方、意外とモテるのですね。それは普通に脈ありそう」
……そんな素振り、見せてたかもしれん。
いや、それは単なる童貞判別のつもりだったんだが……。そうか、アプローチにも見えるなソレ。
「胸お触りOKはかなり好感度高いですよ……」
「マジか……。可能性、あるのか」
無いです。
「つまり、お客さんはイリーネさんも好きなんですね?」
「……ああ。多分」
「だったら話は簡単じゃないですか。お客さん、貴方はイリーネさんに返事聞きに行けば良いんですよ」
「……え」
「そんで、上手くいけばそのままハッピー。フラれたなら予定通り『告白を間違えました』と謝るんです。これぞ、必勝法ではありませんか」
バーのママさんは、そんな事をドヤ顔で提案した。
告白ミスを逆手にとった、両対応の作戦と言う訳か。
「なぁ、ママ。でもそれは、かなり不義理じゃないか? 想った相手と別人に告白した挙げ句、上手くいったらそのまま付き合うって」
「そうでもないですよ、お客さんが本当にイリーネさんを好きなら両想いです。それにこの方法なら、件のイリーネさんはどう転んでも傷付きませんし」
「……成る程。イリーネを、傷付けない……」
ママの提案は、成る程、カールの立場からすると確かに悪くない。
俺の気持ちを聞いたあと、フラレてもそのままマイカに告白しにいける。それは、告白する側にとってかなり有利な話だ。
────でもそれって、女を複数引っかけてキープしている最低男のムーヴじゃないか?
「……俺は、嫌いだなその作戦。相手への誠意もないし、筋が通ってない気がする」
「私は、今出来る最高の方法だと思いますけど? 最初の告白は間違いでも、くっついてしまえば本物になりますよ」
「……うぅ。俺は、俺は」
カールは、俺達の意見を聞いて苦悩していた。
彼自身、今提案された手段に躊躇いを感じている様子だ。
「俺は、万が一にもイリーネを傷つけたくない……」
「なら、私の言った通りにすべきですよ」
「でも、そんなの男らしくない……」
「そうだな、そんな選択をするヤツは漢とは言えないな」
「……」
そこまで言うと、カールは押し黙って思案し始めた。
……この男は、どうするのだろう。
そしてもし、ママの言った通りの行動をしたら、俺はどうしよう。
ママの提案は、絶対に間違った選択ではない。
一見カールに都合が良いように思えるが、それは俺を傷つけないためと言う行動だし。
ただ、何となく俺が嫌いなだけだ。その、スケコマシのような立ち回り方が。
────もし、カールがそんな行動を取ったとして。俺は、今までの様にこの男を信頼し続けることが出来るだろうか。
「ウシ、決めた。俺は、イリーネに返事を聞きに行く」
「まぁ、それが無難と思いますよ」
やがて、カールは顔を上げ。
思い立ったように、財布から金をテーブルの上に置いた。
「これで足りるか」
「……ちょっと多いですけど、それはまぁ相談料という事で貰っておきますね」
「構わない」
「毎度ありー」
……カールはどうやら、ママの意見を選んだようだ。
それは、カールにとっても俺にとっても、都合の良い行動だ。
ママの言う通り、一番無難な手段と言えるだろう。
「そっか。俺はちょっぴり残念だな」
「む」
「上手く言えないが、俺はそう言うの、好きじゃないかも」
店を出たカールを追って、俺もテーブルに火酒のお代を置いて席を立った。
……カールが俺の寝床に来るのであれば、先に帰っておかないと。
「まぁ、でもそれがお前の選んだ道なんだな」
「ああ、違う違う。誤解するな、俺を見くびるなよ猿」
俺は、ちょっと皮肉気味にカールを詰った。少しばかり、この男への失望が混じっていたかもしれない。
だが、そんな俺の態度を見てカールは憤慨した様子だった。
「誤解?」
「俺は今からイリーネに全部話したあと、土下座して気持ちを聞く。そしたら、誰も傷つけない」
カールは、真顔でそんな意味不明の事を言い切った。
「……はい?」
「イリーネに、俺の処遇を任せようと思うんだ。俺が今日、マイカに告白するつもりで間違えて告白したこと。俺はマイカが好きだけど、イリーネも好きな事。全部全部隠さず、説明するつもりだ」
「……」
