問一 これは神ですか?
初投稿です。うほ。
「で、これはどういうことなんです?」
俺は多少の苛立ちと共に言葉を吐き出す。
周りに広がるのは一面の白い雲海、そして爛々と輝く太陽の光。そんな白い海原のど真ん中に俺はいる。
俺は言葉を投げかけた相手を睨みながら、返事を待つ。
「申し訳ない。で、早速なんじゃがお主を転生させようかと考えておるのじゃ。儂の手違いで死なせた者をそのまま天国に送るのも気分が悪くなるからのぉ。」
ふぉっふぉっふぉ、そう笑いながら白髪の老人__________神様はそう言った。
「謝罪が軽いし展開が早い!貴方ほんとに神!?」
若干疲れながらも俺はそう突っ込む。
「とは言ってもお主ももう信じるしかなかろうて。地上の人間からしたらここはまさに天上の世界と言って差し支えない場所じゃろ?」
「貴方が神様なのはもう受け入れるしかないってのはなんとなく分かりますよ……。ったくもう。宗教団体ってやつに教えてやりたいよ、神がこんなのだって」
「お主も大概肝が座っとるなぁ。ちなみに儂も普段はしっかり仕事に励んどるんじゃぞ?今日は貢物の御神酒を飲み比べして注意が散漫になっとっただけで」
「酒飲みながら仕事するとかそれこそ駄目神アピールしてるようなもんじゃないですか」
ジト目で神様を見つめながら俺は言う。
露骨に目をそらしながら神様は無理やり話を変えてきた。
「そ、それはそれとして転生の話じゃ。受けないようであれば天国で死者として暮らしてもらうが、受けるのであればいくらかの恩恵を授けて送り出すことができるぞ。お主はどうする?」
「それ仮に俺じゃない人がここに来たとして、転生以外の選択肢選ぶ人がいると思います?」
「それもそうじゃのう。過去に何人も異世界に送り出してきたが死者としての生活を望んだ者は1人もおらんかったの。」
過去に何人も手違いで殺していることをサラッと告げられ、俺の口角がぴくぴくと上がる。
この神割とマジで駄目神かもしれない。
「そういや俺が暮らしてた世界に転生することはできないんですか?てっきり同じ世界で強くてニューゲームするものかと思ってたんですけど」
「こちらにも色々あっての。まぁ当然じゃろ?こんなギチギチの情報社会に1人の死んだはずの人間を送り出してみろ。大問題じゃ」
「まぁ…………確かに」
俺の生まれや普段の生活とかを考えてみると暮らしていた世界に転生してもなんの遜色もないように思えるが、そこら辺の事情を知ってか知らないでか神様は触れてこなかった。
「で、異世界ってのはどんなとこなんです?あ、あと飲み物貰えます?喉乾きました。」
「お主段々尊大になってきてないか?まぁ悪いのは儂じゃから特になにも言うつもりはないが……ほれ、粗茶じゃが。」
どこからともなく急須と湯呑を取り出し、2人分のお茶を注ぐ。俺はそのお茶を一息に飲み干して__________一気に吐き出した。
「何をどうやったらお茶が林檎ジュースの味になるんだよ!?しかもあっつ!あんたまだ酔っ払ってんじゃないだろうな!?」
「おぉ、すまんすまん。察しのとおりまだ少し酔いが回っとるでな」
「はぁ…………もうなんでもいいから早くしてくれ……休みたい………」
なんだろう、この話しているだけなのにドッと襲い来る疲労感は。すごく精神が磨り減っている気がする。
「ふむ。では与える恩恵についてじゃがなにか希望はあるかね?」
「あぁ、その話なんだけどね。俺それ要らない」
「ほう?というと?」
「あんたは多分分かってると思うけどもう持ち合わせがあるからな。これ以上厄介なものを抱え込んでもめんどくさいだけだし」
「ふむ………………まぁ、お主の経歴…いや、生まれか?うん、生まれを考えると…………厄介だからな。」
何故か脂汗を垂らしながら誤魔化すように言葉を紡ぐ。まさかとは思うがこの爺さん………まさかな。
俺の疑いの目を振り払うかのように神様はキリッとした顔でこう告げた。
「次にお主が転生する世界はワグラデリアという魔法と魔物が存在する世界じゃ。それとさっき恩恵はいらんと言ったが、こちらも決まりなのでな。せめて頭髪が乱れることがないようにしてやったぞ。」
「そりゃどうも。で、転生はいつ頃だ?」
「今から」
「今から?」
俺が神様の言葉をそのまま返したのとほぼ同時に、俺の足元にどす黒い闇が現れる。
いや、訂正しよう。闇なんてかっこいいものじゃない。ただの穴が現れた。
そして俺は重力に従い、スピードを上げながら下に下に落下していく。上を見上げて神様を睨みつけると、
「まぁ、向こうの世界でも頑張れよ、えーーーっと………佐藤太郎くん!」
「誰だそれぇぇぇぇぇ!!!!俺の名前は片白 妖だぁぁぁぁ!!!やっぱ俺のことなんにも知らねぇじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
いつかなぐってやるぅぅぅぅ、とこだまする声も次第に小さくなり、そして上の方に見えていた光も遂に見えなくなり、辺り一面の暗闇と落下する感覚だけが俺を襲う。そしてその後すぐ、俺の意識は唐突に途切れた。