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#013 黒目黒髪の少女

「え? 君、もしかして日本人?」


 俺は目を丸くして驚いた。

 だって、何処からどう見ても日本人に見える少女が突然目の前に現れたからだ。

 勿論、黒目黒髪だったから日本人と判断した訳じゃない。

 可愛いかったからでもない。


(失礼する……って言ったよな、今。後、着ている服がどう見ても浴衣だ)


 一方の少女もまた、目を見開いて俺を見ていた。


「嘘! お、お兄さん、あたしの言葉が分かるの!?」


「え、当たり前だろ? 同じ……」


 次の瞬間、


——ぽすっ!


 と少女が俺の胸に飛び込む。


——ぎゅっ!


 細くて白い腕が背中に回る。

 そして、


「うぇぇぇぇぇえーん!」


 と号泣し始めた。


「え、ちょっ? い、いきなり何!? どうした!?」


 俺は大いに慌てた。


「だって、だってー! ずーっと一人だったの!」


 と泣きながら顔をブルブル押し付ける少女。


(そっか、分かる、分かるぞ。俺と一緒で、一人異世界にトリップした。漸く集落に行き着くも、阿漕な外人ばかり。俺と言う同胞に会うまで、心細い思いをしていた。そうなんだろう?)


 俺は彼女の背を摩り、落ち着くまで待つ事にした。


 やがて、泣き止んだ頃合い。


「まず、互いの自己紹介をしようか? 俺の名は倉内類だ。君は?」


「クラウチ・ルイ? 変な名前!」


「そ、そうかな?」珍しい名前かも知れないが、変では無いと思うぞ。「で、君の名前は?」


「キリク! キリク・シン! シン大酋族第一環民が娘!」


 言葉が出ないとは、正にこの事。


(名前がキリク・シン!? しかも、シン大酋族第一環民とか……)


(頭のおかしい子だとは思えない。つまり……)


 俺は嫌な予感がしていた。


「ス、ステータスを見ても良いかな?」


「どうして?」


「キリクの事をもっと良く知りたいから」


 嘘では無い。

 ただ、選んだ言葉が拙かったのか、彼女は頬を赤らめた。


「い、良いよ」


「失礼して、<ステータス・オープン>」


————————————————————

 名前:キリク・シン

 種族:人族

 性別:女性

 出身:

 所属:

 年齢:13

 状態:健康

 レベル:1

 経験値:2


 称号:

 ジョブ:

 スキル:採取、解体、気配遮断

 魔法:


 体力:24/24

 魔力:0/0


 力強さ:8

 素早さ:4

 丈夫さ:5

 心強さ:1


 運:62

 カルマ:50

————————————————————


 名前に漢字が一つも使われていない。

 とは言え、キリクが日本に定住した外国人の子供の可能性も有る。

 であるならば、日本語が流暢なのも頷けよう。

 だがな、スキルを複数保有する、この一点だけは目を瞑れない。


「このスキルすごいね。一体どうしたの?」


「シン大酋族の第一環民だから当然だよ」


 話が噛み合わない。


「でもね、クラウチ……」


「ルイ。俺の名はルイ・クラウチだ」


「クラウチ族? 初めて聞いた!」


(だろうな)


「でも、ごめんなさい」


「何がだ?」


「あたしのいた大酋族、もう無いの」


 ……なぜそんな話になった?

 ただ、気にはなるがな。


「どうして?」


 と俺は尋ねる。

 すると、キリクは「えっ?」と驚いた。


「なぜって、シン族は第一環民の一氏族だから、皆を逃す為に……」


 そして、再び泣き始める。

 どうやら俺は、女泣かせらしい。


「すまない。許してくれ」


「ひっく……良いの。ひっく……贅沢を赦された第一環民の務めだって、ひっく……あたしを逃す際にお父さんや兄さんも言ってたから」


「それで、死の山とやらを越えて来たのか?」


「分からない。途中でまたゴブリンに襲われて、皆とは離れ離れになったから」


 その後、空腹と疲労に襲われ倒れたらしい。


「気が付いたら、この屋敷にいたの」


 良く他の魔物や獣に襲われなかったな。


「そうだったのか。良く頑張ったな」


「ううん、助けてくれた人達が皆、良い人だったから」


 そうか?

 俺に対する扱いは結構酷いぞ。

 所持品、全部巻き上げられそうになったしな。


「取り上げられた物とか無いのか?」


「無いよ。着の身着のままで逃げ出したから」


「そっか。ただ、不条理な事言われたら、ちゃんと抗議しろよ」


「出来ないよ」


「どうして?」


「だって、言葉が全然通じないもん」


「えっ?」そう言えば、「言葉分かるの?」と叫んでから抱き着かれたな。「全く駄目?」


「うん。何言ってるかさっぱり分かんない。あたしが喋っても一緒だった」


 これは妙だ。

 俺は自動翻訳的なスキルを有していないと言うのに。

 キリクも気付いたのか、


「スキルなの?」


 と俺に問うた。


「……いや、違う」


「じゃ、覚えたんだ! 第一環民でも無いのに、ルイ凄い!」


 目を輝かせる少女。

 俺は何故か罪悪感を感じ、顔を反らした。


「と、ところで、いつまでこの体勢でいるつもりだ?」


「やだ! ごめんなさい!」


 キリクが俺から離れる。

 と思いきや、横に座り肩を寄せて来た。


「ねぇ、ルイ」


 猫撫で声で俺を呼ぶ。


「……何だ」


「ルイのステータスも見て良い?」


 是非もなし。

 二人きりの、黒目黒髪なのだから。

 信頼関係を築く為にもな。


「良いとも」


「やった!」


 少女は拳を握りて締め喜んだ。

 そして、


「<ステータス・オープン>!」


 と呪文を唱える。

 刹那、


「嘘!?」


 とキリクは叫んだ。


「ど、どうした?」


「だって、煙属性魔法ってあるよ!」


「それが何か?」


 シド爺は見た事も聞いた事も無い魔法だと言ってたが、この反応を見るにキリクは違うらしいな。


「何か、て。本当に知らないの?」


 青白く変色した顔を見るに、相当拙いらしい。

 なので俺は、


「実は俺、記憶喪失なんだ……」


 と誤魔化した。

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