「その上でイリーネに気持ちを聞いて、どうするか決める。これならイリーネがもし俺を好いてくれてでも、彼女を傷つけずに済むだろう。そして何より、これが彼女に一番誠実な行動の筈だ」
その言葉に、俺は呆気にとられてしまった。
カールは本気だ。本気で、そんな馬鹿な事を言い出していた。
「ママの案は、どう考えてもイリーネに不誠実だしな。イリーネは俺達に対して何時だって誠実で居てくれた、俺はそんな彼女の心を裏切る事なんてできない」
「……二股は、不誠実じゃねーのかよ」
「ああ、その通り。だから軽蔑されるかもしれない。俺はもう、イリーネに信頼して貰えなくなるかもしれない」
……何て、不器用な男だ。
恋愛なんてある程度は駆け引きだというのに、この男はただ真っすぐ突進する事しか知らないのか。
「だとしても、俺はイリーネを裏切りたくない」
まぁ、でも。
────その決断は、これ以上無く俺好みかもしれんな。
「オッケー、お前の気持ちは分かった。実に気に入った、力を貸すぜ親友」
「お、おうサンキュー。と言っても、今回ばかりは俺一人で決着を付けなきゃならん話だが」
俺は仮面の中で笑みを浮かべ、カールの肩を叩いた。
ああ、何だ。やっぱりコイツは、良い奴だ。
「そうかもしれんが、一度落ち着け。イリーネの話が片付いても、レヴやマイカへの対応はどうする? ソコを決めておかないと、またこんがらがるぞお前」
「む……」
カールが本当にママの言った通りやるなら、マイカ達の件を完全に放置して成り行きに任せるつもりだったが。
コイツが此処まで漢を見せたんだ、誤解を解く手助けをしてやろうじゃないか。
「確かに、レヴやマイカをどうするかはまだ……。だが、一度イリーネの気持ちを確認しに行かないと」
「そんなの後回しでいいよ」
「いや良くねぇよ! 今も、部屋でイリーネは頭を悩ませてるかもしれないんだぞ。まずは、それを解決してからだな────」
俺の制止も聞かず、カールはまっすぐ聖堂の方向へ歩き出す。
本当に猪突猛進だな、この男の恋愛は。
「ほい、見ろよカール」
「んあ?」
仕方が無いので、俺はカールの正面に回り込んで仮面をずらした。
このままじゃあ、話が進まないと思ったから。
「……おほん。貴方がそこまで誠意を示したのであれば、私も隠し事はヤメにしますわ」
「イリーネ……?」
「もう大丈夫ですから。イリーネの誤解など解く必要は無いのです」
……これでとうとう、カールに正体を明かしてしまった。
だが、悔いはない。だってこの男は、何処までも俺に誠実であろうとしたのだ。
「いままで騙していてごめんなさい。私は、立場上入りにくい場所で活動する時にはこうして仮面を被っていたのですわ」
「ああ、成程。そうだったのか」
「貴方が仰るほど、私は誠実では無かったのです。……ですが始祖に誓って、もう二度と私は貴方に不誠実をいたしません」
ソコまで言うと、俺は仮面を再び被りなおした。
ここは道端、人通りもある。猿仮面の素顔を、カール以外に見られる訳にはいかない。
「と、いう訳だ」
「そっかそっか、成程あっはっは」
「まぁ、これで最初の問題は解決、と。次はマイカとレヴをどうするかだが……」
「あーっはっはっはー」
再び猿仮面になった俺は、俺の正体に得心して大笑いしているカールの肩を抱く。
ちょっと驚いた様子だが、そこまでカールは混乱はしてなさそうだ。もしかしたら、薄々感づいていたのかもしれない。
猿仮面の正体が、イリーネだという事に────
「ごめんそれは流せないわぁ!!?」
「カール!?」
直後、カールは出た店の壁に激しく顔面を打ち付けた。
「猿が、イリーネ!? 猿がイリーネって何!? え、イリーネがイリーネじゃなくて猿仮面なのか!!?」
「お、おーい?」
「何事ですか一体……うわぁ!! お客さんが店を壊してる!!?」
顔を血塗れにしながら、幾度もバーの壁に顔を打ち付けて絶叫するカール。
そんな彼の奇行を、俺は呆然と眺める事しか出来なかった。
「飲み込みきれねぇ、消化できねぇよ!! 重たいよ、重たすぎるんだよ畜生!!!」
「え、え!? そんな強いお酒飲ませてませんけど!?」
……。
どうやらカールは、精神崩壊してしまったらしい。
夜のバーの前で絶叫しながら頭を打ち付けるカールは、その通りの誰よりもたちの悪い酔っ払いに見えた。




